好きでやった事に対して感謝され、指導者の面白さに気づいた僕は山形県の田舎出身で、小学校から高校までサッカーを続け、引退後はボランティアでサッカーの指導をしていました。地域で何十年もコーチをしている人がいて、なかなか新しい人が入ってこない状況の中、指導を開始。高校までのプレーヤー経験、ウイイレを頑張った経験、たくさんの試合を観てきた経験等があったので自分が持っている物を全て子ども達に伝え、地区最弱レベルのチームでしたが地区大会にも一緒に出るようになりました。ある程度裁量を持って指導をしている中で、結果は割とすぐに出ました。試合で勝てるようになると僕と子ども達との信頼関係が深まり、何より皆がサッカーに前向きに取り組むようになりました。大きな大会であと一歩及ばなかった時に、選手からも親御さんからもとても感謝され、自分が好きでやった事がこんな風に評価してもらえるなんて、不思議な感覚でやりがいを見出しました。これが指導者を志した原体験です。指導者としての視野が広がったFC琉球時代大学進学してからはアルバイトでクラブチームを指導していましたが、本格的に対価を貰って指導を始めたのはFC琉球のアカデミーチームのコーチとしてでした。プロコーチとして歩み始めた僕が一番感じたのは「サッカーは座学ではない」という事です。今までは自分が持つ知識を子ども達に提供し、一定の評価を頂いていましたが、プロを育成する環境ではまず土台が大切で、その上で戦術が大切なんだとはっきりと言われました。ここで言う土台とは、練習環境の整備、保護者との関係性など多岐に渡ります。山積みの課題に対するアクションを必死で返す事の繰り返しで、余裕は全くありませんでしたが、FC琉球での3年間は自分の視野がぐっと広がった期間でした。イングランドに根付くのびのびとした環境FC琉球を経てイングランドの日系チームLJJに移りました。イングランドに根付く文化として喜怒哀楽を出せる環境、大人と子どもがフラットな環境、が日本と大きく違うと感じました。心理的安全性が担保された環境で子ども達はどんな試合でも100%自分の力を出し切れるし、質問もとことんします。一方日本の子ども達は言われないと動けなかったり、分からなくても分からないと言えない傾向があります。日本もプレーヤーファーストを掲げていますが、まだまだコーチファーストになっている面が散見されます。僕はできる限り子ども達が本当に理解して練習に取り組んでいるか観察し、何のための練習なのか声掛けで促す事を意識しています。フィジカル、戦術、技術、社会性の4つがバランス良く鍛えられるイングランドのサッカーは見習うべき点が多々あると思います。好きな事を仕事にできる幸せを噛み締め、さらなる夢へ。指導者冥利に尽きる瞬間が明確にある訳ではないですが、好きな事を仕事にしている時点で幸せだと感じます。僕に限らず他の指導者もそうだと思いますが、サッカーが好きで、周りの人が好きで仕事に取り組んでいると思うので、日々の何気ない練習やチームメンバーとの会話の中にやりがいと幸福があるのではないでしょうか。子ども達にもよく伝えるのですが、こんな時代だからこそ大小関わらず夢を持って欲しいと思っています。僕自身も叶うか分からない壮大な夢から小さな目標までたくさんあります。まずは、日本人で最多国指導者になりたいです。現在5カ国なんですが、これが増えていき、様々な文化を経験した先に何を感じるのかとてもワクワクします。次に、学生時代に決めた目標ですが、どこかの国でプロのステージで指導者になりたいです。成熟した国で指導者をやる大変さもありますが、僕は発展途上国であればある程面白いと思っています。サッカーというツールで僕自身たくさんの経験、友人を得ましたが、それを途上国で次の世代に継承していきたいと思っています。