父と兄が身近なお手本父と兄が指導者をしている環境で育ったのもあり、プレイヤー時代からいずれは指導者になりたいと考えていました。父はJリーグでの指導を経て、現在はノジマステラ神奈川で監督をしており、兄は神奈川県で小中学生の指導をしています。間近で彼らの仕事ぶりを見る中で自然に指導者を志し、「プレイヤー時代の経験を活かしてやるぞ」という気持ちでいました。サッカー協会も『プレイヤーファースト』を掲げていますが、真の意味で実践できている指導者はまだまだ少ないと思います。彼らは常に選手に寄り添う姿勢を持っていて、見習いたいです。実際にお世話になった方だと、町田ゼルビアジュニアユース時代にお世話になった指導者に救われました。当時不登校だったのですが、その事を打ち明けると少しずつ学校に行けるようにサポートすると申し出てくれました。昼間カフェで勉強する等サッカーを離れた場でも親身に接してもらい、この出会いが無かったら自分はサッカーを辞めていたかもしれないと思っています。自分もそんな風に教え子に寄り添える指導者になりたいです。スペインでプレーしていた時に出会った指導者はやはりサッカー先進国なだけあり、戦術や練習メニューもとても参考になるものでした。現在は学んだ事を活かして指導に当たっています。オンとオフの切り替えを大切にスペイン人は日本人と比べてオンとオフの切り替えが上手いと、現地で実際に指導現場に触れて感じました。練習前後は選手と監督が冗談を言い合いながらふざけていて、練習が始まると一気にモードが切り替わります。指導者に限らず、日本人が苦手な点だと思います。自分は日頃から意識して練習前に小学生と一緒に遊んだりしています。子ども達はなかなか切り替えがうまくできないので声掛けやテンションを変える事で練習モードに促すようにしています。小さいうちは初めから答えを教えない様々な年代を指導していますが、一番難しいと感じるのは小学生です。年代が上がってくるとサッカー歴も長くなる傾向がありますが、小学生はまだやり始めたばかりの子ども達も多い。細かい要求を出しても難しいので練習メニューの設定から工夫が必要です。自分が小学生の指導で意識しているのは『なるべく答えを言わないこと』です。試合中に『パスをここに出せ』という指示をしてしまうパターンは多いですが、自分は答えを自分で導けるような質問をするようにしています。例えば試合中のドリブルに関して、空いている選手が見えたうえでのドリブルなのか、何も考えずにしてしまったのかでは全然意味が違います。『空いている選手は見えていたか?』と聞いたうえで、どういう選択肢があるか考えさせて成功体験に繋げてあげたいです。逆に高校生には初めから答えを教えて成功体験を積み上げてもらうようにしています。この指導方針はスペインでの経験が大きく影響しています。日本人の良さは言われた事を100%近くやり切る事ができる点です。一方で自分の考えや主張を伝える事は苦手。子ども達には自分の考えを持つ事の重要さを知ってもらうためにもあえて、答えをすぐには教えないようにしています。指導者冥利に尽きる瞬間多くの指導者がそうだと思いますが、上手くいって子ども達が喜んでいる姿を見ると自分も嬉しくなります。自分が何かを達成するより誰かが何かを達成する事をサポートする方が性に合っているようです。自分が練習メニューを考える時に、「こういうシチュエーションを作り出したい」とイメージしているんですが、実際にテーマに沿った状態で練習が行えた時とても嬉しいです。その練習を通じて選手が何かコツを掴んで自信を付ける事に繋がれば最高です。まだ新米指導者なのでそのような場面は少ないですが、これから少しずつ増えていけばいいなと思いながら練習をしています。今後の展望としては、近いところに目標となる存在が二人いるので、まずは父と兄に追いつけるように指導者としてのレベルを上げたいです。更に、サッカーを心から楽しめる子ども達がひとりでも増えて、スキルだけでなく人としての成長も促せるような指導者になっていきたいと考えています。