さまざまなカテゴリーで活動するサッカー指導者の方にご参加いただいているFootballcoach。2022年に立ち上がったFootballcoachではさまざまなイベントを通して多くのサッカー指導者の方とのご縁がたくさん生まれました。ここで出会った皆さんとのお話を通して編集部が強く感じたのが、勝利至上主義よりも大切なものを持って指導されているということ。今回の記事では、2022年 ご縁をいただいたサッカー指導者の方にご参加いただいた過去イベントを振り返り、"サッカー指導者が思う勝利至上主義よりも大切なこと" を探っていきます。勝利至上主義よりも大切な、子どもたちの安全を担保するセーフガーディングイングランド ロンドンで活動する日系クラブ London Japanese Junior FCで監督を務める水野嘉輝さん。水野さんと出会い、セーフガーディングという言葉に初めて出会いました。イングランドサッカー協会では、“Our aim is SAFE, FUN, and INCLUSIVE football.”(私たちの目的は、安全で、楽しみがあり、全てを受け入れることができるフットボールです。)という一文が記されており『安心、安全にフットボールを楽しめる環境づくり』をサッカー協会が主体となって進めているそうです。水野さんをメインにセーフガーディングを学ぶ企画として開催した第一回イベントで紹介された日本とイングランドの違いとして、特に驚いたのが「イングランドはどんなに大事な試合の日でも、水たまりが一つでもグラウンドにあると試合をしない」ということ。普段子ども達を指導する水野さんも「子どもたちの安心、安全を徹底的に考慮することの大切さをイングランドで改めて学んだ」と語ります。目の前の勝利よりも重要な、選手たちが安心安全にのびのびと大好きなサッカーをプレーできる環境づくり。まだまだ日本にも足りない部分であると感じるとともに、サッカー指導者必見の内容が詰まっていました。<本編の動画はこちら>"極めるサッカー" と "楽しむサッカー" の相互作用が日本のフットボールカルチャーを作り出す2022年7月15日にJFAが策定した「ナショナル・フットボール・フィロソフィーとしてのJapan's Way」。日本代表がW杯でトロフィーを掲げる未来を目指し、そこから逆算して今何ができるのかを示すものとして発表されました。このJapan's Wayは約50ページ以上の文書として発表されており、サッカー指導者の方々とディスカッションしながら理解を深め、それぞれの捉え方を共有できるイベントをFootballcoachでも開催。ゲスト指導者に社会人クラブ 市川SC GKコーチの兼子大次郎さんと東京都大田区を拠点に活動する街クラブ 松仙FC 代表・監督の筒井琢人さんをお招きしました。第一回目として掲げたキーワードは、『日本独自のフットボールカルチャーの創出』。全七章で構成されるJapan's Wayの第一章目に記載された内容です。ここでは、我々が応援する日本代表チームやJリーグクラブといった "常に勝利を追い求める競技としてのサッカー" と 地方の街クラブやグラスルーツでの "ウェルビーイングとして楽しみを重要視するサッカー" の双方が相互作用を生む必要があるという話に。「代表チームの強化だけに焦点を絞るのではなく、そこに付随するさまざまなカテゴリーや見る楽しさ、プレーする楽しさを持つ人々のことも考えてサッカー文化を構築していかなければならない。」勝利至上主義に固執するのではなく、サッカー本来が持つ "楽しみ" を生み出す環境づくりが日本のフットボールカルチャーを作り出すために必要なアクションであるとゲスト指導者のお二人のお話から強く感じさせられました。<本編の動画はこちら>勝利のみを追い求めた声かけは、選手の成長を摘んでしまう。サンフレッチェ広島や、ロアッソ熊本などJリーグクラブのトップチームでGKコーチとしての指導歴があり、代表クラスのGKを輩出してきたGKコーチ 澤村公康さん。サッカー指導者が陥りがちな、GKへの指導におけるよくある現象について正しい理解を深めるイベントでは「指導者からGKへの声かけを特に注意してほしい」と澤村さんが警鐘を鳴らしました。「指導者にはGKの判断や決断をリスペクトしてほしいと思います。過去の傷口に塩を塗るようなコミュニケーションではなく、次のプレーに勇気を持てるようなコミュニケーションを心がけるべきです。熊本県の大津高校やJリーグクラブなどさまざまなカテゴリーで素敵なサッカー指導者の方々と時間を過ごさせていただき、常に選手ファーストで物事を捉えるのがサッカー指導者として重要な部分なんだなと感じました。」フィールドプレーヤーはもちろん、GKというポジションは特に一つのミスが失点に直結しやすいポジション。サッカーをプレーする以上、選手も指導者も勝利を求めるのは当たり前ですが "選手に勝利を求めすぎる過度な声かけ" は慎むべきであると思います。「なぜできなかったのか?」を問いただすのではなく、「何が原因で起こり、どうすれば良くなるのか」を選手と同じ目線で分析し、勝利至上主義でなく、あくまでもプレーヤーズファーストで改善を手助けするのがサッカー指導者としての役割ではないでしょうか。<本編の動画はこちら>さいごに 2022年、Footballcoachで出会った素敵なサッカー指導者の方々は、皆さんがそれぞれの "勝利至上主義よりも大切なもの" を持って活動されています。勝利よりも選手たちの安心安全、勝利よりもサッカーの楽しさ、勝利よりも選手たちの伸び伸びとプレーできる環境づくり。今回ピックアップした、ほんの一部のイベントからも多くのことを学び、考えさせられました。スポーツである以上、そこには必ず勝ち負けが存在します。しかし、その勝ち負けだけが選手たちやチームの価値を表すわけではありません。結果よりも大事なのは、いかにサッカーを楽しめる環境をサッカー指導者が作り出せるかだと思います。2023年も、このような素敵なサッカー指導者の方々と一緒に『勝利至上主義よりも大切なもの』を発信していければと思います。 世界の常識、セーフガーディング。恐れてプレーしても上達しない、イキイキとプレーする選手を増やす環境づくり。サッカーで幸せになる国日本に欠かせない、指導者のアクション「サッカーって何ゲーム?」代表輩出GKコーチが語る、指導者・保護者が知るべき“GK育成7つの流儀”