2022年5月1日、Footballcoach会員限定の月例交流会第二回目を開催いたしました。毎月1日にテーマを設けてディスカッションを行い、指導者をはじめとした会員の皆様と意見を共有する交流会今回は、『全国少年サッカー大会廃止』『育成年代の勝利至上主義』の二つのテーマに沿って約一時間程度の交流会を楽しみました。海外の『全国大会の開催』に関するデータを用いて理解を深め、今後の日本において全国大会は必要なのか?勝利至上主義は推し進めるべきなのか?について深く語り合う夜になりました。ジュニア年代の全国大会は本当に必要か?ジュニア年代の全国大会の必要性をディスカッションするために、まずは『海外における全国大会開催』の資料共有から始まりました。サッカーのみならず、多くのスポーツで実施されている全国大会。全国大会開催の必要性については、近年国内でも多くの声が上がっています。そこで、海外の事例を調べたところ大変興味深いものが出てきました。メジャーリーグやアメリカンフットボールなど、スポーツを商業的に発展させてきた印象の強いアメリカは、多くの地域でジュニア年代の地区大会を廃止しているという事実があります。大会の廃止だけでなく独自のローカルルールを採用し、スポーツの楽しみを重視する流れになってきていると言えます。サッカーの本場であるヨーロッパの国々でも特定のスポーツ以外も楽しめるスポーツクラブが存在しているようです。これには、「日本でも幼少期に、スポーツが本来持つ楽しみの部分を多く感じることのできる機会が必要」というサッカー指導者の会員の方からも出ました。また、地方クラブの指導者の方からは 「地方クラブと都市クラブの格差が広がっている」というお話も。「全国大会を本気で目指す子とただ毎日の練習が楽しい子のなかでモチベーションに差が生まれるのは当然のことです。そこで大きな大会に出た時に、人数の関係で大会に出たくない子もチームにエントリーします。そうするとさらに試合に出ている子と出れない子という違いが外からはっきりわかってしまうことで自己嫌悪というか、周りの目を気にする子たちも多いです。層の違いから、大きく点差が開く試合も多いのでトラウマになってサッカーを嫌いになってしまう子たちが増えてしまいそうなのも心配です。」ジュニア年代は、体も心も発育段階。この年代における、心のケアは特に重要であると言えます。全国大会という存在が、ジュニア年代の子どもたちの ”サッカーを嫌いになる理由” にならないために、より選手の目的や選択を重視できるよう、大会制度の見直しやそれに変わる大会の増設などが今後の焦点になるのではないかと思いました。ジュニア年代には、勝利よりも楽しさを感じてほしい「スポーツなんだから、勝たないといけないでしょという話を保護者の方からも多くされることはあります。しかし、中心はやはり選手である子どもたち。高校生だと入ってくる時点で目的がはっきりして、続けるも辞めるも自分で選択できる年齢なので、その点は深く考えなくてもいいんですけどね。大会で勝つことや、いい選手を集めることだけが正義ではないと思います。」「いろいろな動機で入ってきた子どもたちが自分自身でサッカーを使って何をしたいのかを見極める期間がジュニア年代。乗り越えられない挫折を経験させてはいけない。乗り越えることのできる挫折を感じるのは子どもたちの成長につながると思います。」このように、Footballcoach会員の街クラブの指導者の方からは ”勝利よりもサッカーの楽しさを感じる機会を増やすべき” という意見が多く共有されました。今回の交流会では、主にジュニア年代という主語で意見の共有を進めてきました。実際に、「ジュニア年代にサッカーを楽しみたかったのに、指導者やチームの熱が高すぎて入団した際の本来のサッカーを楽しむという目的からかけ離れてサッカーをしなくなりました」という声も聞きます。“全国大会出場を最大目標に掲げ、プロを輩出する” と明文化されているクラブであれば子どもたちも入団時にイメージができると思いますが、”サッカーを通した人間形成” を掲げるクラブに入団してみたら実は勝利主義で、サッカーの楽しみを与えるよりも勝利を優先していた なんてこともしばしばあるようです。このような問題は、やはり指導者の質に大きく関わってきます。クラブの指導者が何を理念に掲げているのか、その理念に集まってきた子どもたちの幸せは何なのかを深く考えるべきです。我々Footballcoachとしても、このような素敵な指導者の方たちと一緒に ”子どもたちの未来を潰さない環境づくり” に向けた取り組みやディスカッション、情報共有の機会を今後も大切にしていきます。