自身の経験から学んだ、純粋にサッカーを楽しむ心の大切さ私は現役時代に前十字靭帯を三回切っていて、まだまだサッカーを続けたい気持ちはあったんですが最後は戦力外通告だったというのもあり引退せざるを得なくなり引退しました。26歳の時サッカー教室やメンタルトレーニングのお仕事をして、29歳で株式会社ゆかサルを立ち上げ、クラブを立ち上げたという流れです。きっかけやターニングポイントというより、ただその時にやりたいと思っていたことを形にしたかったという思いから始めました。自然に進んでいった感じですね。影響を受けた指導者は自分の中では実はあまりいないんです。今までの指導者と逆のことをやってるんですよ。今31歳なんですけど、私が現役の時代は「根性が命!」みたいな時代で。オフも全然なくて、「走れ」とか「そんな休憩している場合じゃない」って言われている時代でした。高校は常盤木学園という、プロを多く輩出していて全国でもトップレベルの高校でした。一つ上の学年に女子日本代表の熊谷紗希選手がいて、私が在学中に4回全国優勝しています。 常盤木が全盛期だったというのもあり、常に本気の戦いでしたし、メンバーに選ばれることが大変だったからだから、けなされたり怒られたりの連続でした。なので、私を拾ってくれてなでしこリーガーにさせてくれた当時の監督にはすごい感謝していますし、今でも親交が深いです。影響を受けた指導者を強いて挙げるとすると、大学生の時になでしこリーガーをしながらバイトしていたサッカークラブのコーチ仲間ですね。 その人は本当に楽しくサッカーをやっていて、子どもたちがサッカーをしたくなるような声かけや、次の練習が楽しみになるような練習メニューを組んだり。子どもたちに親身になって、友達のように指導する指導者に初めて出会ったので、私はその人をすごく尊敬しています。今までは勝負の中でしかサッカーをしてこなかったから、怒られるのが普通でした。「こんなに楽しいサッカーがあるんだ」ってその時に初めて気付かされましたね。「指導者が楽しまないと選手も楽しめない。」実際ピッチでプレーするのは選手たちなので、わざわざ選手たちが怒られに行くみたいな意味がわからないです。私はそれが普通の時代に生きていたので、最初は葛藤がありました。頑張ることが当たり前、努力することが当たり前と1年前のクラブを立ち上げる時は結構思ってたんですが、やっぱり選手を見ているとそれが当たり前ではないし、みんな努力の方法をまず知らないということもわかったんです。教えてあげるところから教えてあげて、それを努力するかしないかの選択をするのは選手たちです。努力をしなくてもそれは悪いことじゃないし、好きにサッカーを楽しんでくれたらいいなとこの1年で分かったので、私から無駄なことは言わないようにしています。指導者やトップが楽しんでないと、選手たちが楽しめないじゃないですか。私は常に楽しんで選手たちと接することを心がけて自由にさせてもらっています。(笑)監督もそれをよくわかってやってくれてるので、大人が楽しんでないとねと言う話も常々監督としていますね。"当たり前ではない日々" を大切にし、幸せを作り出す。一緒に日々練習ができることが当たり前のように思えますが、何も当たり前じゃないと痛感しています。それぞれの成長スピードの違いもある中で、みんなちゃんと成長しようとしていて頑張ろうとしている姿を見て、毎日幸せを感じます。練習を見ているだけで泣ける時もありますし、不思議な気持ちになるんですよね。自分が立ち上げてクラブをやり始めて、こんなにみんなが楽しそうにサッカーしてくれて、しかもみんなが仲良くサッカーじゃない時も遊んだりしていて。クラブを立ち上げたことでいただいた縁から、幸せをたくさん作ってるんだなと思うとありがたいなと思いますね。サッカーをする以上はもちろん勝ちたいですが、うちのチームのコンセプトは『勝っても負けても応援されるチーム』です。勝敗は記録には残りますが、記憶に残るのはなかなかないと思っているんです。勝敗よりも、楽しかった思い出の方が記憶に残っていると思います。例えば楽しかった試合とか、チームで行ったバーベキューとか、練習の帰り道のファミレスでのみんなとの食事とか。その中でも選手たちが勝ちたくなるのは当然なので、「勝つにはどういう取り組み方をすればいいのか」という話はしますし、メンタル面での話もします。例えば、0-2で負けてたりすると選手は焦りますよね。その場合でも、「今の心理状況は焦っているよね。と言うことは、相手はこう考えているんじゃないかな?逆に余裕だと思っているかもしれないからそこに必ず隙はあるよ。」と細かく話したりします。そのマインドコントロールもまた、サッカーというスポーツの醍醐味だと選手たちにも伝えています。こういった話をすると、「全然焦る必要ないんだ」と選手たちの中にも余裕が生まれてきて純粋にサッカーを楽しむことができると思うんです。一人でも多くの女子サッカー選手を幸せにしたいこのまま行くとQUEENSはなでしこリーグに上がることのできる実力があると思っています。でもなでしこリーグがあってWEリーグができたとはいえ、男子のJリーグに比べるとまだまだ知らない人の方が多い。なので、正直「絶対になでしこリーグ、WEリーグに上がるんだ!」という目標がうちはあまりないんです。明確にどこのリーグを目指すとかはないのですが、株式会社ゆかサルという会社で運営していて、代表をやらせてもらって、うちの会社で何十億儲けていろんなところを支援できるようになりたいなっていうのが一つの目標です。今はスポンサーさんやグッズ収入とかのおかげでありがたいことに運営できるんですが、会社としてももっと規模を大きくしていって、広い範囲の女子サッカー選手たちを幸せにして、選手それぞれの価値を上げるというか、選手自身の人間力をつけていきたいなというのが私の目標です。