本を読まずに参加する読書会『Booked』。毎回さまざまなカテゴリーで活動する指導者の方をゲストにお招きし、Booked主宰の浦野真理さんが図解する書籍を一緒に読み解いていく企画です。今回のテーマ書籍は、「恐れのない組織」。心理的安全性が組織にもたらす影響に迫った一冊を、イングランドで活動される水野嘉輝さんと深掘りました。イングランドで子どもたちが安全に、安心してサッカーを楽しむことのできる環境を大切にする水野さんの原体験や心得ているものを中心に、テーマ書籍の理解を深める時間になりました。著者による、良いチームに必要不可欠な心理的安全性の定義「作者は、心理的安全性という言葉を初めて使った方として知られている方です。あくまでもビジネス書として書かれているため、職場やチームの組織としてのあり方に言及されています。ここで、チームにおける心理的安全性のバランスを示した図を見ていただきしょう。著者曰く、目標が高い割に心理的安全性の低いチーム(不安ゾーン)が世の中には多く存在するそうです。常に目標にとらわれながら、そこに心理的安全性が伴っていないという非常に危険な状態ですね。良いチームに当てはまる組織は心理的安全性も高く保たれており、目標も高いチームです。左上の、心理的安全性が高く目標が低いチーム(快適ゾーン)も決して悪くはないですがやはり目標が低い分、学びにつながるとは言えません。目指すべきは右上の心理的安全性・目標の両方が高いチーム(学習および高パフォーマンスゾーン)と言えます。」Booked主宰 浦野さんから、著者が考える良いチームと心理的安全性の関係についてのこのような図解がありました。良いチームと称することのできるチームには、必ず心理的安全性が伴っているとわかります。「そもそも、心理的安全性とはなんなのか。筆者の言葉を借りると、『心理的安全性とは、大まかにいえば、"みんなが気兼ねなく意見を述べることができ、自分らしくいれる文化" のことだ。』と書かれています。特に、"意見が言える" という部分が重要なポイントとして書籍では何度も述べられています。これは成長、学習を研究テーマとして研究している著者が見つけたものです。」浦野さんによる、筆者が定義する心理的安全性。今回の大きなキーワードになるこの言葉に、イングランドで子どもたちの安心・安全できる環境づくりをセーフガーディングと共に進める水野さんからも日本と海外の違いについて触れ、ご意見をいただきました。「教育的なものもありますが、個人の意思や考えを深く知る文化が存在しているので、『今何がしたいのか?』『なぜしたくないのか?』をイングランドでは尊重している印象があります。日本ではよく、『今は〜の時間だから〜をしなさい』という場面がありますよね。このような入りをイングランドではしていないために、心理的安全性をはじめから作りやすいのかなと思います。こっちにきてから、私自身も個々人の考えや意見を聞くようになりました。気になったことに対して声をかける習慣がついていると、相手が誰であれ少しの変化にも気づいて声をかけることができるようになると思います。」心理的安全性における重要なポイント「書籍では、村瀬俊朗氏による解説として心理的安全性において重要とされるポイントが3つ挙げられていました。一つ目は『対人関係に特化した "不安がない状態" 』。つまり、対人関係で生じる不安だけが心理的安全性を揺るがす脅威になり得るということです。対人以外で起こりうる不安、例えば健康の不安や自然災害などは心理的安全性において関係のないものと書かれています。二つ目は、『心理的安全性は「信頼」と似ているが、別物である』ということ。信頼は特定の相手と自分の間で存在し、心理的安全性はグループレベルに存在する雰囲気や文化のようなものであるとされています。三つ目は、『個人の心の中でなく、集団にしか起きない心理現象である』ということ。これら三つを踏まえ、心理的安全性という言葉を誤解してほしくないと書かれていました。」浦野さんからのこのような紹介を踏まえて整理すると、心理的安全性は集団における雰囲気や文化であり、個人の状態は心理的安全性に関係がないということです。会社やグループ単位、さらに大きく言うならば国単位で心理的安全性を作り出すことも大いに可能であり、望ましいものであると言えます。「心理的安全性を生み出す、または高めるために最適なものは "傾聴力"。とにかく、質問を多くするということです。耳を傾けるという行動を加えるだけで、意見を発しやすい空気を作る出すことができ、心理的安全性を作りやすくなるとイスラエルの研究チームが見出したそうですね。」相手の変化に気づき、声に耳を傾けること。これこそが心理的安全性を作り出すファーストステップであると浦野さんからの図解で理解することができました。「セーフガーディングは、子どもたちの心理的安全性を担保する」「水野さんから初めて聞いた言葉が、セーフガーディングでした。イングランドのサッカー協会が細かく明記しているというお話も以前聞いたことがあるのですが、イングランドで生活される水野さんから改めてセーフガーディングについてお聞きできればと思います。」浦野さんから、今回のゲストである水野さんへの問いかけに水野さんもご自身が「イングランドに行ってから、より意識するようになった。」と語るセーフガーディングについて説明してくださいました。「セーフガーディングは、子どもメインにはなるのですが身体的・心理面での安全を担保せずして子どもの成長の場や子どもとの関わりを持てないという考え方です。子どもに関わる職種の人は、必ずセーフガーディングに関する講習を受けなければいけません。これは、しっかりとこういった枠組みを国として作ってきた結果です。虐待や育児放棄を生まないことが、個性を引き出すために必要だという文化が存在しているということですね。ルール化、仕組み化に関して得意な国なんですね。日本はいい意味でも悪い意味でも空気を読める。しかし、反対にあるのがこの国ですね。しっかりと明記して、全てをルールとして定めています。」水野さんがイングランドで感じたセーフガーディングの重要性。今回の書籍にも書かれていた、心理的安全性が保たれた環境づくりにはすでに取り入れられている考え方であり、今後さらに様々な組織で深く理解し、実践していく必要がありそうでう。盛り上がり必至の人気企画。本を読まずに参加する読書会『Booked』『13歳からのアート思考』に学ぶ、自分の色を表現し “真のアーティスト” になる方法。サッカー現場に落とし込む、ビジネスにおける ”リーダーシップ論”"本を読まない読書会" で考える、サッカーチーム理論『2040 教育のミライ』から考える、中国教育改革とこれからの日本教育の在り方