怪我の経験から学んだ、"日常の改善"-染谷さんが治療家を志された経緯を教えてください元々私はサッカーではなく、柔道をしていました。鹿屋体育大学在学時に、足が動かないくらい腰をひどく痛めてしまったんです。当時どこの病院や整骨院に行っても、「重度のヘルニアだね、手術しないと治らないよ。」という診断を受けました。そう言われた中で、諦めて手術しようと思っていた矢先、当時からお世話になっていた地元の先生に「切らないで治るぞ。お前に治す気があるなら、ちゃんとセルフケアも教える。選手を続けたいなら切らないで治したほうがいい」というふうに言われました。極端な話、箸の上げ下ろしまで気をつけるくらい日常生活では注意していました。そうすると、半年くらいでなかった足の感覚が戻ったんです。後の師匠になるその先生には事あるごとにお世話になりましたね。それが、決定的に今の世界に足を踏み入れたきっかけです。自分の怪我の経験と師匠への憧れが強く、治療家を目指すことになりました。そこから十数年、整骨院で働きましたが患者さんに治療の説明をする時間が自分にとってストレスに感じてしまうことが多くなってきていたんです。その時に、自分の身につけた技術を活かして、患者さんの力になりたいと思って今は部活動への講習会やインソールメーカーさんと仕事をさせていただいています。自分自身はメディカルとコンディショニングのコーチという認識で活動していますね。選手たちが築いてきた経験値に、手を触れない。-多くのアスリートを診られる中で、特に意識することはございますか?選手一人一人によって怪我の具合や体の発育段階は違います。しかしメディカルの観点からはすごく単純で、みんな違うんですけどみんな何も変わらない。選手個人個人に個性があるんですが、人間の本来の体の構造上、誰もが手や足といった部位の配置はほぼ変わりません。性別によって骨盤の幅などは違いますが、骨の数もほとんど変わらないんです。なので、「あなただから、この治療をしますね」とか「この角度で治そうね」というそれぞれに合った独自の治療は絶対にありえないです。つまり、その選手の個性やパーソナルな部分に触れずに治すことが大事です。”その選手たちが築いてきた経験値に手を触れない” ということは自分が一番大事にしていることなので。技術的な指導で怪我を治すのではなく、人間本来の体に基づいた治療を行います。プロ、アマ、子ども、大人関係なく。そうすることで、怪我が治った後もその選手の個性が消えないんです。多くの先生は、根本的に患者さんの怪我を治したいと思うと同時に自分の技術を披露したいと思っています。でも、それは再発しない体づくりを目指すには相反する行為です。いいものを提供すればするほど「あの先生なら治してくれる」と依存されてしまいます。依存されると、選手自身がセルフケアできなくなってしまうので、自分でできることはやってねって思っています。情報や知識は全部渡すので、日常生活から気をつけて治療していこうという方針です。このようなスタンスで、怪我を直してパフォーマンスを上げることを選手と一緒に目指しています。こうすることで、よくトップカテゴリーの子たちも自分の映像を持ってきて身体操作に関するアドバイスを求めてくれるようになりました。技術的な面ではアドバイスできませんが、体の使い方へのアドバイスは怠りません。治すだけでなく、怪我をしない体づくりをサポート-染谷さんの治療家冥利に尽きる瞬間はどんな時ですか?保険診療の時は、「先生のおかげで治りました」と言われるとすごく満足感がありました。でも、また再発する患者さんが多かったんです。当時は再発した患者さんにも笑顔でまた治療するのが治療家のプライドとしてありましたが、今は違うんですよね。怪我をした患者さんが1日でも早く復帰できる体づくりや怪我しないための体づくりを徹底して行うようになりました。そうすることで、怪我の再発に悩む選手をなくすことができました。さらに、復帰後も選手たちは感覚だけで話さなくなったんです。セルフケアもできてきて、自分で怪我を予防することもできるようになります。こっちに頼らなくてももうできるねという状態になるんですが、それでも頼ってくれるのは本当にこの職業冥利に尽きるなと感じますね。-染谷さんが院長をされている『アシカラ改善院』について詳しく教えてくださいうちの教えることのベースとしては、アシカラ改善院という名前からも分かるとおり ”足元から改善していこう” というものを大切にしています。歩き方や立ち方の改善で怪我しにくいから作り、また怪我の完治につながります。治療にきたトップカテゴリーの選手たちは口を揃えて、「これを子供の時から知っておきたかった。」と言ってくれます。これは、自分が子どもたちに言うより響くんですよね。だからよく、そのような選手たちには「君らの言葉を(子どもたちに)伝えるよ」と話します。これを続けていくと、今のトップカテゴリーの選手たちが指導者になったときに、サッカーを教えながら子どもたちの怪我のリスクを減らすことができるはずです。-最後に、染谷さんの夢や目標を教えてください診てきた選手たちが指導者になった時に、技術の前に知ることがあるというのを知っててくれたら、小中学生の間に正しい体の動かし方のベースが作られていくようになると思います。日本がそんな国になったら、どの競技でももっと上に行けるようになるので目指すべきはそこだなと感じています。本当の意味で、”日本人はフィジカルが強い” という世の中になればいいなと思っています。足から改善する、最大のパフォーマンスを出す走り方メディカル視点から考える、 怪我も防ぐ正しいボールの蹴り方