指導者を志した経緯水戸から沼津へ移籍するまでに無所属の1年間があったのですが、その期間海外でトレーニングを積んだり、母校県立境高校を拠点に練習をしていました。後輩のGKコーチを引き受ける機会があり、選手達がどんどん上達する姿を目の当たりにし刺激を受けました。鳥取県の地域特性として、GKの専門的指導を行う組織がなく、将来は意欲を持つGKを育成できる環境を作りたいと考えるようになりました。『指導者になるのは選手を引退してから』というイメージがあると思いますが、自分は沼津やシンガポールで現役を続けながら指導経験を積み重ね、指導者としてのスキルを磨いてきました。そして、満を持して長年温めてきたGKスクール『KFD GKアカデミー』を鳥取県に発足したという形になります。印象に残っている指導者選手としても指導者としても影響を受けた方が2人います。1人目は、アルビレックス新潟シンガポールのGKコーチ、スコット・スター。シンガポールに自分のアカデミーを持ちながらアルビレックスでも指導していたのですが、キーパーとしての理論もしっかりしていて、試合で活きる練習を組み立てる事に長けていました。選手とのコミュニケーションの取り方も上手く、彼の指導のお陰ですごく成長する事ができました。2人目はドイツ、アレマニア・アーヘンのGKコーチ、ラルフベスティッヒ。彼からは日本ではなかなか教えてもらえない技術的な部分を吸収しました。例えば、手足の角度、足でのセーブの仕方など細かい所まで徹底的に鍛えられました。指導の中で心がけている事指導者はあくまで選手の成長をサポートしたり、選手に自信を与える役目でしかないと思っています。指導者としての責任感は持ちつつも、選手自身が自分の課題と向き合い、成長のプロセスを楽しみ、成功体験を重ねる事で次の挑戦に前向きに取り組んで行くことが大切です。指導者は側でじっくり見守り、先回りしすぎない事を意識しています。指導者としてスタートを切った沼津西高校で、当時高校2年生、GK経験のない選手を教えていた事があります。選手と正面から向き合う事で彼が成長していくプロセスを目の当たりにし、思春期という多感な時期でありながら信頼関係を構築していく事は難しくもあり、指導者としてのやりがいを感じている点でもあります。KFD GKアカデミーに込めた想い常々意識しているのが、生徒にとってスクールは生活の一部に過ぎないという事です。スクールで全てを完結させようとしない事が重要。鳥取県にはGK指導を専門的に提供している組織がなかった中、自分自身は幸運にもジュニア時代のコーチがキーパー出身だった事もあり、専門的なトレーニングを受ける機会を得る事ができました。週に1回、2回であっても定期的にGKとして成長できる環境を整えたい、という気持ちで今回の立ち上げに至りました。今後スクールがチームとの連携を強めていく事でより地域に根付いた存在になると思うので、選手の所属先のコーチと話す機会や試合を観に行く活動は大切にしています。小学生、中学生、高校生、大学生、社会人とそれぞれの年代で様々な選択をしていく鳥取県内のGK達と今後もじっくりと向き合っていきたいと思っています。指導者としての醍醐味選手の話し方や態度に自信が感じられた瞬間は嬉しいです。アカデミーに通っている選手たちは皆、所属するチームを持っています。彼らの試合を積極的に観るようにし、チーム内での立ち位置、声がけ、振る舞いなどを目にして自分も多くの刺激を貰っています。選手と指導者、お互いに切磋琢磨しながら成長の機会を得ている事を幸せに感じます。インタビューの中では鳥取に関しての話がメインでしたが、ゆくゆくは世界を目指したいという気持ちがあります。ドイツでプレーした時にも痛感しましたが、ヨーロッパと日本のGKのレベルにはまだ大きな差があります。指導者や協会の努力の甲斐もあり、日本のレベルも上がってきていますが、今後も世界トップレベルの情報を常にキャッチしながら自分自身のアップデートを怠らないようにしたいです。日本人GKがヨーロッパでレギュラーを獲得して活躍する姿を見たいですね。世界で戦える人材の育成を通じて、指導者としても国際的に活躍できるようなGKコーチを目指していきたいです。