「初めは、現地の言語を扱うこともままならなかった。」とおっしゃるイタリアやドイツでのプレー経験をお持ちのボブ高瀬さんとオーストラリアでのプレー経験をお持ちの米澤龍さん。近年、日本代表選手もほとんどが海外でプレーする選手になっています。プロでなくとも、高校や大学卒業と同時に海外のクラブチームに加入する選手も多いなど、より一層海を渡ってサッカーをプレーしたいと思う選手が多い時代になってきました。異国の地でプレーしたお二方だからこそ感じた日本との違い、またその違いから感じた日本の良さや見習うべき点から今後の日本サッカー界への期待を読み解きます。must (すべき)よりwant(したい)を大切に。「ドイツでは、激しい球際の部分やゴール、スーパーセーブ、サイドチェンジなどの局面で観客が一気に盛り上がり、酒が進むと言われています。もちろん勝つためにプレーしますけど、観客が楽しむためにまずは自分達が楽しんでプレーするという気持ちが選手たちは強いです。日本にはまだまだ飲みどころ、つまり観客が興奮する大胆なプレーや選手の気持ちが見える部分が少ないと思います。」とボブさんは語ります。また、「オーストラリアでは急に選手がサッカーを辞めるともしばしば。興味が無くなったので辞めますという選手には、ああそうなんだ。程度で誰も止めようとしません。いい意味で楽観的だし、楽しめなくなったから辞めるという選択肢を持っているのは日本人にはない考え方だと思いました」と米澤さんが語るように、”勝ち負けよりも楽しむことが優先的”といった海外のスポーツに対する考え方は日本が見習うべき点の一つです。日本では、特に中高生年代で「指導者が求めるプレーをしないと試合に出れない」「サッカーを好きではなくなったが、周りに迷惑をかけるのでやめにくい」といった声をよく聞きます。まさにこれこそ、 サッカーがwant (したいこと)からmust(しなければならないこと)に変わった瞬間。サッカーを純粋に楽しいと感じた頃のワクワクした気持ちをすべてのプレーヤー、指導者たちが持ち続けることのできる環境や文化、価値創造について改めて考えさせられました。選手のポテンシャルを最大限に発揮させる海外の指導法今回のトークイベントでは、ゲストのお二方がプレーヤーから感じたギャップの他に、指導者から感じたギャップについてもいくつかエピソードを語ってくださいました。「人数が足りずにいつもとは違うFWのポジションでプレーして、その試合でたまたまゴールを決めました。それ以降、次の試合からはFWで起用されることに。常に選手の得意なプレーを観察し、しっかり評価してくれる指導者だったので、選手たちも自分の良さに気づくのが早いんです。」そう語るボブさん。このエピソードには、米澤さんも続きます。「オーストラリアでプレーしていた時は、できないことを指摘された経験はないです。自分のいいところだけを貫けといつも言われていて、できないことをしようとした時が一番怒られました。」短所を改善するのではなく、長所をひたすら尖らせるこのような指導法もまた、日本サッカー界がお手本にすべき指導法なのかもしれません。思い返せば、これまで世界で活躍してきたプレーヤーたちは、オールラウンダー型よりもスペシャリスト型の方が多いと感じました。規律や調和性を重んじる日本だからこそ、これからは”個の力” や ”選手特有の色” を存分に引き出す指導者がより増えてくることで、日本でプレーする選手たちがさらに上のステージへステップアップできる環境が整っていくのではないかという期待を抱きました。『人生我以外皆師』サッカーを”伝える” 指導者日本代表GKを育てたGK指導者と共に、"夢にトライする3ヶ月"スマイル全開のボブ流 “子どもたちと本気で楽しむ環境づくり”子どもたちが持っている ”自らを奮い立たせる能力” の向上を助長する指導者の役割