セカンドキャリアを考えるようになり、"サッカーの見方" が変わった。選手歴としては水戸ホーリーホック、湘南ベルマーレ、ヴァンフォーレ甲府、ヴィッセル神戸を経て藤枝MYFCで現役を引退しました。選手晩年の時期は怪我も重なり苦しい時間を過ごしていたので、セカンドキャリアを考え始めていたんです。そういった中でこれまでのようにサッカーを見ていても、選手にフォーカスするのではなく、『チームがどういうサッカーをしているか 』『どういうフィロソフィーを持って、監督はマネジメントしてるか』『どういうメニューを組んでいるのか』というのを想像しながら見るようになったんです。 それがすごく楽しくて、「あ、これ監督になりたいな」という思いになり、指導者を志しました。その頃から自分が指導者として、監督としてどのようなフィロソフィーを持って指導したいかを頭で描きながら勉強していましたね。指導者になってから特に気をつけているのは、選手一人一人のマネジメントです。私がしたいサッカーやゲームモデルをどのようにして一人一人の選手たちに理解してもらって、また共感してもらってチームとして体現していくのかを常に考えています。私のしたいサッカーを選手たちが全て体現するというよりも、選手たちの意見や声にも耳を傾けて、うまく『表現したいサッカー』をチーム全員で共有し合うことは一番気をつけていることですね。現役時代の経験から生まれた想い。「選手が躍動する指導者に。」自分が現役時代、プレーしていて特に楽しかった印象が強いのは大木武さん(当時監督)と安間貴義さん(当時コーチ)コンビのヴァンフォーレ甲府時代ですね。表現していたサッカー自体がすごく楽しかったのいうのもありますが、何より我々選手が楽しんでプレーできていたと感じることができました。選手時代にこういった経験を自分にとっての指導者の方からさせて頂けたので、自分も指導者になったら『選手たちが上手くなること』や『フィールド内で楽しむこと』、その中で『本気で勝ちにこだわる』ことができるチームを作りたいと思っていました。指導者が提示したものを強制的に選手たちにさせるのではなく、大枠のゲームモデルや原則がある中で選手それぞれの判断やアイデアを自由に表現できる方がプレーする選手たちも楽しいと思います。楽しんでプレーする選手たちをみて、我々指導者やスタッフも一緒に楽しんでいます。やっぱり、現場が楽しんでいないとファン・サポーターの方にも楽しみを届けられないと思っているので。我々が今掲げている『エンターテイメントサッカー』は、ただ上手いだけでは成り立ちません。我々のサッカーから何かを感じてもらったり、勇気や希望、感動を与えることが出来ての『エンターテイメントサッカー』だと思います。大木さんや安間さん、札幌のミシャさん(ミハイロ・ペトロヴィッチ監督)、風間八宏さん、世界でいうとマンチェスターシティのペップ(グアルディオラ監督)だったりリバプールのクロップ監督だったり。こういった方々のような、選手が躍動する指導者になりたいという思いを常々持ちながら過ごしています。J3で貫いた "藤枝スタイル" をJ2でも。我々はJ3で勝つためだけのサッカーをしていたわけではなく、やはりクラブとしてJ2、そしてゆくゆくはJ1で通用するようなサッカーを目指しながら戦っています。能動的かつ常にアクションを起こし、ボール保持を放棄しないでハイプレス、ハイライン、コンパクトフィールドでの即時奪回が我々のスタイル。このハイパワーサッカーを今季から挑戦するJ2でも、さらにアップデートしていきたいなと思ってます。J2というとやはり個人の能力が高い選手が特に前線やセンターバックに多い印象です。こういった相手にも個で勝負できるようなマインドに選手たちにはなってもらいたいと思いますし、個のレベルが上がれば組織のレベルも必然的に上がると思っています。クラブ史上初のJ2ですが、チームとして常にチャレンジをしていく姿勢は貫きます。失敗しないと成功は生まれないというのは、僕のマインドでもありますから。どんどん失敗をしながら、なぜ失敗したのかという建設的な振り返りを行うことで、選手としても上手くなっていく。そして、日本代表になれるような選手を輩出していきたいと思っています。サッカースクールを通して、"ボールを蹴る楽しさ" を知ってほしい。サッカースクールを立ち上げた背景としては、まさに『なぜサッカーを始めたのか』というところなんですよね。ボールを蹴るのが楽しかったり、お友達と一緒に遊ぶのが楽しかったり。このような思いでサッカーを始めたと藤枝MYFCの選手たちも言うんですよ。勝たなきゃいけない、負けたらどうしようじゃなくて、サッカーができる喜びをまずは感じてほしいという思いでサッカースクールを運営しています。でもまだ幼稚園生はコーチが一生懸命話したとしても、 上に飛行機が飛べば、「あー、飛行機だ!」って見るんですよ。でも、『その飛行機よりも、このボールで遊んでる方が楽しいでしょ』っていう風に、どういう子でもこっちに向かせるような指導者が 1番いい指導者だと思います。『お前そんなとこ見てんじゃねえ、こっち見ろよ』ではなくて、『このボールを使うとこんなこともできるんだよ。じゃあ、やってみよう』という風に言えば、『あ、こっちの方が楽しい』となるので。おそらく幼稚園の子たちや小学生は、失敗をめちゃくちゃするんですよね。でも、我々のスクールでは常にチャレンジをしていく大切さを重んじているので、上手い下手とかは関係ないんです。自分より上手い子達と一緒にサッカーをすることで、上手くなる子ももちろん増えていきます。サッカーは人間力を鍛える競技でもあると思っているので、サッカーを通して社会性を持った人間になってもらいたいですね。これは、ゆくゆくプロを目指すとなった時にもとても大事なことだと思います。『超攻撃的エンターテイメントサッカー』でJ2に藤枝旋風を。育成年代の指導者の頃は、個人にフォーカスして選手たちそれぞれの成長を見るのが幸せでした。実際にプロの指導者になってからはそれにプラスして、組織としての成長や試合に勝つ喜びを感じています。試合での結果も大事ですが、いかに我々のフィロソフィーを体現できているかも考えなければいけないと思っていますので、その両軸がリンクして昨季J 2昇格を達成した時は本当に報われた瞬間でした。今季2023年の目標は、プレーオフ圏内 6位以内 を目指します。勝利すればなんでも良いのではなく、我々のフィロソフィーである『超攻撃的エンターテイメントサッカー』を貫き、『65%の保持率・650本のパス本数、130回のスプリント』というものをチームの指針としてします。これができた時にはスタジアム全体を熱狂させることができると思っていますし、そのサッカーをするために毎日本当に厳しいトレーニングを積んでいます。厳しい練習を積んだ彼ら(選手たち)が1週間に一回練習の成果を表現する場としてファン・サポーターの皆さんに楽しんでいただけたらと思います。嫌なことが多い世の中ですが、我々が表現するエンターテイメントで、心が酔いしれるようなサッカーをします。そして一人でも多く、藤枝MYFCを後押ししてくれるファン・サポーターを生み出せるように頑張りますので応援よろしくお願いします。