普段はサッカー指導者や選手、専門家の方々と人生のエッセンスとなるフットボールから得た経験や学びを中心に動画を公開していますが、今回は2022年 カタールW杯の期間中ということもあり、普段お世話になっている方々に向けた特別緊急企画として実施しました。初戦のドイツ戦には2-1の逆転勝利を収めた日本。第二戦 コスタリカとの試合に勝てば決勝トーナメント進出に大きく前進する重要な一戦でしたが、結果は0-1で敗戦となりました。この一失点にはSNSでも「GKが防げた失点なのでは?」との投稿が多く見受けられました。果たして本当にGKのミスによる失点なのか?日本代表GK 3選手と関わりがあり、ロアッソ熊本・サンフレッチェ広島のトップチームでGKコーチを歴任された澤村公康さんに今回のコスタリカ戦を振り返ってもらいました。「あの失点は、必ずしも全責任がGKにあるわけではない。」-今回話題になっているのが日本の失点シーン。「GKのミスではないか?」という意見も多いですがGK目線でどのようにみられていますか?僕自身がワールドクラスのベンチには入ったことがないので、推測や憶測にはなると思いますが世界最高峰の舞台であるW杯ではコスタリカの選手のシュート前におきた日本代表のクリアミス一つでああいった失点につながってきます。これに関しては、しょうがないと思いました。ゴール前での守備で吉田選手がつなぐという選択肢をしたんだと思いますが、残り時間も含めてはっきりクリアをすべきだったなと。あの試合日本は相手陣内に大きく蹴るボールはほとんどなかった気もしたので後方からつなぐ意識の強い一戦からきた繋ぐという判断だろうと思いましたね。そこを拾われてしまって、権田選手の立ち位置も前に出過ぎていたのもあってシュートを打ちやすい形でした。結果的に吉田選手の足にディフレクトして急激に回転がドロップになってゴールに吸い込まれました。シュートが放たれた時点でボールが逆回転し始めた時にはGKにはノーチャンスだったと捉えています。権田選手の体も伸び切っていた中なので、吉田選手のクリアミスと権田選手の立ち位置が惜しかったなと思います。-第一戦は権田選手のビックセーブに救われて劇的勝利でした。今回の第二戦は別の角度からGKにフォーカスが当てられています。普段サッカーを見ない人たちも見る機会になるW杯というタイミングで、「GK目線として、こういう見方をしてくれると嬉しい」というものについて聞かせください。イングランドには、GKにまつわる言葉として "One day hero, One day ban" という言葉があります。つまり、いい時には良い悪い時には悪いとはっきりと言われてしまうポジションがGKです。GKに限らず、第一線で活躍する選手たちはメンタルが自立している必要があります。良いプレーをした後も、悪いプレーをした後も引きずるのではなくしっかりと切り替えて一戦一戦取り組んでいくべきです。ロシアW杯の際、川島選手が批判を受けた試合がありました。しかし当時の西野朗監督はその次の試合前記者会見に川島選手を同席させ発言機会を与えていたんです。その光景を見て、西野監督流石だなと思いました。GKにちゃんと信頼を置いているんだよというのをわかりやすく表現したのだと思います。「大きなゴールマウスに、かなりの重圧の中立ってくれているGKにリスペクトを。」-GKではないポジションでも、「伊藤選手が三笘選手にパスを出さない」という発言に対して本田圭佑さんが「あれは監督の指示も関係しているから一概にも選手だけのミスではない。安易に批判しない方が良い」という趣旨の投稿をSNSでされていました。GKを知らない視聴者がよりフットボールを楽しむにはどういった視点を持つべきでしょうか?GKを経験されたことない方は、ゴールマウスがどれくらいの大きさなのか一度ゴールマウスに立ってみてください。横は7.32m、横は2.44mあるんですがゴールから一歩離れるだけで横幅は狭くなるけど頭上が広がるといったように絶妙な大きさなんです。