高校時代に志した、指導者への道指導者を志す経緯となったターニングポイントは、高校1年生の時にした大きな怪我です。膝前十字靭帯と半月板を損傷。3回の手術と合計1年半にも及ぶリハビリを経験する中でプロを目指すのが難しくなりました。結局高校時代はほとんどの期間をピッチの外で過ごす事になってしまいましたが、その時に仲間たちの成長を俯瞰して見ていると指導者である平岡先生 (熊本県立大津高校 平岡和徳総監督)がもたらす影響がとても大きいと感じました。平岡先生と選手の関わりを見ているうちに、自然と指導者という職業に興味が湧きました。恩師から学んだ、3つの指導者哲学ヴィッセル神戸へと導いてくれた木山監督(現ファジアーノ岡山監督)やアビスパ福岡の長谷部監督、サンフレッチェ広島ユースの野田監督など多くの指導者から学んできましたが、根本の部分で言えば高校時代の平岡先生との出会いが大きな影響を受けています。(写真:1998年 選手権大会後 恩師の大津高校 平岡和徳先生と)平岡先生から学んだことの中でも、現在指導者として活動する上で特に大切にするものが三つあります。一つ目は『選手の物差しを変える』ということです。先生は『凡事徹底』という言葉をよく使います。当たり前の事を当たり前にやり続けるという意味の四字熟語ですが、そもそも当たり前の基準が人によって異なりますよね。日々の声掛けや、選手を本物に触れさせる事が重要です。二つ目は『チャレンジを促進させる』です。「苦しい時は前進している」という声掛けが記憶に残っていますが、自分自身を変える為には居心地の良い空間に居続けてはいけない、チャレンジを仕掛けていこう、と成長を促す声掛けも意識しています。三つ目は『未来に繋がる意味付けをする』です。起こった出来事に対してどんな意味付けをするかによって未来は変わりますが、時に指導者から選手へ気づきやヒントを与える事もします。以上3つは自分が指導者になってからも日々心掛けている点です。一流と呼ばれる選手になるためには並々ならぬ努力が不可欠ですが、努力を継続するには選手の人間性も大きなポイントになります。やり抜く力、誠実さ、協調性、挙げるとキリがないですが、サッカーが上手いか下手かだけにフォーカスするのは悪手だと考えています。大津高校、筑波大学、ヴィッセル神戸等高いレベルでプレーしている選手は皆人間性も兼ね備えていました。ヴィッセルのアカデミーが日本をリードしていく組織に今は誰かの役に立ったと実感できた時です。ダイレクターとして選手の活躍を後押しできると特に嬉しいです。5年前に現場を離れ、マネジメントグループに入っていた時は、組織と指導者と選手が持つ可能性を最大化したいというという気持ちで仕事をしていました。選手やコーチひとりひとりの魅力をしっかりと引き出し、試合で選手の良い動きを観る事ができると指導者をやっていて良かったなと感じていました。役割に応じて指導者冥利に尽きる場面は変わりますが、日々の仕事の中でやりがいを見出しています。25歳の時から約20年間在籍するヴィッセル神戸に対する想いは強いです。ヴィッセルのアカデミーが日本をリードしていくような組織になる事を目標に、ここで育つ選手達、働いている指導者達の将来がより豊かなものになるよう全力でサポートするつもりです。三木谷さんがチーム育成に投資してきたものにもしっかりと結果で応えていきたいですね。幸いな事に僕は今まで平岡監督を筆頭に多くの優れた指導者に巡り合う事ができました。自分が少なからず周りから評価されているとしたら、それは自分の努力だけではなく多くの出会いに後押しされていると感じます。今後は自分が知っている事を積極的に発信し、体験や情報の格差を少しでも埋める活動に注力していきたいです。