指導者を志したきっかけ選手としてワールドカップ出場、クラブ代表も務めながら指導者をしていますが、全てはビーチサッカーの競技力を個人としてもチームとしても高めたいという想いの結果です。小学生の時にサッカーを始め、大学まで選手をしていました。就職してからは草サッカーをしていましたが、ビーチサッカーと出会い、脱サラ。特に指導者の道を志した訳ではありません。ただ、日本代表含め、ビーチサッカー界の高年齢化は大きな問題だと捉えています。持続可能な環境を構築する為には、下の世代も育てていかなければなりません。レーヴェ横浜の存続、ビーチサッカー日本代表のレベル維持、どちらを取っても指導は重要だと考え、指導者の道に一歩足を踏み入れた段階だと思っています。人に恵まれた人生だった指導者に限らず、人生を振り返ると人に恵まれてきたと強く感じます。小学生から続けてきたサッカーではその時点で必要な人としてのメンタリティやサッカースキルを教えてもらいました。昭和生まれなので今では考えられないようなハードなコミュニケーションも経験していますが、不思議と指導者の顔を思い浮かべると温かい気持ちになります。厳しい言葉や練習の中でも一貫して愛情があったと感じるからです。例えばラモスさんは投げかける言葉が強かったり、プロフェッショナルとして求めるレベルも高い方なんですが、ピッチを外れると家族の事まで気にかけてくれる優しい人です。振り返ると周囲の人の協力を得て自立できるようサポートしてもらった幸せな人生だと思います。対峙する選手によってスタンスを切り替える現在レーヴェ横浜というビーチサッカークラブのトップチームとセカンドチーム(15~23歳まで)の指導をしてます。トップチームは日本代表選手やJリーグ出身者もいるので彼らの個性や背景を尊重しながらチームをまとめ上げる事が重要です。コミュニケーションを大切にしながら一貫性を持って戦術の方向性を示す事を意識しています。セカンドチームに関してはまだキャリアもなく若い選手達なので技術面だけでなく、ピッチでの振る舞い等人間性の部分を気にして指導しています。年代によってアプローチが変わるので適宜自分のテンションやキャラクターを変える事に難しさを感じているところです。ビーチサッカーへの想いまだ馴染みのない方も多いビーチサッカーですが、実際にやるととてもハードなスポーツです。よく比較対象になるフットサルは色んな人がプレーヤーとして参加しやすいスポーツですが、ビーチサッカーはプレーのハードルが高いので基本的には観るスポーツだと思います。一度試合に足を運んでもらえればそのエンターテインメント性に魅了され、ファンになる人も出てくると期待しています。サッカーとは全く異なるルールがあり、よりアグレッシブでダイナミックなプレーが生まれやすい競技です。1試合両チーム合わせると平均9点以上動くゲームなので観ていて面白いですよ。指導者目線で言うと、サーフェイスの違いを強く感じます。地面からの反発を利用して前に進んだりジャンプする事ができるサッカーやフットサルと異なり、砂の上は体が埋まっていきます。その中で大きい筋肉と体幹を使って前に進んでいくのですごくトレーニングに適した競技です。瞬時に細かいポジション移動ができないので、頭を使って緻密な駆け引きをしながら位置取りをするのもビーチサッカー固有の特徴だと思っています。選手たちが、ビーチサッカーにだけ集中できる環境を2021年にロシアで行われたFIFAワールドカップファイナルのピッチに立ち、名前が呼ばれた瞬間、プレーヤーとしての喜びを嚙み締めました。5000人の観客が見守る中、美しい夕焼けを前に、日本国歌を聞いた時、戦いの前にも関わらず不思議な感覚になった事を覚えています。指導者としては、若手の選手がサッカーではなくビーチサッカーの日本代表を目指したいと言ってくれる事が嬉しいです。彼らが大きく羽ばたいて自分がロシアで見たような景色をピッチで見てくれる事を願っています。代表を目指す選手がビーチサッカーだけに集中してトレーニングできる環境を作っていく事が僕の役割だと考え、できる事は何なのか日々考えているところです。レーヴェ横浜という日本屈指のビーチサッカーチームが先頭に立って業界全体を引っ張っていかなければ、という使命感があります。育成はもちろんですが、若い選手がビーチサッカーで食べていける環境を用意する事も大切です。環境が整っていない中、日本代表を目指せという無責任な事にならないよう、精進していきます。まずはDAZNで配信されるような競技になって、テレビをつけるとニュースで大谷選手のように取り上げられるような環境を目指したいです。