サッカーはやっぱり楽しい子ども達と一緒にサッカーを楽しみたいという気持ちは現役時代からぼんやり持っていました。技術力に特化した指導をするというよりはサッカーの楽しさを伝えていきたいと思っていたので、トップアスリートの指導者になる道は考えず、小学生を中心にスクールでの指導を選びました。今まで関わってきた指導者には本当に恵まれていると感じます。だからこそ小中高と総じてサッカーを楽しむ事ができました。プロになってからは当然結果を求められるようになり、サッカーに対する純粋な気持ちが薄れてしまうタイミングは少なからずありました。そんな時に「サッカーはやっぱり楽しい」と思い出させてくれたのが当時モンテディオ山形の監督だった石崎信弘さんです。結果が伴わない時期が続くと、監督と話すのが恐くなったり、監督の気持ちを深読みしたりしますが、石崎監督はどんな時も変わらず気さくに声を掛けてくれました。選手と監督という関係性を越え、人間対人間として向き合い、頑張っている選手にはきちんと愛情を注ぐ素晴らしい指導者だと思います。サッカーを選んでくれる子どもたちが増えるようにインタビューの中でも何度も出ている言葉ですがとにかく楽しんでもらう事を大切にしています。サッカースクールに来る動機やモチベーションは様々です。例えば、友達が来ているから何となく参加している子に技術に偏った指導をするとうまくいかないものです。数あるスポーツの中でサッカーを選んでくれる子ども達が少しでも増えるような練習メニューを心掛けています。サッカー技術の上達を見込んだメニュープラスアルファの楽しみを盛り込んだ練習を日々模索中ですね。自分が習ったコーチの中には怖い指導者もいましたが、僕は身近な存在でありたい。もちろん教育的指導は必要ですが、人として好かれる指導者になれるようメリハリをつけて子ども達に接するようにしています。年齢を超えた交流がもたらす効果今やっているサッカースクールの大きな特徴が、異学年交流の活発さです。上の学年は自立して下の学年の面倒を見るという文化が根付いています。自分が低学年の時にしてもらった事を、学年が上がった時に自然に後輩にしてあげるという好循環が生まれています。教育的観点もあるのですが、この流れはチームワークの醸成にも繋がっています。チーム編成やリレー形式のトレーニングをする時にも一定のハンデを設定してあえて学年を混ぜて行います。先日、たまたま早くグラウンドに来た6年生と2年生が一緒にシュート練習をしている光景を見かけました。誰に言われた訳でもないのに自然と6年生が相手になっていたんです。そういう光景を見ると嬉しくなります。夢を追う子どもたちに伝えたいこと学校での講演やイベント登壇する機会も多いのですが、その中で強く伝えている事が2つあります。『自分で決めた事が一番頑張れる』と『仲間を大切にする』という事です。中学生の頃からプロサッカー選手になりたいという想いはありましたが、無理だろうなと思ってしまったり、周りからもサッカーを職業にする難しさを言われたりしていました。高校の監督から「プロになりたいのか、大学に行くのか」と問われた時、自分で「プロになりたいです」と宣言しました。自分で決めた目標に対しては責任も伴い、自然と行動と意識が変わった実感があります。保護者の方にもぜひ意識してもらいたい部分で、成長のスピードはひとりひとり違います。本人のスイッチが入ったタイミングでちょっとサポートしてあげるくらいの関わりが望ましいと思います。プロになってから、試合に出られず不貞腐れたり、パスを回してもらえず文句を言ったりする時期がありました。ですがそこから、チームや仲間のために何ができるのか考えて行動するようになると、結果が出ない時でもサッカーを楽しめるようになりました。自分が仲間の為に動くと、仲間も自分の為に頑張ってくれるものです。目の前の仕事に真摯に取り組むサッカースクール、学校訪問をして授業をする、メディアやイベントへの出演、など様々な仕事をさせて頂いていますが、その全てを全力でやりたいです。今後は東北を中心にプロになる選手の育成にも携わりたいと考えています。福島/宮城/山形あたりから「萬代コーチに指導してもらいました」という選手が輩出できたら理想です。まずは目の前の仕事に真摯に取り組んでいきたいと思っています。世代別日本代表にも名を連ねた 元Jリーガー 萬代宏樹の現在地と東北への想い