現役時代、実は苦手だったセットプレー身長が180cm以上あり、選手時代はCBやボランチをやっていました。コーナーキックの度に上がってはいたんですが、そもそもヘディングが大の苦手で、ボールが頭に当たって脳震盪を起こした事もあるくらいです。相手は自分がヘディングが上手いと思ってマークしてくるので、そこは得をしていたかもしれませんね。トレーニングにしても「勢い良く入れ」としか言われた記憶がないのでセットプレーに関して特殊な事は選手時代は何もしていなかったです。現役引退後は、2019年~2020年にFC岐阜のトップチームのコーチをしていました。元々指導者になりたいと思った事はなく、実はライセンスも持っていないんです。高知ユナイテッドSCで選手をしていた時にFC岐阜のコーチのお話を頂きました。40歳くらいまで現役でサッカーを続けるつもりでしたし、もう一度Jリーガーになるという夢もあったので一度はお断りしたのですが、熱心に誘っていただき、誰にでもある話じゃないし、とにかくやってみようという気持ちでお受けする事にしました。当時ゼムノビッチ監督に「セットプレーコーチを頼む」と言われたんですが、既にリーグ戦が始まっているタイミングでした。更に僕はプロを指導するのが初めてという状態で。しかし手探りで様々な人に相談しながらやった結果、なんとセットプレーからの得点率が2倍になったんです。「これは育成年代にも伝えられるだろう」という事で仲間にも共有したところ、高校サッカーでもすぐに効果が出たので手応えを感じ、現在まで活動させて頂いています。原理原則に沿った、選手の特性を活かすセットプレーをセットプレーアドバイザーとしての指導において、具体的には得点シーンを見たり、数字を集めたりして原則を見つけました。練習では毎日5本選手に蹴ってもらう事を継続し、少しずつ特徴を捉えたり改善していきました。試合では各選手の特徴を活かした配置を決め、各自が好き勝手動く事を辞めました。こういった指導を聞き入れてくれた選手には感謝しかありません。『限りなく選手目線で』という事を大切にしています。僕が選手だったらミーティングが長かったら頭に入らないし、トリックプレーまでやろうとするとキャパオーバーになってしまいます。選手に多くの負担を強いるというよりは選手の長所を活かせるようにしたいです。無理にできない事をする必要はないと思います。選手への声掛けについても基本的には「ダメ」という言葉を使わないよう心がけています。選手を尊重しながら「こういう選択肢もあるのでは?」と2~3つ提案させてもらっています。練習でできた事しか試合ではできないと思っているので、日頃から身体の向きを考えてシュートを打つであったり、距離感を測って蹴るといったアドバイスをしています。育成年代への接し方プロから育成年代まで幅広く指導してきましたが、選手への接し方は基本的には変わりません。自分が選手だった時に一番困っていたのが、「自分で考えろ」と言われる事でした。選手には限りなく分かりやすく伝える事を意識しています。あとは、必要以上に感情的にならない事です。プロも育成も同じ人間なので、「どういう言われ方をしたら嫌だ」というのは一緒だと思います。基本は冷静に淡々と話します。セットプレイアドバイザーとして全国飛び回っていますが、関わったチームの勝利報告を聞くのが一番の喜びです。「試合前に対戦相手のセットプレー対策をした結果何とか勝てました」という連絡をいただくのも、とても嬉しい気持ちになります。僕がチームについて指導できる限られた時間の中で、選手の特徴を活かして立ち位置を変更したり、守備の練習をしたり、試行錯誤の中で選手たちとレベルアップを図ります。それが勝利に結びついた時は、指導者冥利に尽きる瞬間の一つですね。選手と一緒に成長していきたい選手には「一緒に成長していこう」という話をいつもしています。毎週土曜に青空ミーティングをするんですが、サッカーと違う話をする事もあります。時間の話をしたり、「頼まれごとは試されごとっていう言葉があってね」という話をしたりするんですが、意外と選手は真剣に聞いてくれます。僕も選手から学ぶ事も多いし、お互い刺激しあいながらこれからも成長していきたいです。指導者としては「サッカーだけするな」という事は常日頃言っています。サッカー選手がサッカーを失った時に何もないという状況が一番良くないと思っているので、学生時代からバイトもどんどんしたら良いと思います。時間管理の勉強にもなるし、大人と触れ合う事で得られるものもあります。あとは、大学の部活内で部署制(清掃部、広報部、地域貢献部、会計部など全9部署)を導入しています。学年を超えてお互いサポートしながら物事の進め方、人との連携の仕方を学ぶ機会になればと期待しています。サッカーがご縁で出会えた選手達には「サッカーは勝つ事も大切だけれど、負ける事も大切だし、何より仲間を大切にして欲しい」と伝えています。今すぐじゃなくても、「いつか山さんがそんな事言ってたな」と思い出してもらえたら本望です。