2022年7月15日にJFAが策定した「ナショナル・フットボール・フィロソフィーとしてのJapan's Way」。今回は、第五章『フィジカルフィットネスの未来』を軸にゲスト指導者の松本康佑さん(日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー / C Lab代表 )、染谷学さん(アシカラ改善院 院長)とディスカッションを交えながら、サッカー指導者に伝えたいフィジカルリテラシーを伺う機会になりました。イベント動画全編視聴はこちらトレーナー、メディカルが考える "フィジカル " とは?今回のゲストである、松本さん染谷さんそれぞれに『フィジカルの定義』を伺うところからスタートしたこの回。「私がフィジカルと定義しているのは、『ケア・トレーニング・メンタル』『睡眠』『食事』の三つが重なる部分を『コンディショニング・パフォーマンス』としていて、この部分がフィジカルだと考えています。」(松本さん)「松本さんの定義と同じような考えを持っていますが、私は『総合的な身体能力』という定義ですね。フィジカルが強い、弱いとよく聞きますが適切な表現とは少し離れている印象があります。フィジカルを伴った身体操作がスピードや体幹の強さになると思いますので、フィジカルの性能としての強弱という捉え方をしています。」(染谷さん)お二方のそれぞれのフィジカルの捉え方をお聞きし、トークテーマ『育成年代に必要なフィジカルトレーニング』へと移ります。パフォーマンス向上とは、結果の再現性にあり「我々は、選手のデータや数値だけを見るのではなく、そこに再現性があるのかを考える必要があります。結果が上がっても、痛みを抱えながら発揮したものはパフォーマンスが上がったと言い切れない部分も。体に痛みを与えずに、安定したクオリティを発揮できて初めてパフォーマンスが上がったと評価できると思います。」(染谷さん)「選手のセルフケアは、指導の中でも特に意識しています。食事や睡眠はセルフケアの土台になっているものなので、トレーナー任せになるのではなく選手自らが行動できるように伝えていますね。それぞれの選手によって体つきも、体調面でも違いがあるのでその選手にあったアプローチを探ることが我々のすべきことかなと思っています。」(松本さん)お二方が口を揃えておっしゃったのは、「選手の結果を上げるための特定のトレーニング方法などはない」ということ。指導者やトレーナーの指導だけでなく、選手のセルフケアが整った上で初めて選手にあったアプローチを選択していく必要があると感じました。指導者に伝えたい、選手のコンディショニングへのアプローチ「最近はテクノロジーを活用したデータ収集も盛んになってきています。GPSを付けて、どれだけのスピードで何km走れたとか筋肉量や体脂肪量なども監督さんにフィードバックしています。なので、指導者の方の視点とトレーナーの視点を擦り合わせることが大切です。いろいろなトレーナーの方がいて、自らで指導者の方へアクションを起こすのが難しいという方もいますが、そこが一番問題かなと思っています。」(松本さん)「松本さんのご意見に同感ですね。選手も指導者とコミュニケーションを取るのにハードルが高いと思っている場合があります。指導者の方から選手に、フィジカルの面でのコミュニケーションも取ってもらいたいですね。しかし全てを指導者の方が把握する必要も、ないと思っています。選手のフィジカルやコンディショニングに関しての興味を持って欲しいという思いもあるので、うまくバランスをとっていただきたいです。」(染谷さん)フィジカルやコンディショニング面での選手とのコミュニケーションには、頭を悩ませる指導者の方も少なくないはず。トレーナーをチームに迎え入れることが困難なチームでは、定期的にトレーナーが出向いて指導を行っている場合もあるよう。しかし、日々選手たちのそばにいる指導者の方々にも興味を持ってもらいたいとお二方は訴えます。「指導者の方々は選手とより近い距離にいると思いますし、トレーナーをうまく使って欲しいと思います。選手自身も受け身になるのではなく、自分の体に興味を持って、コミュニケーションが取れる相手に積極的にコミュニケーションを取れる知識は蓄えておくべきなのかもしれません。」(染谷さん)指導者も選手もまずは『フィジカル・コンディショニング』に興味を持ち、知識を得ることが選手の怪我を減らす第一歩になるのではないでしょうか。日本の道筋 "Japan's Way" を徹底議論から読み解く第一章 『フットボールカルチャーの創造』第二章『望まれる選手像とは』第三章『プレービジョン』第四章『将来に向けた日本のユース育成』第五章『フィジカルフィットネスの未来』(本記事)第六章『将来のサッカーコーチとは?』第七章『フットボール・ファミリーの拡大』