選手権出場で選手としては一区切りし、大学進学はイングランド高校3年生の時の選手権を最後に、プレイヤーとして本格的にやるのは終わりました。 高校2年生ぐらいまでは、高いレベルで行けるところまでやろうかなと思ってたんですが、実際に高校でもトップレベルの中でやらせてもらったり、中学生の時にチームメイトだったGKが世代別日本代表に選ばれたりというのが自分の中でプロになれるか否かの指標になってしまって。GKとしてプロになるにはこのレベルでないといけないとわかり、自分の中でも「ちょっと難しいだろうな」と思いました。星稜高校の時のGKコーチがすごく親身に指導してくださる方で、そういうところから指導者もいいんじゃないかっていうふうに考え始めたのが最初ですね。そこから大学の進学で日本の大学も考えたんですけど、正直日本の大学で勉強したいことがまずなくて。日本の大学におそらく自分の性格じゃ合わないだろうなと思い、海外に目を向け始めたというのが、ソレント大学進学までの流れです。ソレント大学はイングランドのサウサンプトンにあり、フットボール学を専攻できます。僕が専攻しているフットボール学では、ピッチ上で行う指導者の勉強と分析官やスカウトに関しての勉強が半分ずつあります。それらの専門的な知識や経験を積むことができる反面、サッカーと政治学のつながりを学んだり、プレミアリーグの発展についてを勉強することもできます。日本でいう、JAPAN サッカーカレッジのようなイメージですかね。高校時代の恩師から得た『選手に寄り添った指導』が自分の軸に。自分にとっては、高校のGKコーチが恩師にあたると思っています。常に自分に合った練習をしてくれていたんですよね。毎週の試合の後に、「次の練習は何を取り組みたい?」とか「これがうまくいかなかったからこれを一緒にやろう」と親身になって寄り添ってくださいました。高校3年生の時は特に自分が試合に出続けていたというのもあるのですが、選手にフォーカスして指導してくれ、常に自分の味方でいてくれたところがすごく大きかったのかなと思いますね。監督は高校サッカー界でも名将だったので、自分の印象の中では厳しい言葉をかけられた方が多かったイメージがあるんですが、それでもGKコーチは自分を信頼してくれて自分に練習メニューを組ませてくれたりしたので、 サッカーの練習を組み立てる楽しさに気づかせていただきました。海外の大学に留学して、一番最初に当たった壁はやっぱり言語ですよね。日本から来てまだ大学生というところで、大学の外に出た時にそこまで信頼されてもらえてないというのを感じることもありました。日本だと星稜高校という名前を使ったら、もしかしたら人の最初の目は変わったのかもしれないですけど、こっちに来た時にはそういうものは当然ながら存在しません。自分の実力や知識量で『自分ができるんだ』ということを証明しなきゃいけない点では、少し時間がかかるところはありましたね。ただ自分の中でキックの精度にはすごく自信があったので、指導者としてもGKにサーブする時に大事ですし、そういうところで徐々に徐々に監督や他の指導者からの信頼はつかめてきたのかなぁと感じています。まずは指導者が姿勢で見せることから基本的なところではありますけど、自分が心がけているところは『日本での当たり前を環境が変わっても継続する』ということです。少なくとも15分前には練習場について、しっかり自分で練習のセットアップもします。練習のプランニングも指導者の役割です。選手も僕たち指導者がちゃんとプランニングをして練習場に来ればその意図を汲み取ってくれますし、ピッチ外の準備は特に1年目はすごく気を配っていましたね。特にGKってプレイヤーとしてもかなり準備が必要になってくるので、私がプレイヤーだった時から自身での準備にはとても気を遣っていました。指導者ライセンスの講習会でも言われたことですが、指導者がいい準備をして練習に取り組まないと選手の成長にもつながらないですし、練習場に行って毎回同じような練習を選手たちにやらせても選手たちとしては自分たちの時間を割いてここに来てるわけだから、選手にも失礼です。選手たちを指導する際は、当然ながら一人のプロフェッショナルの人間としてさせてもらっていますね。練習の中で一番最初に選手たちに言っているのは、「ミスを恐れずにやってほしい」ということ。GKは大体どのチームも2,3人しかいないんですね。「ここにいる時は少なくともミスをいっぱいしてほしい。ミスをして笑う選手もいないし、僕自身も指導者としてそれを笑ったりはしないから積極的にミスをしてほしい。」と選手たちには常に伝えています。意図的にしたプレーやチャレンジの中でのミスは全然良いのですが、何も取り組まない、何もチャレンジしないで 起こったミスに関しては選手たちにも指摘するようにしています。「選手の成長にも気づくようになってから、幸せを感じた。」こういった自分の指導で、選手たちのリアクションの変化にも気づくようになりました。女子チームの指導もしているのですが、自分が就任する前にいたGKコーチが結構厳しい方だったのか、ある選手は自分のプレーに関する指導者とのコミュニケーションに消極的でした。選手に寄り添った指導を心がけている私が指導するようになってから、選手自身も自分のプレーを客観的に見て自己分析できるようになっていったんです。その選手とはもう6-7ヶ月一緒にやっていますが、こういった選手の成長にはすごく嬉しさを感じます。試合の中でも積極的にミスを恐れずにチャレンジして、その結果いいプレーに繋がる場面が増えているのでそういうところでは手応えではないですが選手たちに良い影響は少なくとも与えられているんじゃないのかなと思いますね。選手たちが楽しんでサッカーをやり続けてくれてるところを見れるのは、本当に指導者としてすごく嬉しいところでもあります。毎週の試合での勝利や、特にGKが勝利に貢献して監督に褒められている場面も嬉しいですが、何より選手たちが楽しんで自分自身と一緒に練習をしてくれ、練習に来続けてくれていることが幸せです。まだまだ欧州で指導者として活動を続けたい僕自身も23歳になる歳で、まだまだGKコーチとしては経験の浅い若い指導者だと思っています。なのでこれから、経験のある指導者の方々とともに一緒に働きながら経験値を増やしていけたらなと思っています。近い目標としては大学卒業後もできればイギリスに残って、欧州の現場で指導者として活動を続けていきたいなと思っています。常にこっちにいると大きなチャレンジがどんどん舞い込んでくるので、日本に帰って指導することよりもまだチャレンジできるうちは欧州にいたいですね。日本は母国ですし居心地がすごく良いので多分僕の性格上、日本に住み出したら楽しかしないと思うんですよ。(笑)そういった意味でもコンフォートゾーンから抜け出すというところで、 強制的に自分自身に課題を課すことが自分のためになるのかなと。今季のチームではシーズンあと2試合とカップ戦の決勝戦がこれから控えているので、そこで少なくとも一つは勝てるように少しでも貢献できるように頑張ります。