指導者転身を決めてすぐ訪れた出会い2022年まで東京経済大学のサッカー部で選手としてプレーし、2022年11月から本格的にGK指導者として活動を始めました。指導者として最初の活動場所は埼玉県のグランツGKスクールというGKスクールです。そのスクール以外にも、東京のジュニアユース年代が所属しているレッドスターJYFCと埼玉県の狭山ヶ丘高校からご縁をいただき、合計3つのチームで活動しています。サッカーを初めて教えたのは中学生の頃でした。プロを目指しながらGKとしてプレーする合間に子供たちにサッカーを教えに行ってたんです。僕はGKの中では身長もあるほうだったんですけど、高3や大学1年生くらいになると大学からもJFLからも推薦の声が掛からなくなり、選手権では1回戦で負けてしまいました。そのタイミングで自分はプレーヤーとして必要とされてないと思い、GK指導者を目指すことにしました。そんな時、今教えているスクールを始めようとしていた仲間と大学でたまたま出会って、「スクール作るんだけど一緒にスタッフやらない?」と誘われたんです。これが自分の運命なのかなと思って、何も考えずに二つ返事で「やります」と答えました。プロを目指すのを諦めてから、将来は会社に入ってサラリーマンをやるのかなと思ってたんです。サッカーを教えていた中学生の頃から小さい子どもは好きだったので、指導者にならないかと声を掛けていただいた時、教える立場になるんだと気持ちが高ぶって「(自分の進む道は)これだな」って自然と腹を括りました。それからずっと指導者として活動しています。(写真手前、選手たちにデモンストレーションを見せる荒木さん)一見サッカーに関係なさそうなことが重要高校時代のGK指導者は、GKの技術面とメンタル面ともに本格的な指導をしてくれて、僕の指導スタイルもそこから影響を受けています。そのGK指導者に口酸っぱく言われたのが、人間性を高めることなんです。「この先プロになろうと会社勤めをしようと、サッカーを続けるにしてもサッカーから離れるにしても、お前の人間性がしっかりしてないと誰からも認めてもらえないぞ」と。高校1年生の頃の僕はちゃらんぽらんで、その時から3年間ずっとうるさく言われてたんです。3年生で副キャプテンを任された時、GK技術の向上だけでなく人間としての成長を認められたんだと感じました。そんな経験があって、指導者として選手たちの技術のレベルを上げていきたいですけど、それ以上に人間性の大切さを知って欲しいと思ってるんです。保護者も技術と人間性の両方で子どもたちに良い影響を与える指導者を求めているのがわかりました。小学生だろうと中学生だろうと高校生だろうと、言うことはあまり変わりません。例えば、試合でも練習でも、自分のチームの指導者だけでなくグラウンドにいる関係者に挨拶をすること。自分たちのチームの荷物が他の人の迷惑にならないように綺麗にまとめること。目の前にあるゴミを見て見ぬふりする子たちとか結構中学生には本当に多くて、厳しく注意してますね。誰も見てなさそうなところ、練習以外の普段の生活での態度が意外とサッカーに直結すると思います。そういうところがしっかりしてないと、選手としても人間としても成長していかないと選手に教えています。本気の姿勢なら、厳しさと楽しさは両立できる指導者として厳しいこともよく言いますが、選手たちの笑顔は絶対消さない。そのために僕自身も笑顔を忘れないようにしています。僕も高校の3年間は厳しい指導を受けましたけど、それ以上にサッカーが面白かったとか楽しかったなという思いが今もあるんです。笑顔を忘れたことは1回もありません。本気でサッカーをやるから楽しいんです。これはどのカテゴリーで指導していても意識してるんです。選手たちは練習中もそうでない時も笑顔でよくコミュニケーションを取りに来てくれます。指導者の笑顔が少ないと選手は距離を感じてしまいます。僕は「このGK指導者、話しかけづらいな」とは絶対に思われたくない。逆に距離感が近かったら、技術面で褒めたらやっぱり選手はすぐ乗ってくれるし、逆にその選手の直した方が良いところを指摘してもすぐ聞き入れてくれます。指導者と選手の距離が近いもう一つのメリットは、選手のちょっとしたコンディション不良や変化をすぐ見つけられることでしょうね。他に工夫していることは、オンとオフの切り替えをはっきりすることです。僕は選手たちと年齢が近いので、オフの時間はお兄さんのような存在として練習中よりもフラットにコミュニケーションとること、それから選手一人ひとりと向き合うことを心がけています。練習の時間になれば、僕は指導者としての話を選手にしっかり伝えるつもりでスイッチを切り替えるんです。教え子たちの成長した姿を見続ける喜び自分が指導し始めてから、教えている狭山ケ丘高校が埼玉県で初のベスト8になりました。選手から「やっぱ荒木さんいると違いますね。チームが変わりますね」と言ってもらえてGK指導者をしていて良かったと思いましたし、1年目からこんな素晴らしい経験ができて良かったです。もう一つは、いま岡山学芸館の高校1年生でGKの教え子がいるんですけど、帰省した時にわざわざ遊びに来てくれたことです。GK指導者のことが大っ嫌いなら貴重な時間を使って会いに来ないと思います。帰省中に、しかも短いオフの期間にも関わらず、卒業したチームに顔を出してくれるって指導者としては本当にありがたい。グラウンドに来たときも笑顔いっぱいで、監督よりも先に僕のところまで来て挨拶してくれてすごく嬉しかったです。巣立った選手が活躍してくれることが指導者として一番ありがたいです。みんなの今後が楽しみです。これからの個人としての目標は、自分が育てた選手と全国優勝すること。その一つだけが死ぬまでの目標です。テレビ中継が入って全国の人たちが注目する中、最後まで勝ち続けるチームのGK指導者をやること。組織としての目標は、教えてるチームの子たちの技術の向上はもちろん、僕も指導者として一緒に成長することです。指導者を始めたときからずっと、自分のモットーとして掲げてきました。選手に教えるだけで自分が全く成長していなかったら、選手たちのスキルも伸ばすことができません。もし監督として来てくれっていう声が掛かってもすぐ対応できるように、フィールドや戦術の知識も蓄えておきたいですね。それも自分の成長に繋がると思います。