監督が発する言葉でチームが一つに。自身が代表選手時代の監督から感じた情熱現役の最中から指導者のライセンスを取りに行っていたので、選手としてのキャリアを終える頃は指導者を志していました。選手時代からゆくゆくは監督になりたいなという思いはありましたし、まだまだフットサルというスポーツは日本では指導者も不足しています。そこまでメジャーなスポーツでもないので、一人でも多くの方にフットサルの魅力を伝えるのも自分の責務かなとも思ってましたので。そういったことも含めて現役終盤に向かうにあたって、どんどん興味が湧いてきたというところはありました。私が指導者として一番大切にしているのは、”言葉” ですね。 自分は現役の時にいろんな監督と一緒に仕事をさせてもらいましたし、日本人監督もいればスペイン人監督やブラジル人監督もいました。いろんな監督と仕事をしてきた時に一番心に残るのは、それぞれの監督からかけてもらった印象的な言葉です。タイミングだったり状況だったり背景だったり、いろんな時にその監督が発する言葉っていうのは非常に重みがあり印象に残っています。私も選手としては気持ちを前面に出して戦う選手でした。監督になってからも気持ちを前面に出すところは変わらないですが、言葉の重要性というのは指導者になってからすごく感じて、選手たちに一つ一つの言葉をどう伝えるかっていうところを考え、悩みながら伝えるようにはなりましたね。その言葉の部分ですごく特徴的だったのは、私が初めて日本代表でご一緒させていただいたセルジオ・サッポさんというブラジル人の監督さんです。彼はすごくメンタリティに対してフォーカスする監督でしたし、ミーティングでも毎回「コラソン(ポルトガル語で魂)」という言葉が出てくるんです。技術や戦術ももちろん大事ですが、国と国が戦う上で一番大事なのは戦う気持ちだと常に話していました。最初はサッポさんの熱量がすごくて「ここまで言うか」という感じでしたけど、その言葉でチームが一つになるというか、監督がここまで気持ちを込めて話をすると選手にも伝わってくるんだなと感じました。日の丸をつけて戦うというのは、何か不安を抱えてピッチに立つのではなく、どんなことがあっても100%出し切るということだとサッポさんから学びました。監督がピッチに立たなくても伝えられることがあるんだなとすごく感じましたね。『できるならやる、できないならやらない。』常に100%で勝利を目指す。スポーツ選手の価値というのは、ファン・サポーターの皆さん、観客の皆さんに見てもらうことだと思うんですよね。決して自分たちがいい戦術で良いプレーをするという自己満足で完結してはいけないと思います。見てる方に何を伝えるか、伝わるかだと思っていますし、そのために選手たちが100%ピッチで表現しなければ何も伝わらないのかなと。特にフットサルはコートが狭いですし、観客の皆さんとの距離感も近いです。それこそ走る息遣いだったりとか、体同士がぶつかる音だったりとか、見慣れてる方だったらすぐ「今手抜いたな」とか「サボったな」というのがトランジション一つにしてもバレてしまいます。100%の力を40分間出し続けるというのは選手として当たり前なことで、それができて初めて技術や戦術に繋がるのかなと思っています。私は選手時代、そんなに上手い選手じゃなかったんです。代表に初めて呼ばれたのも24歳でしたし、私と同い年でもっと早くから代表に呼ばれてる選手もいました。自分が所属してたチームでも多分1番か2番ぐらい下手くそだったくらいです。サッカーからフットサルに転向した中で割と自信はあったのですが、ディフェンスもオフェンスも全然ダメで。自分ができることを一つずつ増やしていく中で、気づいたら100%でやらないとという思いで練習していました。自分は足が速いわけでも体が大きいわけでもなかったですが、常に100%でやっていたら日本代表にもなれました。うちの選手たちにはちょっと厳しいかもしれないですけど、「100%でできるんだったら練習しなさい。痛みがあったり故障を抱えて100%でできないんだったら、休んでいい。」ということを常々口にしています。なぜなら、私たちのリーグには名古屋オーシャンズという圧倒的な強いチームがいるので、そこに自分たちが勝つには彼らの練習を上回らないといけないというところは常々言ってきている部分です。100%でやり続けるというのは当たり前な気持ちの部分ですが、3年間毎日言っているような気がしますね。