なのでGKを知ってもらうには、機会があればゴールマウスに立ってほしいですね。「こんな広いところ守ってるんだな〜」という感じ方をしてもらうとゴール前に立ってること自体にリスペクトを抱くと思います。日本のGK陣三選手が大舞台の重圧の中、日本のゴールマウスに立っていることへのリスペクトを持って試合を見てほしいなと思います。-澤村さんのおっしゃる通り、リスペクトのない批判は受け入れられないものだと思います。サッカー好きな人でもなかなかGKの視点を持ってない人が多いですよね。 GKの視点とセットで批判すべきだと思います。そうですね。僕自身もこういった世界大会が終わった後にGKのプレー分析はしたいと思っています。今回のような失点を権田選手が何回Jリーグで経験しているのかも考えてみました。コスタリカの選手のようにDFの足が出ている状態でシュートを思いっきり打つという意識はまだJリーグには落とし込まれていないのかなと思います。DFの前でシュートを打つと弾かれてしまうものという捉え方をしているという印象も受けるので、こういったシチュエーションが必ず日本代表の選手がさらに成長するためには必要なのかなと思いましたね。このシーンを育成年代にもしっかり落とし込んでいけると日本はまだまだ成長できます。経験をバネに、スペイン戦の躍動を期待したい-失点シーンばかりではなく、ポジティブな話もしたいと思います。相手GKのナバス選手は第一戦で7失点したのちの日本戦でクリーンシート(無失点)でしたよね。この事実を踏まえ、どのようにコスタリカ戦をご覧になられましたか?日本戦のアップが終わって、入場の時のナバス選手の表情から7失点を全く引きずってない雰囲気を画面上から感じました。相手がスペインだったとはいえ、W杯での7失点はミスが絡んでなくともかなりのショックを覚えるものになったと思います。それを数日のリカバリーで、全くショックを感じさせない表情で結果無失点に抑えました。改めてGKの精神的な強さを学ばされたなと強く感じました。どういう立ち居振る舞いでゴールマウスに立つのかなと楽しみにしていたので、まさに "One day hero, One day ban" の立ち居振る舞いだったなという印象ですね。1ゲームずつ楽しむマインドが世界のGKとの大きな差だなとも感じたゲームでした。権田選手もドイツ戦でPKを与えた後、彼のこれまでのキャリアが反映された見事な立ち居振る舞いで最優秀の活躍でしたよね。本当に見事でした。この活躍後のコスタリカ戦でほとんどシュートストップの機会がないまま一本のシュートで失点して負けてしまうのはすごく酷だなとも思いました。例えば僕がGKコーチだったらという想像をした時、監督の許可を得て後半開始前に10本、15本シュートを打ってあげてシュートに馴染ませるという判断をしたのかなと。GKは失点から学ぶポジションなのでみんなで、今回の失点から学ぶことを次のスペイン戦や彼のこれからのキャリアに存分に生かしていってほしいなと思います。-最後にスペイン戦を控えた日本代表にコメントをお願いします!一言、頑張れ日本!で(笑)僕らの代表選手を国民の皆さんで一緒に応援しましょう。【編集後記】コスタリカ戦後の第三戦には、スペインに勝利を収めグループリーグ一位通過を決めた日本代表。Footballcoachとしても今後の日本代表の活躍をフットボールファンの皆さんと応援していくとともに、日本のサッカー文化の発展に少しでも寄与できるよう精進していきます。『人生我以外皆師』サッカーを”伝える” 指導者日本代表GKが語る、”欧州で活躍し続ける選手になるために必要なもの”日本代表GKを育てたGK指導者と共に、"夢にトライする3ヶ月"選手と同じ目線で "3つのふりかけ" を持つ指導者のモチベーターとしての価値「GKが主導権を握る。」プロ多数輩出GKコーチが伝授するPKを制するGKに必要なもの