指導者としての原点ー 監督としてのキャリアを始めるまでの経緯を教えてください。現在、近畿大学附属和歌山高校サッカー部の監督を務めています。母校である近畿大学附属和歌山高校を卒業後、国士舘大学に進学し、その後大宮アルディージャのトップチームで主務を経験しました。その後、地元に戻り、現在の役職に就いています。ー 指導者を志したきっかけは何だったのでしょうか?高校時代に恩師である川合先生と出会ったことが大きな影響を与えています。高校1年生の終わりに体調を崩し、入院してしまったのですが、その際に川合先生が見舞いに来てくださいました。精神的に落ち込んでいた私に先生がかけてくれた言葉が今でも鮮明に心に残っており、『この人のようになりたい』と強く思ったのが指導者を目指す原点となりました。指導の軸となる考え方とはー 大学や大宮アルディージャでの経験が現在の指導にどのように影響していますか?大学時代には多くの指導者から学ぶ機会がありました。全国大会での経験やトップレベルの戦術を学ぶことで、自分の指導スタイルを確立するきっかけになりました。その後、大宮アルディージャのトップチームで主務として関わることで、プロの環境や選手マネジメントについて深く学びました。この経験が、現在の高校生指導にも活かされています。ー 高校生を指導する上で大切にしていることは何ですか?まずは『グッドスタンダード』を心がけています。もう一つは、現在だけでなく選手の将来を見据えて指導すること。高校生の時点では理解できないこともあるかもしれませんが、信念を持って伝え続けることで、将来的に彼らの役に立つと信じています。ー 高校生に対してどのようにコミュニケーションを取っていますか?私はある程度の距離を置くように意識しています。その分、コーチ陣が選手と私の間に入って円滑にコミュニケーションを取ってくれています。公平に関わることを大切にしています。また、選手たちの自主性を育てることにも重点を置いています。自分で考え、行動できる選手を育成するために、選手に課題を与え、答えを導き出すプロセスを重視しています。単なる技術指導だけでなく、社会に出たときに役立つ能力を身につけてもらいたいと思っています。選手権出場の意義とこれからの目標ー 監督として全国高校サッカー選手権に出場された時のお気持ちは?監督になって8年目にして初めて選手権に出場しました。それまでは決勝で何度も敗れていたので、喜びと同時に『なぜ今まで導けなかったのか』という自問自答もありました。高校サッカーにおいて選手権は特別な舞台であり、出場することの意義は大きいですが、それ以上に選手たちの成長を重視し、プロセスを大切にしたいと考えています。ー 指導者としての学びをどのように深めていますか?国士舘大学の先輩で兄のように慕う流経大柏高校の榎本監督からは学ぶ機会を与えてもらっています。榎本監督に声をかけてもらったことがきっかけで、強豪校が集まるフェスティバルに参加する機会を得ました。その経験が翌年のインターハイ出場につながり、そこから選手たちのレベルアップを実感しました。経験を積むことで、指導者としての視野が広がり、チーム強化につながっています。ー 指導者としてやりがいを感じる瞬間は?選手たちが成長する姿を見ることが最大の喜びです。特に、OBたちがグラウンドに戻ってきてくれるときは、『やっていてよかった』と強く感じます。卒業後も顔を出し、近況を話してくれることは、指導者としての大きな報酬です。彼らが成長し、それぞれの道で活躍している姿を見ると、この仕事の意義を改めて感じます。ー 今後の目標は?私の指導者としての目標は、恩師である川合廣征先生や大澤英雄先生のような存在になることです。先生方の背中を追いかけ、いつかは追い越したいという思いで日々努力しています。そして、『近大和歌山で学べば、成長できる』と思ってもらえるようなブランドを築くことを目指しています。選手たちがサッカーの技術だけでなく、人間性を育めるような環境を作っていきたいです。