鎌倉インターナショナル監督 河内一馬さんが執筆した書籍『競争闘争理論 サッカーは「競う」べきか「闘う」べきか』。「サッカー」というスポーツの捉え方が西洋と東洋で異なることを、自身が旅した欧州15カ国やアルゼンチンでの原体験を交えながら記され、『競うのではなく、闘うフットボールとは何か?』『なぜそもそもの捉え方が西洋と東洋で異なるのか?』これまでになかった視点で描かれています。そんな『競争闘争理論』の著者 河内一馬さんと、『競争闘争理論』を読み自身のプレーに大きな影響があったとコラムで語ったギラヴァンツ北九州 岡田優希選手の対談が実現。この対談は、著者 x 選手や指導者の対談から書籍を深掘る企画『Book Digest』として開催しました。今回はこの対談の様子を一部抜粋しながら振り返ります。%3Ciframe%20width%3D%221920%22%20height%3D%221080%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2FLJnpJ0an0Iw%3Fsi%3DZ_nmTM8dmtFCQTvN%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%3B%20web-share%22%20referrerpolicy%3D%22strict-origin-when-cross-origin%22%20allowfullscreen%3D%22%22%3E%3C%2Fiframe%3E日本が世界で勝てない競技 "団体闘争"「競争と闘争の前提が違うということを主に書いています。海外と日本のサッカーの違いに気づくタイミングがあり、その要因を考えた結果、戦術やデータで表せないところに違いがあるのではないかという結論に至りました。そこから日本の文化と西洋の文化の違いが、サッカーにおいてピッチ上でも現れているのではないかという仮説を持ちました。スポーツを考える際に競争と闘争の二つでわけ、さらにそこから個人と団体に分けてカテゴライズしてみたんです。そうすると、日本は団体闘争というカテゴリーだけ世界で勝てていないことがはっきりとわかりました。サッカーやラグビー、バスケ、アイスホッケーなどが同じものに分類されるのですが、これらは日本が世界で勝てていない競技です。この主張を中心に、書籍ではさらに深ぼっていくことになります。」書籍の題名にもなっている "競争" と "闘争" 。これらは書籍内で河内さんによって定義化され、図も用いて相互の比較が非常にわかりやすくまとめられています。専門学生時代に学んだ東洋、西洋医学からそれぞれの "モノの捉え方の違い" に着目し、サッカーをはじめとする競技に落とし込んで書かれた『競争闘争理論』。この書籍を読了し、ピッチ内でのプレーに大きな変化が生まれたと語るのは、ギラヴァンツ北九州で一年目の今季から背番号10を背負う岡田優希選手「競争は、自分のリズムや内的集中が中心になってくると思うので "正しい選択をする" ことが結果に結びつくと思います。対して、闘争は自分の技術はもちろん妨害という外的な力も同時に影響するので "選択を正解にする" ことが重要であると本を読んで感じました。こういった捉え方をできるようになってから、失敗やミスへの考え方が根本的に変わった部分です。結果としても果敢にトライを続けた結果、昨季キャリアハイの14得点につながりました。」岡田選手が書籍を読み、『サッカーを競争ではなく闘争』と捉えることによってパフォーマンスにも大きな変化があったそう。技術や戦術理解などの向上はもちろん、サッカーそのものの捉え方を整理できたと語る岡田選手の言葉には、昨季の成績を照らし合わせても大きく頷けます。頭の中を変えることで、表現が変わってくる。「先ほど、岡田選手がおっしゃったように頭の中を変えることで表現が変わってきます。これはサッカーやスポーツに限らずですが、行き詰まった時にモノの捉え方や考え方を少し捻ることでパフォーマンスも変わることが多いです。冒頭でお話ししたようなスポーツにおける競争と闘争の違いなどは、サッカーを作った西洋の人たちに聞いても逆に全然わからないんです。彼らが意識せずとも行っているようなものなので、我々だからこそ気づくことでもあります。」15カ国の欧州を旅し、アルゼンチンでの生活を通して河内さんが感じた海外のスタンダード。選手として、外国人監督や外国人選手とプレーしてきている岡田選手も続きます。「町田ゼルビア時代のポポヴィッチ監督は、自身が指導したことをそっくりそのまま選手が体現していなくても結果的に良い選択をした選手には "ブラボー" と言ってくれていました。つまり、選手自身が "選択を正解にした瞬間" に称賛の声が飛んでいたんです。日本人は、これがなかなかできないと思います。先生や指導者、人から言われたことを忠実にこなすことが正義と感じる国民性です。しかしサッカーは、相手よりも多く得点を取るスポーツ。常に正しい選択ができなくても、結果的にその選択を正しいものにすることができればオールOKという思考の下 トライし続けることが重要です。これはなかなか言語化できない、ピッチ内で僕が感じたことです。」時間を共にした元指揮官のエピソードから、"サッカーはゴールゲームである" という究極の本質に改めて気づいた岡田選手。団体闘争で世界との差を縮めることに苦労する日本人は、日本人特有の考え方や風習をそのままスポーツにも反映させてしまっているかもしれないということですね。大きく違う、日本と海外の "練習" を行う意義「日本人の我々は、何か成果を出す時にその準備として練習を行うことが当たり前ですよね。サッカーでも練習を行ってから、試合というサイクルで。しかし、本来は逆だと思います。試合を行ってから練習なんですよね。サッカー自体が元々ストリートでやられていたスポーツという背景も考えると、試合でのパフォーマンスを振り返ってそれを補助する役割として練習があるべきです。これは同じようで違う、日本と海外の大きな差なのかなと思います。」河内さんから発せられた『日本と海外の練習を行う意義』については、岡田選手も昨季ピッチ内で気づくことがあったようです。「僕自身も昨季は、試合でできなかったことを練習に落とし込むことを意識して取り組んできました。この書籍を読んでから自分のマインドが切り替わったのもあって、ゴールをコンスタントに奪えたのかなと振り返ることができますし、相手の対策の中でも思考を止めずに続けてきた結果の数字だと思っています。周りの選手を見ても練習した形を試合で出そうという選手が多いです。その方が安心するというのもあると思います。ただ自分は、"試合でチームを勝たせる" という目標から逆算してできなかったことや修正をしない方が良い部分も多く見えてきました。なので、常に試合の次に練習というサイクルが出来上がっていましたね。」これまでの経験をもとに、自ら "西洋と東洋におけるサッカーの違い" を仮説し、一冊の書籍にまとめた著者。その書籍を読み、自らのマインドを変化させ、ピッチ内での影響にいち早く気づいて結果を示した選手。それぞれの視点から繰り広げられた、これからの日本サッカーが大きく変革する可能性を秘めた対談となりました。著者 x 選手や指導者の対談から書籍を深掘る『Book Digest』医学の知識やアルゼンチンでの生活が作り上げた、多角的視点を持つ指導者