2022年5月22日、埼玉県で自費の治療院 アシカラ改善院を営む染谷学先生をメインスピーカー、東京都大田区を中心にGKスクールを展開している中山元延さんをゲストにお招きし、『メディカルの視点から考える、走り方のごかいと無駄が生み出すパフォーマンス低下』をイベントとして実施いたしました。メディカルの視点からサッカーを捉え、怪我を防ぐ正しい身体操作を学ぶ企画の第二弾。前回の、正しい蹴り方編に続き今回は正しい走り方編です。サッカーにおけるランニングは、技術だけでなくスタミナや怪我のリスクに大きく関わってきます。今回もメディカルのプロ、染谷先生と正しい身体の使い方を学び、怪我のリスクを抑え最大限のパフォーマンスを出せる走り方について学びます。誤解されやすい走り方のトレーニングとは?初めに染谷先生は、走り方を細かく分けた4枚の写真を用いて分析します。「以下の写真をみた時、非常にわかりやすい指摘ポイントがあると思いました。右から2枚目の写真を見るとわかりやすいんですが、猫背になっていますよね。左から一枚目でこれだけ背中が伸びていたのに、着地した時に猫背になっているのはエネルギーを前に運べていない証拠。要は、後ろに力が働いているからこのような姿勢になっているんです。もう一つは左から2枚目の写真です。後ろの足が追いついていないんですね。これは体を横振りして走っている証拠です。このように、走っている時の姿勢はかなり注目すべき項目であると言えます。」頭から足が直線的に見える姿勢が、いい走り方を表していると染谷先生はおっしゃいます。必要以上の力が、本来とは違う方向に働かせてしまうことは怪我を招く大きな原因になりかねません。「プロの選手や育成年代の選手でもよく行う、脚上げのトレーニングにも誤ったものがあります。以下の写真左側は脚上げ動作の比較写真、右側は正しい脚上げトレーニングの順序です。早く走るためには前傾姿勢が大事!という指導に間違いはないんですが、足だけでなく上半身も前傾姿勢になるのが正しい姿勢です。イメージは下り坂を走る時。地面を蹴って早く走るのではなく、足を早く運んで走ることで早く走れるようになります。 」こういった知識は、身体操作の専門家である染谷先生だからこそ語れるもの。普段の指導やこれまでの経験ではなかなかカバーすることのできない、知識ですね。蹴る力よりも、足を早く運ぶことを意識するのが重要だということがわかりました。怪我を起こしやすい、"ニーイン" の状態とは?膝が足の内側に入ってしまう状態、”ニーイン”。このニーインの状態は、前回の "正しいボールの蹴り方編" でもおっしゃっていた通り怪我を起こしやすい状態であると今回も染谷先生がおっしゃいます。「プレーをしている早い状況変化の中でなかなか走り方を改善するのは難しいです。なので、こういった正しい走り方は日頃の動作から意識しておく必要があります。以下の写真左側がニーインの状態です。膝が内側に入っていますよね。しかし、膝が内側に入っている状態だけがニーインではないんですね。以下の写真右のように、膝がまっすぐになっていてもお尻が外側になっていたら、それはニーインです。これは前回の正しいボールの蹴り方編でも話しましたが、前十字靭帯断裂という大怪我のリスクが非常に高いです。歩行時にこのような状態を起こさないように、膝が内側に入らないような癖をつけることが需要です。」「早い動作だと、映像をとってゆっくり見せないと子どもたちにはわかりづらいです。ゆっくりした歩行動作でニーインを防ぐ指導を心がけてほしいです。このように歩行動作から見直すことで、オスグッドや捻挫癖と言われる症状が起きにくくなります。やらなければいけないトレーニングプラスαの動作として念頭に置いておいていただきたいと思います。」明日から現場で活かせる、"アシカラ流" 指導法今回の企画のゲストでもある中山さんから、「育成年代の指導において、これだけはやっちゃいけないというものはありますか?」との質問が。これに染谷先生は、「靴の選び方ですね」と即答します。「日本は自分に合った靴を選ぶ文化が海外に比べてまだまだ弱い印象です。できるだけ避けた方がいいのは、小さい頃から常にサンダルを履かせること。夏休みの間、ずっとサンダルを履かせていると足首や足腰に良くないんです。サンダルって柔らかくて、どこでも曲がるしねじることができる。人間の体にはありえない状態が起こりやすいということなんです。特にかかとはノーガード。柔らかいかかとがぶれない、ずれないようなものに覆われていることが重要です。足首の捻れ、かかとの保護という観点から靴を履くというのが良いです。」さらに、指導時の言葉の使い方に関するアドバイスも付け加えます。「日本語の曖昧さにも注意を払って指導してほしいです。”まっすぐ” の定義をしっかりと頭に入れておくことが大事なんですね。一般的にまっすぐと表現すると、進行方向に向かって足の中指を前に向けた状態と勘違いしてしまいます。これを解剖学を用いて話すと脛から足の親指が繋がっているので、つま先を少し外に開いて親指を進行方向に向けた状態が本来の体に沿った “まっすぐ” です。これを知っているだけで、正しい姿勢を心がけることができます。これらは明日から変えれることなので意識してほしいなと思います。」染谷先生が常々おっしゃる、正しい姿勢を理解した身体操作。若ければ若いほどこういった日常の動作から意識し、修正することで怪我を予防することができます。「常に子供の靴があっているか、正しい姿勢が取れているか。ちょっとしたことですが、この ”ちょっとしたこと” に気付ける指導者でありたいなと思いました。」と中山さん。こういった、プロの知識を共有できる機会を今後も増やしていきたいですね。