結婚式から8日後に突きつけられた、プロとして初めてのクラブ サガン鳥栖からの契約満了。結婚して間もなく突然の無職になった経験から、Jリーグの舞台に舞い戻るまでの間どのような心境だったのか?また、当時と現在を比べどのようなマインド変化があったのか?現役プロ選手たちのサッカー人生に大きな影響を与えた『人生のターニングポイント』に迫る企画として開催。現役Jリーガー モンテディオ山形GK 藤嶋栄介選手と、藤嶋選手を小学生の頃から指導し、恩師でもあるGKコーチ 澤村公康さんによる対談の様子を一部抜粋してお届けします。人生最大の困難を経て芽生えた、感謝と向上心藤嶋選手は学生時代、熊本県の強豪大津高校から福岡大学とまさにエリート街道を突き進み、ユニバーシアード日本代表(大学日本代表)では正GKとして活躍。サガン鳥栖に入団し、将来を大きく期待されていました。2013年に入団したサガン鳥栖ではなかなか出場機会に恵まれず、ジェフユナイテッド千葉や松本山雅へのレンタル移籍。しかしレンタル移籍した2クラブでも出場機会に恵まれず、結婚式からわずか八日後に契約満了通知。「当時、鳥栖か山雅どちらかには残れるだろうという気持ちでした。でも、結果はどちらもアウト。とにかく、頭が真っ白になりました。澤さんには定期的に連絡していたので、その時も連絡させてもらいましたね。僕も嫁と実家の熊本に帰っていて、澤さんは熊本のGKコーチだったので今から〇〇にこれるかって言われて嫁を実家に置いてすぐ向かいました。」藤嶋選手と澤村さんは、藤嶋選手が小学生の頃参加したGKスクールからの関係性。藤嶋選手のお兄さんが澤村さんとプレーしていたということもあり、昔から互いをよく知るまさに ”師弟関係”の間柄です。当時の様子を澤村さんも語ってくださいました。「栄介はいい時もよくない時も必ず報告してくれていました。どうするの?ときいた時にカッコつけずに行き場がないと伝えてくれたので、これは自分が手を差し伸べないといけないと思いました。」この言葉から、澤村さんが所属していたロアッソ熊本の全面協力もあり澤村さんとの自主トレがスタートしました。ロアッソの練習施設使用だけでなく、紅白戦にも出場するなど故郷熊本でコンディション調整に励みました。「澤さんをはじめ、ロアッソの方々には本当にお世話になりました。これまで試合に出れない日々で、なんで頑張っているのに評価されないんだろうと考える機会も多かったです。でも、この経験をしてその考え自体が甘かったことに気づきました。いろいろな方に支えられて、こうしてプロの世界でサッカーができることへのありがたさや自分は慢心せずまだまだできることがあるという向上心に変わったんだと思います。」どん底状態からのJリーグ復帰。開幕戦の相手がまさかの...熊本への練習参加から間も無くして、レノファ山口への加入が決定。「実は、レノファの加入が決まったのが開幕戦の二週間前。しかも、開幕戦の相手が直前までお世話になっていたロアッソだったんです。ロアッソの開幕に向けたフォーメーション練習などにも参加していたので、僕がレノファに移籍するというのはロアッソにとってあまりいい気はしないと思いました。どうやってロアッソ関係者に言おうかと思って恐る恐る伝えると、頑張ってこいよと皆さんが背中を押してくれました。澤村さんはじめ渋谷監督や織田GMなど、ロアッソの方々には頭が上がりません。」まさに熊本への恩をすぐにピッチで表現できる場所が整い、レノファへの加入から二週間後のロアッソとの開幕戦ではスタメンに名を連ねます。「これまで、プロの舞台でほとんど出場機会に恵まれなかった中で初めての開幕スタメンでした。ロアッソとの開幕戦ということで、二週間で何がなんでも定位置を掴んで試合に出ている姿を見せて恩返ししたかったですし、スタメン発表で真っ先に自分の名前が呼ばれた時は本当に泣きそうになりました。」この試合に出場できたのも、ロアッソでの練習参加、澤村さんとの自主トレが身を結んだ結果だったんですね。これには澤村さんも、「ドラマにできるんじゃないの?って位のストーリーだよね(笑)」と一言。「必死にやると周りの人もいいエネルギーを与えてくれるということを栄介から教わりました。」笑顔で当時を振り返るお二人の姿から、恩師と教え子という良い関係性が垣間見えた瞬間でした。再び訪れた苦境、もう一度ピッチで山形に恩返しを。今回のイベント直前に発表された藤嶋選手の怪我。全治6ヶ月という大怪我の直後にも関わらず、モンテディオ山形の関係者の方々や藤嶋選手のご協力もあり無事に開催できました。「今回の怪我で、不安になるのは仕方ないので焦らずにゆっくりと治し、応援してくださるファンの方々を思い浮かべながらリハビリを頑張ろうと思います。この場でお話ししたからには、僕もやってやろうという前向きな気持ちで捉えています。八月頭に手術しましたが、あれだけの準備してたからしっかり戻ってこれたよねって思ってもらえるようなリハビリにします。絶対ピッチに戻って、皆さんに感謝を伝えるので待っていてくださいね。」こう語る、藤嶋選手の目には復帰までの確かな自信と希望が満ち溢れていました。サガン鳥栖を退団し、結婚式八日後の無職、そこからJリーグに復帰しレノファ・モンテディオでのコンスタントな試合出場を続けていたタイミングの大怪我。しかし、真っ直ぐな眼差しで時折笑顔を浮かべながら語る姿を目の当たりにし、さまざまな苦境を何度も乗り越えてきた藤嶋選手ならまたすぐピッチに戻ってきてくれると感じた一時間でした。改めましてこのような状況にも関わらず出演してくださった藤嶋選手、承諾してくださったモンテディオ山形のクラブ関係者の方々、ご参加いただいた全ての藤嶋選手のファン・サポーターの皆様へ感謝申し上げます。藤嶋選手がピッチで躍動する姿をまた必ず見せてくれると信じて、応援し続けましょう!「あの日、あの経験がここまで導いた」現役プロ選手が本音で語る『人生のターニングポイント』自信の持てなかった私を変えてくれた、指導者との出会い成功と挫折。新たに芽生えた ”サッカーとの向き合い方