「ファシリタティブリーダーシップは今思い返すとうまくいっている組織のリーダーに共通している部分だなと思いました。日本で言うと、変化のある業界の中で拠点を変えて、『これでなきゃいけない』ではなく『長い目で見てこういったことをすると伸びるのではないか』といった思考を企業で体現している例もよく見受けられます。」今回の、本を読まずに参加できる読書会『Booked』で用いた書籍は『The ファシリテーター』。主人公がさまざまな障壁を乗り越えていく中で、ビジネスとしての知識も散りばめられるビジネス小説です。日本でも近年よく耳にするようになった、”ファシリテーター” とはどういったものなのか?また、日本と米国でのファシリテーターの違いからリーダーシップ論にまで発展します。真のファシリテーターは、”〇〇を生む”「あなたが思う『良いリーダーの要素』を書き出してみてください」本を読まずに参加する読書会 Bookedを主宰する浦野さんのこの一言から会がスタートします。今回のテーマとなる書籍は「The ファシリテーター」。リーダーシップについて書かれたビジネス書として著名な書籍です。ここで今回のゲストボブさんが考える、良いリーダーの要素とは何かを浦野さんが尋ねます。「自分の中でも大切にしたいなと思う三つは、変化を楽しめる人・長期的ビジョンが持てる人・業界を豊かにできる人。自分のことを存分に表現しつつ、相手の意見もしっかりと聞け人間がリーダーに相応しいとも思いました。」とボブさん。海外での選手経験やJリーグなど多岐にわたる組織の一員としてさまざまな形のリーダーを見てきたボブさんからはご自身の経験から思い浮かぶリーダー像を書き出してくださいました。ボブさんが考えるリーダー像に思わず浦野さんも「痺れますね」と一言。こういった参加型ワークショップ形式の読書会はBookedならではで、皆さん頭をほぐしたところで本題である書籍の解説に入ります。「こちらの本はビジネス小説というジャンルです。主人公がいろんな問題に直面していくものを、ビジネスのエッセンスを加えて展開されているものになります。ビジネス小説の中でも名著とされている書籍なんです。そもそもファシリテートは、”促進する” “容易にする"という意味があり、ゆっくりとしか進まないものを加速させる人のことを指します。よく会議の司会進行役という意味合いで使われますが、アメリカの企業で重要視されているのが組織変革のファシリテーションというものです。行動を生み出すファシリテーターが良いファシリテーションとも言われています。」まずは、浦野さんからファシリテーションの定義について解説が入ります。今回のBookedの最頻出単語であるファシリテーションへの共通理解を生むことは ”書籍を全く読んでいない” 参加者にはなくてはならないステップ。ここからよりファシリテーションの構造理解を深めていきました。日米間における “言葉による理解の必要性” の違い「米国はもともと多様な人種の国ですから、言葉による理解を工夫してきた国。そういった国だからこそ、ファシリテーション文化というものが根付いてきたんですね。この点においての日本との相違点は、”言葉による理解の必要性” です。日本は多様な価値観や意見を「言葉を介せずとも理解し合える」というある種集団睡眠のようなもののせいでコミュニケーションをサボっている文化が根付いてしまったといっても過言ではありません。この日本特有の文化が、あくまでビジネス書ですが欠点として描かれているんです。」浦野さんからの米国におけるファシリテーション文化に関しての言及から、日本に根付いている ”密なコミュニケーションよりも空気を読むべき” といった文化が思い浮かびました。組織においても、主体的に意見を発したり物事を動かす人物が少ないと言われる理由も、こういったものからきているのかもしれません。「ここで、今日の最も重要なスライドをお見せします。リーダーシップが二種類ビジネス界に存在しているというものです。一つがディレクタティブリーダーシップ、もう一つがファシリタティブリーダーシップです。前者が、『方針をリーダーが決め、それに合わせてチームが動いていく』いわば古いタイプのリーダーシップとされていますがもちろん組織によって適切な場合も存在します。シンプルな課題の解決に向いているんです。それに対して後者は、メンバーの意見を引き出しながらチームを引っ張っていくタイプ。新しいタイプとされているリーダーシップです。これは複雑な課題の解決に向いています。この本の主人公は、ある日突然知識も経験もないまま別領域の管理職に任命され、高い要求を受けます。この目標に向かってファシリテーション力を発揮していくという物語です。」二種類のリーダーシップの説明を終え、書籍のあらすじへと話を進める浦野さん。チームビルディングで苦労する主人公が、さまざまな困難を乗り越えて組織としての成長を加速させていく姿がこの書籍では描かれています。ビジネスとスポーツの現場におけるリーダーシップ論「先ほど浦野さんが解説してくださった、ファシリタティブリーダーシップは今思い返すとうまくいっている組織のリーダーに共通している部分だなと思いました。日本で言うと、変化のある業界の中で拠点を変えて、『これでなきゃいけない』ではなく『長い目で見てこういったことをすると伸びるのではないか』といった思考を企業で体現している例もよく見受けられます。サッカーの現場でも、子どもたちがいるから指導者として成り立ったり相手がいるから試合ができたり。私はサッカーの現場でも勝ち負けより、この業界がどうなるかを常に考えていました。」ボブさんがビジネス書である今回の書籍をサッカー現場に置き換えてお話ししてくださいました。「ビジネスは、シンプルな方じゃないかなと思うんです。今回の書籍は大企業ではなく、5〜10名ほどの小集団が舞台となっている本です。部署のレベルでの話なのでダメだった場合にすぐクビになるとか無職になるという経験をしない。しかしサッカーやスポーツは特にプロだと結果が全てなので、ビジネスよりシビアなのかなと思います。」浦野さんが考える、プロスポーツとビジネスの違い。こういった違いに気づくことができるのも、ビジネス書籍をサッカーと言う軸に置き換えて考える時間だからこそ生まれるものだと思います。盛り上がり必至の人気企画。本を読まずに参加する読書会『Booked』『13歳からのアート思考』に学ぶ、自分の色を表現し “真のアーティスト” になる方法。"本を読まない読書会" で考える、サッカーチーム理論