
「この監督、嫌いやった」が変わった日 ガンバ大阪ユース監督が語る、信頼の築き方
ガンバ大阪ユース監督・町中大輔さんは、自身もユース出身のOB。選手たちと正面から向き合い、成長を支える姿勢には一貫して『楽しさ』というキーワードがある。サッカーの魅力を信じ、指導の本質を問い続ける町中さんの言葉には、育成の現場でしか見えないリアルが詰まっていた。
公開日時:2025年10月10日 10:02
取材日:2025/06/20
町中大輔
ガンバ大阪ユース 監督
大阪府出身。ガンバ大阪ユースでプレーし、近畿大学を経て大塚製薬(現・徳島ヴォルティス)や佐川印刷SCなどで活躍。引退後は2011年から指導者としてガンバ大阪に戻り、ガンバ大阪ジュニアユースの監督を経て2023年4月ガンバ大阪ユース監督へ就任。同年のクラブユース選手権ではチームを16年ぶりの全国優勝へと導いた。2024年には大会連覇を果たすなど、若手の可能性を最大限に引き出す育成力、クラブの歴史と哲学を深く理解する育成のスペシャリストである。

サッカーを続けた先に見つけた指導者としての道
ー 現在の役職に就くまでの経緯を教えてください。
現在はガンバ大阪ユースの監督をしています。私自身もガンバのユース出身で、現役時代は徳島ヴォルティス(当時は大塚製薬)などでプレーしていました。30歳で現役を引退し、そこから指導者の道に進みました。
ー 指導者を志したきっかけは何でしたか?
サッカーをずっと続けてきて、その楽しさや魅力を日々感じていたので、引退後もサッカーに関わる仕事がしたいと思っていました。クラブの運営なども考えましたが、最終的には指導者という選択をしました。
ー 影響を受けた指導者はいますか?
ユース時代の監督だった上野山さんの存在が大きいです。技術の重要性を常に説かれ、世界を見据えてプレーする視点を教えてもらいました。今思えば、選手一人ひとりへの伝え方を変えていたのだと気づかされます。私自身は当時、あまり言うことを素直に聞くタイプではなかったんです。そんな私に対して、上野山さんは『こいつやったらボロカスに言っても大丈夫やろ』と判断していたようで(笑)、本当に厳しい言葉をたくさん受けました。でも、それも信頼の裏返しだったのだと、今になってよく分かります。当時は腹も立ちましたが、指導者になってから、あの対応がどれだけ個に応じたものだったかを実感しています。

『楽しさ』が成長を引き出す原動力になる
ー 指導する上で大切にしている軸は?
一番は『楽しさ』です。サッカーはやっていても、見ていても楽しいスポーツ。だからこそ、技術や判断の積み重ねが必要であり、面白さが広がる。楽しさを感じられる環境を整えることが重要だと考えています。
ー その楽しさをどう選手に伝えていますか?
ガンバ大阪には攻撃的で魅力あるサッカーを大切にする文化があります。ゴールを目指すというサッカーの醍醐味を、逆算的に練習に落とし込むようにしています。ゴールから逆算する思考、つまり『どうやってゴールを奪うか』を常に意識する中で、選手たちには攻撃のアイデアを持ってもらいたい。例えば相手の逆を取るプレー、タイミングをずらして騙すような動き、空間の使い方など、そこにはゲーム性があって、まさにサッカーの面白さが詰まっていると思います。
プレーしている側にとっても『自分で状況を切り拓いていく』実感があると、楽しさも倍増します。見ている人もワクワクするようなプレー、それが選手の中に芽生えるように促していくのが私の役目です。

技術・戦術だけではない、心を育てるメンタルトレーニング
ー メンタルトレーニングも取り入れていると伺いました。
はい。『SLAM DUNK 勝利学』の著者・辻先生に来ていただきました。周囲に流されず、自分のやるべきことに集中する力を育てる内容でした。選手たちにとって、普段接しない分野の刺激は新鮮で、内面の変化も感じられました。
ー 具体的にどんな変化がありましたか?
自分の弱さや課題に気づいた上で、それを否定せずに前向きに捉える選手が増えました。『どうしていくか』を考えられるようになってきたのは、大きな成長だと思います。
ー 指導者としてやりがいを感じる瞬間は?
やはり選手が成長する瞬間です。試合で活躍したり、悩んでいた選手が一歩踏み出したり。その中でも印象深いのは、卒業生のスピーチです。当初は『俺、あの監督嫌いやった』とまで思っていた選手が、最後には『このチームでプレーできて本当によかった』と言ってくれました。その子とは、シーズン中にたくさんぶつかって、何度も話し合って、根気強く向き合ってきました。途中はお互いにしんどい時期もありましたが、最終的には信頼関係が築けて、チームの主力として活躍してくれました。その言葉を聞いた時は、本当に胸が熱くなりましたし、『やってきてよかった』と心から思いました。

チームとともに、育成の未来を築く
ー 今後の目標を教えてください。
チームとしては現在戦っているプレミアリーグでの優勝を目指しています。個人的には、カテゴリーにこだわらず、どんな場所でも指導を続けていきたいという思いがあります。






