指導者として、憧れのプロの舞台へ中学校と高校では、GKコーチがいない中で自分でメニューを考えてプレーしないといけない環境でサッカーをしていました。大学まで選手としてプレーした中で、当然プロを目指してしていたんですがプロにはなれなかったです。JリーガーじゃなくてもJFLでも選手としてできたらいいかなと思っていましたが、プロの世界でやりたいという思いは変わらず、選手としてプロになれないと思ったタイミングでプロの指導者になろうと決意しました。 そこから指導者として本格的に勉強させてもらうことになりました。大学生の後半は就職活動もしていましたし、内定もいくつかいただいている中ではあったんですが、やっぱり指導者への道は諦めきれなくて。決断のタイミングには、本当にいろいろな葛藤がありましたね。今まで自分が指導者として活動できているのは、選手時代に多くを教えていただいた指導者の方々であったり、指導者として関わらせていただいた他の指導者の方々あってこそだと思っています。 指導者はそれぞれで全然違う個性があるというか、それぞれ強い思いを持たれています。一緒に指導の勉強をさせてもらってきた人たちは色があって、オリジナルの考え方があるので、今でもすごく勉強になっています。心が大きく成長する中学生年代の子どもたちに寄り添った指導を。大学生は言えば伝わる部分が多いのですが、中学生に関しては思春期だったりご家庭の状況や学校生活などいろんな局面がある中で、サッカーをしに来ています。「 今この子は何を考えてるんだろう」というように、常に選手一人一人に寄り添うことが大切だなと感じましたね。ここは、高校生や大学生を指導するのとまた違うギャップというか。中学生年代の選手たちとコミュニケーションを取ることは最初すごい苦労しました。今も中学生を見ていますが、彼らは日に日に顔色が違うんで、学校のスケジュールや行事も把握しています。「今この選手、体育祭前でちょっと疲れてるなぁ」といったタイミングで、 きつい練習で追い込むようなことをしちゃうと心が離れてしまうことも少なくないのかなと思っています。選手たちの私生活とサッカーのバランスを理解することはすごく難しい部分ですかね。高校生よりは中学生の方が気持ちの浮き沈みがすごいあるなぁというのは感じますね。学校だけじゃなくて家庭の部分でも親御さんと話すこともありますし、 学校の担任の先生とも話をすることがあります。選手たちはアカデミーの子たちも学生なので、私生活や学校生活が整ってない中でサッカー するのは僕たちとしてもよくないのかなと思っています。そういうところも含めて、選手の学校での頑張りやご家庭での意識の変化などを指導者が知っているだけで、ピッチ内でのアプローチにも大きく影響すると思いますね。本気でプロになりに来ている選手たちのモチベーターに中学生とはいえ、Jリーグクラブの下部組織である以上はプロ選手を育てなきゃいけないという大前提があるので、選手たちに寄り添いすぎても良くないのかなと。プロ選手を出さないといけないという部分と、選手一人一人に寄り添うという部分のバランスはやはり難しさを感じています。「最低限この基準は欲しい」というところを示さなきゃいけないんですけど、僕が今指導をさせてもらっている中でまだまだ勉強している点です。プロを本気で目指しに来ている子どもたちもいるし、クラブとしてもやっぱりプロを出したいっていうところがある中で、そればかり追い求めても逆に今度はもうサッカー嫌いになっちゃう選手も出て来るかもしれないと思っていますし。しかし、そのバランスを適度に調整してあげたり、状況に応じて身近にいる我々が選手たちのモチベーターにならなきゃいけないと思っています。モチベーターとして、指導者としての両面は指導する上でもかなり意識している部分ですね。このような素晴らしい環境でお話をいただいて指導させてもらえる現場があるのは、とても幸せに感じています。年単位でクラブを離れるとなると、クラブにどれくらい尽くせるかはわからないですが。僕自身は関西出身なので九州のクラブで育ったわけでもないですけど、大分トリニータ・レノファ山口・そして今のV・ファーレン長崎と九州近辺のJクラブアカデミーで、その土地土地で素晴らしい経験をさせていただいているのは幸せなことなんだなと日々実感しています。試合に勝って子どもたちが喜んでる姿や親御さんが喜んで姿を見ると、指導者やっててよかったなと思います。大分を退団する時に最後GKチームで集まったのですが、僕が最後の挨拶をしようとしたタイミングでGK5人が号泣してたんですよね。まだ僕は一言も発していないのに。(笑)僕がもうここからいなくなるってなった瞬間にその子たちが泣いている姿を見た時は、 もっとこのクラブでやれることもあったんじゃないかと思いましたし、選手も信じてついて来てくれてたんだなというのがわかったので、指導者やっててよかったなとすごく感じました。今でも教え子たちから連絡がきたりしますしね。その子たちに関しては、サッカーから離れている子たちもいますけど、仕事の報告までしてくれるので嬉しいですね。選手たちと素敵な関係性を築くことができていたんだなと思う瞬間です。教え子たちの、より高いステージでの活躍を願って自分自身、指導をしていると熱くなって周りが見れなくなったりもするんですけど、そこはキャリアを重ねていく上で、熱くなる部分と冷静になる部分は調整できるようになりたいですね。今後指導した選手が年代別の代表になったりすると、「日本のために指導をやってきたんだな」と思うんですかね。そうなっていけるようにというのと、Jクラブでやっていく上では選手たちにより高いステージを目指してほしいんで、その目標に対して僕らがどれだけサポートできるかというのは、僕の中では目標みたいな感じではありますね。これまでは大学生も見させてもらって、山口で高校生に指導させてもらい、現在は長崎で中学生を指導させてもらっています。これからはトップチームやレディースなど、一通りしっかり見れるように力をつけていきたいなと思っています。 クラブとしては、去年カテゴリーを上げることができたので、今年はより上位を目指すというところを目標にしながら、GKとして チームを助ける選手たちと一緒に高みを目指していきたいです。