"PKストップは決して運じゃない。正しい視点を理解すれば、確率を高めることができる"ゲーム中のワンシーンだけでなく、W杯や高校サッカー選手権に代表されるトーナメント形式の大会では勝敗を決するPK。「PKは運だから」「キッカーが有利だから決められて当たり前」GKにとって不利な状況が揃っていると表現されることも少なくないPKを、澤村公康氏は「GKが主導権を持っているプレー」だと表現します。GKがPKを制するために求められるものとは?本記事は、『PKに必要な GK7つの視点』から一部抜粋してお届けします。「GKの良い準備無くして、ストップできるPKはない」「サッカーでは、試合中のセットプレーが7つあります。その中のひとつがPKです。GKがライン上に立たないとプレーが始まらないので、『PKはGKが唯一主導権を握ることができるセットプレーである』と選手にも指導しています。これは今日お話しさせていただく上で前提として理解していただきたい部分です。さらに、PKに臨むGKが大切にすべき視点は7つあると考えていますので、今日はこの7つをご紹介できればと思っています。」Jリーグのトップチームや、高校サッカー強豪校、自身が行うGKクリニックの活動で多くのGKを指導してきた澤村さん。まず初めに、PKキッカーが蹴る前のGKが行う準備について触れました。「1つ目は、"強い気持ちで念じる" ということ。キッカーは100%ゴールを決めるという気持ちで望んできます。これはGKにも言えることで、止める気満々で立ち向かうべきだと思います。心理的な部分ですが、まず第一に大切にするものですね。」「2つ目が、"相手をよく観察する" ことです。キッカーのデータを事前にインプットしているはずなので、そういったデータを元にゲーム中であればキッカーの疲労度やゲームを通じてのパフォーマンスも頭の中で整理することが重要です。ボールを置く仕草や表情、助走のとり方、目線など、キッカーをよく観察することをPKに向かうGKには心がけてほしいと思います。トレーニングの段階から、PKを止めた後のセカンドボールへの対応としてPKキッカーへのマークを決めておいたり、チームとしてPKを防ぐことも同時に考えるべきであると私は指導しています。」最初に澤村さんがあげた、7つの視点のうちの2つはGKの準備について。キッカーがどうであれ、PKに向かうGKには共通して重要と言えるものだとおっしゃっていました。ここから実際にキッカーが蹴る瞬間のGKの動きについて、焦点は変わっていきます。ルールにもキッカーにも負けない、GKの適切な動きだしとは?「3つ目は、"動き出しのタイミング" です。ルール改正が進み、PKではGKのどちらかの足がキックの瞬間までライン上についていなければなりません。なので、原則としてキッカーの軸足が入る寸前の適切なタイミングで動き出すトレーニングは普段から行うべきですね。せっかくストップしたPKがGKの早い動き出しによりやり直しになることもありますし、キッカーの助走のクセなどによっても動き出すタイミングが変わってきます。ボールに対する侵入角度、ボールに対する侵入スピードも注視すべきです。」「4つ目は、"動き出しの順序" 。GKの動き出しとしては、みぞおちから動き出す ということを特に意識して欲しいと思います。良い姿勢を保ちながら、キッカーが蹴るギリギリまで待ち構えます。キッカーが蹴る瞬間の動きとして、踏み込む足の方向も重要です。ダイビングする方向とは逆の足から踏み込むことで、力強いインパクトが生まれます。」「5つ目が、"大きなダイビングフォーム"。ゴールを9つのブロックに分け、ボールが飛んできたエリアに正確なフォームでダイビングできているかを日々のトレーニングから確認しながら取り組んでください。」キッカーが蹴る瞬間のGKに必要な動作。いかなるキックの種類やキッカーそれぞれの特徴にも対応できるようにするのはもちろん、ルールに則した動き出しを日々のトレーニングから養う必要があると澤村さんは言います。また、動き出しの次のステップであるGKのダイビング方向についても、狙った方向に正確はフォームでダイビングすることがPKストップにおいて重要視すべき点であることがわかりました。最大限の力を発揮した上で、ボールにアタックする「6つ目は "プレーの方向"、つまりダイビングの方向ですね。いかにして面を大きく保ちながら、ボールに向かうダイビングができるか。これもいろいろな考え方がありますが、私が指導する際はゴールエリアの角に向かってのダイビングや、Dマークとペナルティエリアの接点に向かってのダイビングなどの意識づけを行います。ゲーム中のPKであれば、GKの大袈裟なダイビングが相手に対してプレシャーを与えることにもなるので効果的ではないかと考えます。」「最後の7つ目は、"呼吸と息づかい" です。これまで述べてきた項目の中でも特に重要だと思い、あえて最後に述べさせていただきます。息を止めてアタックする選手、息を吐いてアタックする選手 2パターンあると思うので、自身にフィットした形で行ってください。力強く自分の体を動かせるように、呼吸の仕方も試行錯誤しながら自分の最適解を見つけてみてください。」PKではまず第一にストップすることが大切ですが、そのストップの仕方が以降のプレーや相手に与えるプレッシャーにも大きく影響します。ゲーム中のPKであれば、キッカーに対して勢いの持ったプレーを表現することで、嫌なイメージを与えることも可能です。澤村さんが考える、『PKに臨むGKが大切にすべき7つの視点』。これらを意識した日々のトレーニングの積み重ねが、「GKのストップ確率を1%でも上げる」秘訣だとおっしゃいます。「PKは運である。」「PKをGKが止めるのは、キッカーがPKを決めるより確率が低い」そんな声を耳にすることも少なくありませんが、これらの視点を理解しているかしていないかが明暗をわけるとも言えます。さらに掘り下げればそれがゲーム中のPKなのか、PK戦という5回のチャンスが設けられた場面でのPKなのかによっても意識する項目が変わってくると思います。本記事では触れることのできなかった、プロ選手のPKにおけるプレー分析やPK戦でのGKの立ち居振る舞いなども本企画では述べられていましたので、ぜひ動画でもお楽しみください。自身の考えを正しく伝えるための "傾聴力"。現役Jリーガーが語る、"コミュニケーションの極意"現役選手と考えるGKの開始姿勢 プレジャンプとゼロコンタクト『人生我以外皆師』サッカーを”伝える” 指導者