指導者を志した経緯所属していたソニー仙台はソニー株式会社を母体としているサッカーチームで、僕は当時人事部で仕事をしながら選手として活動していました。31歳で現役引退した時、仕事上の目標もできたタイミングだったので指導者には正直興味がありませんでした。2012年に早稲田大学で臨時GKコーチを経験したり、子どもが入った仙台のスポーツ少年団の指導を依頼された事をきっかけに徐々に指導者の道に入っていく事になります。2015年に東京に転勤になり、改めて早稲田大学から声をかけてもらい、男子サッカー部の指導を開始、2019年には女子サッカー部も兼任する事になりました。指導者から受けた影響大学時代の松永章監督、GKコーチの杉山正人さんからは技術だけでなく、「人を育てる」という意識を強く感じました。スポーツ少年団のコーチをやっていた時にお世話になった千葉忠志さんと山本直樹さんも子ども達の主体性を大切にしている方でした。人としての挨拶、整理整頓など礼儀にも厳しく、基本的な事をきっちり指導しているという印象です。2015年に大学で指導を始めてからは、当時の古賀監督(現明治学院大学サッカー部監督)からも大きな影響を受けています。人間力の育成が何よりも大切で、その土台の上に初めて成績が付いてくるという考え方を持っています。どの指導者も人間性の育成を重要視している事が共通しています。とりわけ、大学サッカー部においては、プロになる選手よりも一般就職するメンバーが大多数です。彼らに期待する事は4年間の部活の中でリーダーシップを身に着ける事。チームで掲げる目標に向かって本気で課題に向き合い、異なるポジションのメンバーが同じ方向を向いて切磋琢磨できるよう引っ張っていく力です。プロになっても、会社員になってもベーススキルとして必ず強みになります。指導者として私の仕事は彼らが輝く環境作りであったり、プレーの基準を示して時にメンタル、スキル、フィジカルの3方向から支援していく事だと思っています。早稲田大学ア式蹴球部が大切にしているビジョン早稲田大学ア式蹴球部はお陰様で創部100周年を迎える伝統的な部活です。ずっと受け継がれているのが「WASEDA the 1st」という言葉です。『サッカー選手としても、人としても一番であれ』という考えがあり、早稲田大学ア式蹴球部の哲学としてOBをはじめ諸先輩方から受け継がれており、日々意識して活動しています。高校生と大学生の大きな違いのひとつは、部を自分達で運営していくという事です。例えばお金周りの管理、大会に出るための手続き、リーグ戦の運営、早慶戦企画運営等を学生が主体になって進めていきます。競技だけでなく、競技外の面においても責任感と実行力を持ってひとつひとつの活動に向き合う事を大切にして欲しいです。指導者冥利に尽きる瞬間男子10年、女子6年の指導歴を積み重ねる中で、OB/OGの活躍を目にする機会も増えてきました。中にはJリーグ、WEリーグでプレーしている選手もいますし、仕事をしながら社会人リーグでプレーしている選手もいます。学生時代の思い出話をするのは嬉しい瞬間です。チームには一浪して一般入試で入学した選手、身長が170センチそこそこしかない選手など苦労が多かった者も少なくありません。彼らが4年生になってリーグ戦開幕スタメンでピッチに立っている姿を見ると、ずっと努力してきた姿を思い出して涙がこぼれそうになります。女子は3年前に大学選手権において無失点優勝、今年の1月に準優勝という成績を残す事ができました。3人のGKは日々とても頑張っていて、それが結果に結びついているという事がとても嬉しいです。最後に、家族の協力なくして今の活動は継続できないので、感謝してもしきれない気持ちでいっぱいです。今後の目標男女共に大学サッカー日本一を目指して活動していますので、監督含めて選手たちのサポートを全力でしていきたいと思っています。また、大学サッカーから日本代表になる選手が増えてきている流れに乗って、もっと関東大学リーグのレベル向上に貢献していきたいです。例えば、早稲田の相馬勇紀選手、GKでいえば昨年日本代表に選出された小島亨介選手、筑波大学の三笘薫選手、法政大学の上田綺世選手など2018年時点で関東大学リーグで活躍していた選手達が現在日本代表として輝いています。今後も彼らに続くような選手を輩出できるよう、早稲田大学の一員として尽力します。