JFAが示す未来の羅針盤『Japan's Way』。その美しい理念と、地方クラブ現場でのリアルな感覚との間には、どんなギャップが存在するのか。ガレオ玉島U15の古賀康彦コーチと、真栄サッカー少年団の塩崎嵩仁ヘッドコーチが、プレイヤーズファーストやライセンス制度の本質について、腹を割って語り合った。机上の理想を、現場でどう落とし込むのか。その模索の過程に、日本サッカーの未来が見える。「プレイヤーズファースト」の美学と矛盾%3Ciframe%20width%3D%221920%22%20height%3D%221080%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2FiA3J8IghBDA%3Fsi%3DWdYnEFpBdCfd4S_D%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%3B%20web-share%22%20referrerpolicy%3D%22strict-origin-when-cross-origin%22%20allowfullscreen%3D%22%22%3E%3C%2Fiframe%3E古賀:まず前提として、子どもたちの成長が第一であるべきというのは当然の話。ただ最近は、「プレイヤーズファースト」という言葉が便利に使われすぎている印象もあります。現場を知らない人が、正義の言葉のように使ってしまうこともあって、違和感を覚える場面が増えました。塩崎:そうなんですよね。何かあれば「それ、プレイヤーズファーストだから」と言えば通るような。指導者の負担を無視して子どもを優先する“風潮”は、実際には現場を疲弊させてしまうこともある。指導者も人間ですし、余裕がなければ良い指導もできません。古賀:本当に意味のある「選手中心の環境」って、周囲の大人も含めた全体で支えるもの。指導者だけが抱えるには限界がありますよね。だからこそ、現場の声を吸い上げていく仕組みが大事なんだと思います。「プレイヤーズセンタード」みたいな概念の方がしっくりくるかもしれません。塩崎:その通りです。選手を中心に、指導者や親も含めて“環境そのもの”を作っていく。対話や理解がベースにないと、理想だけが独り歩きします。言葉の響きではなく、本質に向き合うべき時期です。育成年代の指導者が抱える「現実」塩崎:僕たち地方のクラブは、指導以外にもやることが山ほどある。遠征手配、保護者対応、学校連携、クラブ運営…。体力も気力も消耗します。しかも、報酬面や労働環境も恵まれていないケースが多いです。古賀:夏場は本当に消耗戦ですよね。だからこそ、指導者自身がどう“回復”するかも大事。僕は他分野の人たちとの対話から得る気づきが多いです。異業種の考え方や価値観に触れることで、自分の思考が整理されることもあります。塩崎:他業種の人と話すことで、自分の視野が広がって、結果として子どもとの接し方にも余裕が生まれることも多いですよね。サッカーだけじゃない引き出しを持つことが、信頼にも繋がると思います。むしろ“人間として面白い”コーチが増えていくことが、今後の育成に必要なのでは。古賀:あと、地域によって課題も違いますからね。施設、保護者の理解度、学校との関係、すべてがバラバラ。その中でどうサッカーを続けさせていくかっていうのは、本当に日々模索の連続です。ライセンス制度の矛盾と可能性%3Ciframe%20width%3D%221920%22%20height%3D%221080%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2Fg4q9o-eQazE%3Fsi%3D7GclKwyncxxQ-YpQ%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%3B%20web-share%22%20referrerpolicy%3D%22strict-origin-when-cross-origin%22%20allowfullscreen%3D%22%22%3E%3C%2Fiframe%3E古賀:ライセンス制度については…難しい問題ですよね。取っても現場に活かせてない人もいるし、ライセンスがない人でも優れた指導をしている人はたくさんいる。形式が先行していないかと感じる瞬間があります。塩崎:私もライセンス講習を受けて思ったのは、内容以上に “誰とどう対話するか” が学びになったことです。もっと議論の場が増えればいいのにと率直に思いました。現場に根差したケーススタディがあってもいいし、受講者がもっと自分のクラブに持ち帰って還元できる仕組みがあってほしい。古賀:あと、学問との連携はこれから重要になると思います。現場の経験則に頼りすぎず、運動学や心理学などと結びついた教育が必要なフェーズに入ってきてる。知識と経験をどう融合させるかが鍵です。塩崎:個人的には、ライセンスの多様化も進めてほしいです。コーチとマネジメントの役割を分ける、あるいはロールモデル型のコーチを特別枠で支援するなど。実践と理論の両輪が揃ってこそ、日本サッカーの質は底上げされると思っています。古賀:そうですね。制度自体が悪いわけじゃないけど、それを運用する側がどう目的を理解し、柔軟に使っていくか。形式を守るだけでは、選手たちの未来は変わらない。今後は“現場で活きるライセンス”への転換が求められます。最後に――Japan's Wayは現場に落とし込んでこそ古賀:Japan's Wayは理想です。でも、理想を語るなら現場語で話さないと意味がない。その翻訳をするのが、僕ら現場の役割だと思っています。言葉を鵜呑みにせず、自分の指導哲学に落とし込む作業が求められます。塩崎:共感します。もっと多くの現場の声が上に届くように、そして理想が押し付けでなく“使える指針”になるように、僕らが間を繋ぎたい。今日の対話もその一歩になれば嬉しいですね。古賀:日々悩みながらでも、子どもたちの笑顔を守るために指導を続ける。その積み重ねこそが、日本サッカーの未来を形づくる。だからこそ、理想と現実の橋渡しをする現場の声に、もっと光が当たってほしいと思います。「制約の中で旅をする」岡山でのチャレンジを全国に広げていきたい。自らが育ったクラブで指揮。並ならぬ愛をヘッドコーチとして体現する。日本の道筋 "Japan's Way" を徹底議論から読み解く第一章 『フットボールカルチャーの創造』第二章『望まれる選手像とは』第三章『プレービジョン』第四章『将来に向けた日本のユース育成』第五章『フィジカルフィットネスの未来』第六章『将来のサッカーコーチとは?』(本記事)第七章『フットボール・ファミリーの拡大』