「部活動は学校のもの」という時代が変わりつつあります。いま、地域が子どもたちの成長の担い手となる取り組み『部活動地域移行』が全国で広がっています。本記事では、部活動地域移行を成功させた自治体の事例に焦点をあて、教育と地域がともに歩む未来の姿を描きます。▼弊メディアでは部活動地域移行を進める自治体様にて指導者養成セミナーなどを企画、実施させていただいておりますので、併せてご覧ください。https://footballcoach.jp/reports/bukatsuikou_action部活動地域移行の背景と現状部活動の地域移行を後押ししているのは、文部科学省とスポーツ庁です。2022年12月に発表された「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」によると、「地域の子供たちは、学校を含めた地域で育てる」という意識のもと、持続可能で多様な育成環境の整備が明記されています。とりわけ注目されているのが、2023年度から2025年度までの3年間を「改革推進期間」として設定し、まずは休日の部活動から段階的に地域クラブへと移行を進めるという点です。文部科学省・スポーツ庁は、令和3年度から全国約100の市区町村で地域クラブ活動の実証事業を進めており、その成果が今後の全国展開に向けた基盤として期待されています。(参考:部活動の地域移行について、メリット・デメリットを解説)部活動地域移行の実例──成功のカギと現場のリアル千葉県柏市──大規模自治体での統括型モデル柏市では、一般社団法人柏スポーツ文化推進協会(KSCA)を中核として、地域クラブ活動の運営を一元化しています。活動時間や費用の明示により、保護者の理解を得やすく、教員の土日負担も軽減されました。大規模自治体ならではのスケール感に対応する組織体制の構築が成功の背景にあります。(参考:部活動の地域クラブ活動移行事例紹介〜大規模自治体による部活動改革(千葉県柏市))富山県黒部市──関係者の対話から生まれた地域連携黒部市では「KUROBE型地域部活動」として、地域全体の合意形成を図る「あり方検討会」を設置。外部指導者の活用で生徒の満足度が向上し、専門的な指導が行われています。家庭への送迎負担や、初期における指導者の専門性不足といった課題も共有されており、地域ぐるみの工夫と試行錯誤が続いています。(参考:運動部活動の地域移行事例紹介〜KUROBE型地域部活動(富山県黒部市))東京都日野市──企業連携による人材確保の先進例日野市では、教育委員会が地元企業と連携し、指導者の確保を進めています。コニカミノルタや日野自動車などから競技経験者が派遣され、質の高い指導が可能となりました。教員の業務軽減にもつながっていますが、一部ではまだ部活動を負担と感じる教員が多いという課題も残されています。(参考:地元企業、地域と一体となった部活動を目指す日野市の部活動改革)「部活動の地域移行」を、自分ごとに──Footballcoachの想いと挑戦私たちFootballcoachは、現場で日々汗を流す指導者の方々や子どもたちの姿を、記事や映像を通じて見つめてきました。そして、部活動の地域移行は単なる制度改革ではなく、「誰が、どうやって子どもたちを育てるか」を社会全体が問い直す営みだと強く感じています。こうした背景から、私たちも実際に現場とともに歩むアクションを起こしてきました。たとえば、2023年度と2024年度には東京都世田谷区と連携し、部活動指導員の皆さま向けに講習プログラムを実施しました。これは、弊メディアの「指導者名鑑」を通じてご縁をいただいた指導者の方とのつながりから生まれた取り組みです。トレーナー、心理カウンセラー、コーチングのプロなど我々がアサインさせていただいた多種多様な指導者の方々を講師として、各年度全3回のシリーズ形式で、サッカー以外の指導者の皆様にも大変ご満足いただいている内容となっています。(詳細:部活動地域移行を支援!Footballcoachの指導者養成プログラムで自治体負担を軽減)日々、全国の指導者や学校、クラブチームと対話を重ねる中で、「現場にはすでにたくさんのヒントがある」と実感しています。制度や政策を追うだけでなく、私たちだからこそ見える“声”をすくいあげ、発信し、そして必要であれば自治体と手を組んで実際に動く。それが、Footballcoachというメディアにできる社会的な役割だと信じています。部活動地域移行が一過性のトレンドで終わらぬよう、私たちも現場と歩調を合わせながら、これからも真摯に関わっていきます。未来の子どもたちのために、地域と教育をつなぐ「接点」となれるように──これが、私たちの小さくて、でも確かな挑戦です。▼あわせて読みたい!部活動地域移行の全貌と我々のアクション 部活動が廃止?! 部活動地域移行の背景に迫る部活動地域移行がもたらすメリット・デメリットとは?『部活動指導員養成プロジェクト』を通して、自治体さまの部活動地域移行における課題にアプローチ。