選手それぞれによって意識的に変えている、”アプローチの仕方”うちにはベテランもいれば若い選手もいますし、ブラジル人もいます。それぞれ選手たちのバックグラウンドは全く違うので、チーム全体に必要なことは全体に対して言いますが、やはり個別のアプローチが非常に大事だなと感じています。どうしてもミスが起きるスポーツなので、ミスに対してああだこうだ言っても仕方ないと思ってます。私はミスへの指摘よりも成功体験をものすごく褒めてあげることを大切にしています。選手って割と自分のミスの方が成功体験よりも覚えてるんですよね。それってあまりポジティブなものにならないのかなと思っているので、「ポジティブな成功体験は、ずっと続いていく」と選手たちに伝えています。例えば、若い選手にはミスして持っている良さを塞ぎ込んでしまう部分があると思うので、良い部分を褒めて「ここが良かった」「ここもっと頑張った方がいい」というような言い方を心がけています。ベテランの選手には「あなたがそれをすると、チームにとってどうなるか」というような期待と信頼の意味合いを込めた言い方を心がけていますね。選手が自分の予想を超えるプレーをしてくれた時は非常に嬉しいですよね。勝ち負けももちろん大事ですけど、選手の成長や変化を見られた時はなんとも言えない喜びです。指導者になってからチーム全体をマネジメントする中で、それぞれの選手たちの成長であったり成果は気にしている部分です。特に若い選手は日本の宝だと思うので、若い選手たちの成長は嬉しいです。チームは生え抜きが多いので、小学生から高校生までを見てきた子たちがトップチームに上がって躍動する姿というのは、クラブとしても積み上げてきたものが成果として出てる証だと思います。またさらにその選手達が、アンダーカテゴリーの選手への刺激であったり夢を与えますよね。私が監督に就任した3年前に、15歳の高校1年生を開幕戦スタートで使ったんです。彼は今でもトップチームにいますけど、若い子たちにとっては頑張ればプロの舞台に手が届くということを証明してくれました。今後もフットサル界全体として、若い選手の育成というのは必ず必要なことだと思ってますので、うちはそれを率先してやっていきたいなというふうには感じています。「どんどん大きな舞台にチャレンジできる選手を日本から輩出していたい」昨シーズンは自分が就任して一番いい成績(リーグ三位)だったので、今季はタイトルを取りに行くシーズンにしていきたいなと思っています。チームとしての目標がリーグ優勝というところと、あとは日本代表選手をバルドラール浦安から輩出したいというのがあります。フル代表もU20も含め、いろんなカテゴリーで日本代表選手が輩出されるようになれば面白いなと。自分自身の指導者としての夢は日本代表監督になりたいというのもありますし、日本代表監督でなくても海外のチームの代表監督っていうのをやってみたいなという思いが今は強くあります。クラブの監督をしていく中で、国際舞台で海外のチームと対戦したいなっていう思いが非常に強く出てきました。日本代表にこだわっているわけではありませんが、どこかで代表監督ができたらなと思っています。日本はフットサルもサッカーもW杯最高成績ベスト16で、まだまだ世界との差があります。世界で通用する選手やどんどん大きな舞台にチャレンジできる選手を日本から輩出していきたいです。私はフットボールという区切りの中でも、サッカーとフットサルはほとんど一緒だと思ってます。育成年代の時にいろんなものに触れるっていうのが非常に大事なんじゃないかなと思うので、フットサルだけじゃなくてフットボールとして世界に通用する要素があると思います。サッカーもフットサルもより密接な関係値になれればなと思いますし、日本のフットボールを盛り上げる上ではお互いがもっともっといい部分というのを取り入れるとすごく良くなるのではないかなと思います。最近Jリーグや欧州のサッカーを見ていても狭い局面でのプレーがみんな上手いですよね。サッカーにおいても狭い局面を逃げないでしっかりと使うというのが、育成年代も含めて大事なんじゃないかなというのを感じます。サッカーのそういったところにどんどんフットサルの要素が取り入れられていけば、お互いのものにとって良いものができるんじゃないかなというふうに感じていますね。写真提供:バルドラール浦安