選手からトレーナーへのシフト僕自身は現役時代にすごく怪我が多く、中学生の頃から年間通してフル稼働できる事が少ない選手でした。トレーナーさんにお世話になっていく中で、このようなサッカーとの関わり方もあるんだと自然に知るようになったんです。金光大阪高校でプレーする中で、チーム内外に自分より遥かに上手い選手がたくさんいて、今後プロを目指していくのは正直難しいだろうと感じた事もあり、高校2年生から3年生に上がる頃にはもうトレーナーを自分の進路として選んでいたと思います。進学した森ノ宮医療大学には体育会のサッカー部があり、4年生までプレーヤーを続けました。僕が入学した時点で大学自体が創立10年未満、サッカー部は創部2年目という出来立てホヤホヤの状態でした。伝統強豪校であれば上下関係が厳しかったり、受け継がれるしきたりがあったりしますが、クラブ作りそのものができる環境でのびのびと悔いのないプレーヤー生活を送る事ができました。SPORTS UNITED IKEDAでの活動大学を卒業後、地元である池田市でSPORTS UNITED IKEDAを立ち上げました。現在はサッカースクールとバルシューレというドイツ発祥のボールを使った運動教室(幼児向け)を開催しています。ゆくゆくはバスケットボールや野球といった他の競技もクラブ内でできる環境を目指していきたいです。SPORTS UNITED IKEDAの立ち上げに関して、創部間もないサッカー部に所属した大学時代の経験が活きたかというと、微妙なところです。僕は創部2年目で入部したので先輩方がゼロから立ち上げたものを更に拡大していくイメージでした。組織として動くという面では大学時代の経験が糧になっていますが、新たな気持ちで試行錯誤しながら現在の形まで作り上げてきました。池田市のスポーツ環境を改善したいイタリアでスポーツビジネス、スペインでサッカー指導を学んだ時に、現地の総合型スポーツ施設を訪れる機会がありました。日本だと他の競技をやっている人同士が交流する事はあまりなく、世代を超えた接点も持ちづらいのが現状です。一方でヨーロッパで目にした光景は、グラウンド、体育館、プール、ジムがひとつのエリアにあるだけでなく、カフェやバーも併設されており、地域のコミュニティとして機能するような施設でした。子どもがサッカーの練習をしているのをカフェで談笑しながら眺める保護者や、待ち時間に自分もジムで身体を動かす保護者であったり、利用者が思い思いに楽しんでいる姿にとても感銘を受けました。地元の池田市に目を向けると、スポーツ環境が全く整っていない事に大きな課題感を持ちました。人口10万人に対して公共グラウンドは河川敷にしかなく、ナイター設備を持つグラウンドはほぼない状況です。公共グラウンドは夕方5時以降の貸出枠も設けていない状態なので小中学生が十分に練習できる環境とは到底言えません。屋内競技に関しても、大きな体育館が2つしかなく常に予約の取り合いという状況です。一方、池田市は教育特区に定められている程教育に力を入れていて、全国に先だってプログラミング教育をスタートさせています。僕は座学だけでなく、スポーツを初めとする学外活動も全部総合して教育だと考えているので、ぜひスポーツ環境を改善していきたいと考えています。選手達のポテンシャルを最大限に引き出す環境作りを大切にしている僕がサッカー指導者として活動を始めたのは、母校の金光大阪高校サッカー部です。当時担当していたのは高校1年生のカテゴリーと全体の中のCチーム(一番下のチーム)でした。そこから毎年10人程トップチームに送り出す成果を出しましたが、振り返ると特別なトレーニングをしたわけではないんです。あくまで選手達が持っているポテンシャルや特徴を100%発揮できる環境作りに注力しただけでした。面白いエピソードなんですが、高校1年生の時 1点差で負けてしまった選手達に「現時点では勝てなかったけれど、高校3年生になった時にどんな結果が出せるかが一番大事。一喜一憂するのではなく、これからどうトレーニングに励んでいけるかが勝負だ」という話をしました。そして2年後、最後の選手権予選で同じチームとベスト8を懸けた試合で当たり、今度は1点差で勝利しました。試合後、選手達から「1年生の時に大井コーチから言われた言葉を思い出しました」と言われすごく嬉しかったです。選手達のモチベーション源になるような声掛けができた事で難しい相手を倒す結果に繋がったと思います。選手達を信じ、可能性を引き出すアプローチをこれからも大切にしていきたいです。 今後の展望サッカー指導者としては、地元池田市から初のプロサッカー選手を輩出するのが目標です。関わった選手の中にはサッカーを辞める人もいると思いますが、何か熱中できる分野を見つけて突き詰めて行きたいと思えるタフな人材をサッカーを通じて育てていきたいです。SPORTS UNITED IKEDAとしては地域に根ざした総合型スポーツクラブを目指し、街づくりに貢献したいです。ゆくゆくは他の地域、国とも活発に交流できるようなクラブにしていくのが夢です。