活躍する人材に共通する人間力とは...家庭の食文化を支える日本を代表する企業、紀文食品の社是は『感謝即実行』。自身の座右の名にも掲げる紀文食品 代表取締役社長 堤裕氏の経験談から、社会で活躍できる人材に共通する特徴について伺います。また日本代表シュミットダニエル選手をはじめプロサッカー選手を多く輩出してきたGK指導者 澤村公康氏にはどのように感じるのか。澤村氏の視点で、堤氏の考えに迫ります。今回はこの対談企画より、一部抜粋してお届けします。感謝即実行紀文食品の社是は「感謝即実行」ですが、これは創業者が掲げた理念です。元々は、文字通り人から良い事をしてもらったらすぐに感謝の気持ちを言葉にして相手に伝えよう、という意味ですが、堤社長は40年以上の企業人生の中で、自分の事だけを考えてしまい回りの人のフォローに気づけなかった自分を省みて、常に感謝できるような人間でありたい、という意味でもこの言葉を捉えて大切にしています。また、スポーツの世界においても、一流の選手は感謝の気持ちをすぐに行動に移せる傾向があるようです。「先日練習を視察に行った際、シュミットダニエルに会ったのですが、彼からは当日にお礼のメッセージが届きました。こういう人が日本代表に選ばれたり、海外で一流の選手として活躍できるんだな、と感じたエピソードでした。」(澤村さん)例えば、現日本代表GKのシュミット・ダニエルは澤村さんが練習に視察に行った際、当日中にはお礼のメッセージを送ります。「感謝即行動」は業界に関わらず、優れた成果を上げる人に共通した大切な素質といえるでしょう。写真:2021年5月に行ったシュミットダニエル選手との代表活動前 自主トレーニング変えてはいけないものと変えなければいけないものを見誤らない紀文食品では、糖質0g麺や減塩製品など社会のニーズに対応した商品も数々発売しています。社会から望まれているものを作れるよう、柔軟な変化をする一方で、安全や安心といった食品メーカーとして変えてはいけないものを守り続けています。サッカー業界にも変化の波は押し寄せており、ルールやボールの変化に伴い、ゴールキーパーに求められるものが変わってきていますが、選手、指導者はニーズを正確にキャッチして鍛錬していく事が求められています。「短期間で成果が出ない時も、一定期間我慢して人を育てる事を大切にしたい」と堤社長。共生の精神を大切にし、メンバー同士で切磋琢磨しながら成長していく社風を強く感じました。一方、サッカー界では課題もあるようです。「近年、監督や選手は試合で結果が出せないとすぐに交代させられてしまう傾向があります。心理的安全性を担保し、選手をじっくりと育てていく環境が整えられれば良いのですが、難しい問題です。」(澤村さん)一方、サッカー界においては結果が出ないとすぐに交代という傾向が強くなってきており、心理的安全性の担保が難しくなってきている側面もあるようです。改善の必要がある時の声掛けは?「自分が何を期待されているか理解できていないと、結果は出ません。まず役割を明確に伝え、実際の行動とズレが生じていたら伝えるようにしています。」(堤社長)「自分の中で伝えたい事をいくつか準備しますが、実際に伝えるかは選手の様子を見て決めます。」(澤村さん)お二人とも、相手の状況を見ながらどこまで踏み込んだ話をするか選択されているようです。時にはあえて失敗する機会を提供する事も大切にしています。「選手の判断をコーチが奪う事はしたくない。”失点から学ぶ勇気”という言葉からも分かるように、選手の判断をコーチが奪う事はしたくないと思っています。」(澤村さん)「失敗を経験しないと人は成長しません。子育てと一緒ですね。いつまで経っても手取り足取りサポートしていると、いつまで経っても何もできるようにならない。失敗できる環境の提供も重要です。」(堤社長)驕ると自信を持つの違いは何か?「自分の行動が周囲から期待されている事と合致していれば自信に繋がり、ズレが生まれた時に驕りになってしまう」(堤社長)また、これらの違いは自己認識する事が難しく、人に指摘されて初めて気づく事ができるのかもしれないという話に発展しました。1時間に渡る対談で、堤社長のメッセージの根底には一貫した哲学が感じられました。人として、社会人として、社長として大切にした事をあらゆる角度から言葉にして頂き、理解がぐっと深まった気がします。