初めて感じた、”サッカーを外から見る楽しさ”僕は小学生の頃からサッカーをしていたのですが、18歳の高校卒業と同時に選手としてはサッカーを辞めています。そこから新潟にあるサッカーの専門学校に通うことになるんですが、トレーナー専攻科で進学したんです。トレーナーと鍼灸師の勉強をしていました。専門学生の一年目が過ぎた頃に、サッカーを外から見ることの楽しさを初めて覚えて、サッカーの監督をしてみたいという思いに繋がりました。そこから学生を終えて地元の東京に帰ってきてから指導者のキャリアが始まったという形です。あまりかっこいいストーリーではないですが、18の時にサッカーを辞めてここからどうしていけばいいのかという問題に当時はぶち当たりました。他の職業で興味があるものもあったんですが、何かを学びたいというよりは東京を出て地方で暮らしてみたいという思いもあり、新潟に進学して手に職をつけようと思って専門学校に入ることを決めました。専門学校での医学の勉強は、図らずも今の自分にとても活きている部分だと感じています。西洋医学的な観点と東洋医学的な観点を同時に学んだことで、対象が同じなのに考え方が西洋と東洋で違う部分は当時から面白いなと思っていました。時間が経つにつれて、東洋医学と西洋医学を学んだ意味もわかってきて、サッカーだけでなくいろいろな部分で活きてきているなと感じています。子どもの頃、自分はサッカーが好きなのかわからないままやっていたというのもあり、実は努力して挫折した経験や頑張ろうとしたけどダメだったという経験を持てていないんです。指導者の方々からの声が原動力になったという経験もないんですね。でも、大人にこうしてほしいなという自分の思いを内々には持っていたような子どもでしたので、今自分が指導する立場になってから発信できるようにもなってきています。3年間のアルゼンチン生活は、自分を大きく変えた鎌倉インターナショナルで監督をして2年目になりますが、クラブの監督としていろんな方の思いやクラブに関わってくださる方々の思いを背負って戦うプレッシャーというものは初めて経験することができました。今まで感じていた指導者像や大事にするものがどんどん変わってきているタイミングが今かなと思っています。意識をしているのは、これまで自分の中に自然に入ってきていたものを捨てる勇気を持つことです。しっかりと現場を見て、状況によって自分に与えられている役割や求められていることを遂行できるようにということは意識しています。アルゼンチンにいた時は、日本の現場ではないので三年間ほとんど日本人の感覚を持たずにサッカーを見てきました。日本に帰ってきた時に感じたギャップもありましたし、日本にいなかった分だけ理想論と言いますか、自分の中のロジックだけ固まってしまった部分はあるんですが。実際現場に立って、人と仕事をする中で今大事なことをしっかりと捉えられるようにと思いながら仕事をしています。アルゼンチンと日本はサッカーにかける情熱や歴史、前提としてある国民の文化も全く違うので、サッカーでいうと良くも悪くも全く違います。一番のギャップは、”選手たちの野性味” ですかね。1vs1のデュエルの部分であったり球際の激しさはベースとして違うと思いました。この部分において、日本に帰ってから同じ感覚では指導できないなと思いましたね。しかし、日本には日本の良さがあります。W杯を見てても多少わかる部分だと思いますが、アルゼンチンの真似をしようとしても絶対にできないです。南米の選手たちは僕らと前提が違うので、そこに至るプロセスも違ってくるのかなと思います。サッカーにこだわらず、多角的な視点を身につける必要性を感じた僕は比較的若い時から指導者としてやっているのですが、日本でやっていた20代前半に思っていたことと世界の約15カ国のサッカーを見て、アルゼンチンを経て日本に帰ってきて指導している今思うことは変わったなと感じています。昔は自分の中のロジックや戦術がハマった時やいい練習ができた時に楽しさを感じていたんですが、今は僕たちのクラブを応援してくれる人たちが喜んでくれる姿であったり試合を見てくれる人たちの楽しそうな姿に喜びを感じています。自分が監督として目立とうという気持ちがあまり無くなってきたな、自分に向いていたベクトルが外に向いてるなと思うようになりましたね。今まで思ってきたのは、どうしてもサッカーの指導者は視野が狭くなってしまうということです。周りと同じようなプロセスを踏んでしまったり、サッカーにしかなかなか目を向けれなかったりというものですね。サッカー以外のことや指導者以外の目線を同時に身につけることでより良い指導者、より良い監督になれるのではないかなと思っています。自分もまだ30歳でこれからどうなっていくのかわかりませんが、20代の時にサッカー以外のことも経験したりサッカーの中でも今のようにブランディングや著書『競争闘争理論』をはじめとする執筆、NPOでの活動をしたりしてそれらがピッチの上でも役立っていることがすごく多いです。もし、僕よりも若い方で「そういうふうに指導者やっていけばいいんだろう」という迷いを持っている方がいるなら「サッカー以外でも自分がやりたいことを同時にやりながら指導を勉強するのが役に立つ」というのを伝えたいですね。鎌倉インテルを通して、社会に影響を与えたいあまり指導者やコーチ、監督というものにこだわりを持たなくなりました。アルゼンチンから帰ってきて2年が経ち、価値観や見てきた景色も変わってきたので、”自分の根本にあるサッカーに携わっている目的” は変わりませんが手段が変わっていく余地は残しています。クラブの中でも指導者にこだわらず自分のレイヤーを上げていけると、影響を与えられる範囲が広くなることもあるなとこの2年で学びました。自分がサッカーに携わることによって、社会に大きな影響を与えることができる仕事をしていきたいなと思っています。いずれは他のスポーツや業界などといったサッカーの外に飛び出していきたい、サッカーを通して学んだものを別のフィールドでも活かして仕事をしてみたいという個人の思いもあります。鎌倉インテルというクラブは創設5年目とまだ新しいクラブなんですが、スタジアムを作ることをビジョンに持っていたり、他のクラブにはない我々だからこその良さを持っているクラブです。鎌倉市という街のポテンシャルも相まってこれからすごく楽しい、面白いクラブになっていくんじゃないかなと思っています。今までの固定観念にとらわれず、色々なものにチャレンジし、社会に良い影響を与えるクラブでありたいなと思っています。