中学生への指導で感じた、"ジュニア年代の課題"-山代さんが指導者を始められた経緯を教えてください。21歳から指導者という立場で活動を始めました。大学3年の夏に怪我をしてしまい、本気でプレーできなくなってしまったのが大きな理由です。その時6つ離れた弟が小学生の選抜チームでプレーしていたんですが、そのチームから手伝って欲しいとお声がけいただき、そこが本当の指導者キャリアの入り口でしたね。指導者キャリアのスタートだった小学生の指導の後は、中学校の部活動で保護者会から委託された外部コーチとして指導しました。そのような経歴を踏んで熊本県の中でも小さな、人口五万人ほどの荒尾市にうちのチームができることになるんですが、ジュニアはこの4月で20周年を迎えました。-指導者として活動される中で、気づいた "課題" もあったとか?これは中学生を指導していて感じたことなんですが、小さなクラブ出身の子たちが中学生に上がった時に、中心地の大きなクラブ出身の選手に技術的に追いつくことが難しく、どうしても差が生まれてしまうんです。中心地のチームと戦うには、もっと早い年代から適切な指導を受けなければいけないという思いが芽生え、自分が立ち上がらないとと思いました。自分が下の世代の子たちに適切な指導をしていくことで、中学校に上がってもサッカーを楽しめる子であって欲しいという思いから荒尾市に荒尾JFCを立ち上げましたね。中学校での指導を通して、ジュニア年代の課題がよりわかりやすくイメージできたのが大きかったです。勝負すべきは、対戦相手ではなくゲーム機-山代さんの指導者としての軸をお伺いできますでしょうか?自分自身がしっかりとした指導者に指導を受けた経験がなかったので、子どもたちにはそういう経験をさせるべきではないなと思っています。その一方で、自分の原点は ”自分達で考えながら練習する” ことだったので、そういった経験は今の指導者のベースになっています。我々はプロを育てるためにサッカーを教えているのではなくて、サッカーを通じて子供たちが健やかに人として成長することを目的に掲げています。ですので、年々サッカー本来の「楽しさ」を感じてもらうようなチーム作りには力を入れていますね。-指導者としての軸は、指導者になりたての頃から変わってないのですか?20代のころは、県のトレセンへ一人でも多く輩出したい!みたいな気持ちが強かったんですが、それぞれの子たちに合った指導が今は一番必要だと感じています。つまり、中学や高校だけでなく、大人になってもサッカーに携わりたいと思えるような個々にあった指導を意識していますね。「こうやりなさい」ではなくて、道標を与えながら指導しています。最近よく他のコーチにもいうことなんですが、勝負すべきは対戦相手ではなくニンテンドースイッチだったり世の中にあふれる楽しいことだと思います。みんなで高め合える遊びとしてスポーツを楽しんで欲しいですね。子どもたちが家に居ながらでも友達と遊べる時代に変わってきたからこそ、ますます負けてられないなぁと思います。クラブ愛溢れた教え子たちと、ここを守り抜くという責任感-指導者冥利に尽きる瞬間を教えてください。サッカーの指導者として、「できなかったことが、これだけできるようになったんだ」という子どもたちの成長に気づいた時は嬉しいですね。目の前で指導している子どもたちの目に見える成長ももちろん嬉しいですが、OBの子たちの社会人としての活躍を見るとさらに嬉しさを感じます。荒尾市という小さなクラブで同じ時間を過ごした仲間が、離れてからもこのクラブへの思いを持ち続けてくれていることや教え子がコーチとしてやってくれていることなどは本当に感謝していますし、喜びを感じていますね。もちろん、責任のある立場で指導させていただけることへのありがたさと同時に大変なこともあります。しかし、大変だなと思うことよりも熊本県で活動するクラブの代表としての責任感の方が勝っています。今生徒の数も増えてきたのと同時にコーチも増えたので自分の指導のベクトルやビジョンの共有がなかなか難しいなと感じていますが、OBたちや目の前の子どもたちの頑張り、楽しんでいる姿にいつも助けられています。-指導者としてのこれからの目標や夢はございますか?子どもたちはメッシや日本代表の久保選手のような憧れのスターがぞれぞれにはいると思うんですけど、我々指導者は子どもたちの身近な道標であるべきだと思っています。そういった中で、指導するだけでなく、”責任の中で自分がサッカーを楽しむ” という気持ちを強くもっています。私たち指導者が楽しんでいる姿を見せることで、選手たちにもいい雰囲気が伝染すると思っていますので。きつい時ももちろんありますが、常に楽しむ気持ちだけは持ち続ける指導者でいようと思います。指導者を犠牲にしない街クラブを増やすには? ウェルビーイングの重要性と、これからのクラブ経営。