恩師からの誘いを受けて帰還プレーヤーから指導者に転身する時も実はまだプレーしたいと思っていました。マルタから帰国して日本で再びプレーしていましたが、手術を要する大きな怪我をしてしまいました。治療をしながら何かできる事はないか探していたところ宇都宮チェルトFCの根岸さんに「指導者をやってみないか」と声をかけて頂きました。根岸さんは、僕が3歳でサッカーを始めた時からずっと側にいてくれたとても信頼している指導者です。宇都宮チェルトFCの『楽しんでプレーする』という理念を継承できる人を探しているという事だったので快く引き受ける事にしました。栃木県で初めてできたクラブチームである事もあり、チェルトFCのOBにはクラブを誇りに思っている人がすごく多いです。根岸さんが大切に育んできたクラブを引き継ぐ事ができて大変嬉しく思っています。選手とプレーしながら指導を体現化する指導者として活動を始めてからライセンスを取得したり、勉強は続けていますが、どちらかというとプレーヤー目線で選手と向き合う事が多いです。外からあれこれ指示を出すのではなく、一緒にプレーする中で選手が能動的に技術を吸収していく事が大切だと考えています。サッカーでご飯を食べていた経験もあるので、練習だけでなくピッチ外で気にすべき事、例えば身体作り、その日の体調に目を向ける、といった事もどんどん伝えていきたいです。あとは、「楽しむ」事ですね。皆サッカーを始めた頃はボールを蹴ったり、ゴールを決めたりするのが楽しい事だったと思います。レベルが上がってくると、キックの質、ドリブルの仕方、声掛けといった細かい技術を追求するようになります。そこにまた別の楽しさがあるんです。技術を磨く事で楽しい世界がどんどん広がっていくんだという事を選手には伝えています。着任時はうまくいかない事もありましたが、今は選手ひとりひとりが自立しています。挨拶、コンディション作り、取り組み姿勢全て主体的に考えています。成長し続ける選手の姿を見て僕も刺激をもらっています。成功体験を掴み取る選手の姿が幸せにまずは自分がプレーしていると楽しいというのが前提にあります。僕が楽しいと思っている事を周りの選手が感じてくれて、一緒に楽しんでくれている時はとても嬉しいです。数多くの失敗や悔しさを乗り越えて成功体験を掴み取った時の選手の笑顔を見ると「あーいいね!」と心から思います。元々は物静かでおとなしい性格でしたが、高校大学と進学し、プロになっていく中で自分の殻を破る事ができました。負けが続いてチームの雰囲気が悪い時にマイナスな感情も全てプラスに変えて声を出すようにしたんです。例えば「疲れた」は「もっと強くなれた」のように言い換える事でハッピーな雰囲気作りをしてチームを盛り上げる事を意識しました。楽しむとふざけるは似て非なるものなので、その線引きはしっかりとしてメリハリをつける事が大切です。今後も僕に関わっている全ての人が笑顔になれるような働きかけをしていけるよう頑張っていきたいと思っています。