サッカー指導者を目指した原点ー 監督として現在に至るまでのご経歴を教えてください。鹿屋体育大学を卒業後、広島国際学院高校の保健体育科教員として勤務しながらサッカー部を指導しています。前任の監督から2年前にチームを引き継ぎました。大学卒業からずっとこの学校で教えていて、17年か18年になります。高校生という多感な時期に寄り添い続ける中で、サッカーだけでなく教育者としての在り方も日々学んでいます。ー もともと指導者を目指していたのでしょうか?実は当初はスポーツトレーナーになりたいと思っていました。でも、現場での活動に魅力を感じて、高校の先生として生徒と関わりながら、トレーナー的な役割を果たせたらと考えるようになりました。高校サッカーの面白さに気づいてからは、この道しかないなと思って現在に至っています。最初はサッカーの技術指導というよりも、人間的な成長を支えるという立場でいたいという思いが強かったです。ー 指導の中で大切にしている価値観はありますか?大学時代に先生から教えられた『毎日をポジティブな言葉で締めくくる』という言葉が今でも心に残っています。生徒にもなるべく前向きな声かけをして、明日も頑張ろうと思えるような環境づくりを心がけています。練習で上手くいかない日もあるけれど、『でも今日はここができたよ』と声をかける。それだけで、生徒の表情が変わるんです。その積み重ねが大きな信頼になっていくと感じています。選手の“考える力”を育てる指導法ー 練習やミーティングで意識していることは何ですか?考えるきっかけを与えることですね。答えを与えすぎないようにして、選手が自分たちで課題を見つけて発信できるように意識しています。練習中に何かを掴めた時の成長スピードはすごく早いです。あえて抽象的な指示をすることもあります。それが『なぜこの動きが必要なのか』を選手自身が掘り下げるきっかけになっています。ー 練習以外のコミュニケーションでも工夫されていることはありますか?試合の合間や終了後には、生徒たちだけでミーティングをさせています。自分はその流れを見ながら、必要であれば修正を加えるというスタンスです。なるべく自発的に意見を出せる空気をつくるようにしています。例えば去年の県大会決勝では、選手の提案を取り入れてスタメンを変更したこともあります。その判断が功を奏して勝利につながった時は、生徒との信頼関係が形になった気がしました。ー 生徒との日常的な接し方についても教えてください。普通の会話が大事だと思っています。ピッチの上でも堅苦しくならず、思ったことは言いなさいと伝えています。チーム全体で納得感を持てるのが理想ですね。生徒たちには『黙って文句を言うくらいなら、まずは自分の意見を伝えよう』と常に言っています。地域と共に歩むチーム作りー 全国大会出場など、大舞台での経験をどう捉えていますか?特別視しすぎず、平常心で臨むことが大事だと思っています。その場に飲まれず、いつも通りを貫くことで本来の力が出せると感じています。もちろん緊張はあると思いますが、監督が気負いすぎると生徒にも伝染してしまう。だからこそ淡々と、でも熱量は内に秘めて挑む。そんな姿勢を意識しています。ー 選手権を通じて得たものは何でしたか?全国の基準を体感できたことは大きかったです。許されるプレーの基準、強度など、実際に指導する立場で経験しないとわからないことがたくさんありました。自分たちの基準を一段引き上げる良い機会になりました。選手だけでなく、自分自身も大きく成長できた大会でした。スタンドに集まった全校生徒の声援を受けて、チームと学校が一体になった瞬間は忘れられません。ー 今後の目標についてお聞かせください。学校がより発展し、地域に愛されるサッカー部を目指したいです。海田町という土地にある学校なので、地域の方に気軽にグラウンドに来てもらったり、にぎわいの拠点になったりするような、そんな存在になれたらと思っています。単に強いチームではなく、地域に貢献し、地域と育ち合うサッカー部。『海田といえば広島国際学院』と言ってもらえるような存在を目指しています。