身体に向き合う機会の多い女性アスリートの皆さんが、正しい知識のもとに栄養を理解し、実践できるようになることで自信を持って選手キャリアを歩んでいけるようになること、そして指導者の方々が自信を持って選手を支えることができるようになることを目指して。今回は管理栄養士・公認スポーツ栄養士としてアスリートのコンディショニングを栄養学から支える上木明子先生、ゲストに 三菱重工浦和レッズレディース 福田史織選手、長嶋玲奈選手をお迎えして開催したセミナーの様子を一部抜粋してお届け。現役WEリーガーたちのコンディショニング方法を伺いながら、栄養学に基づいたコンディショニングの知識を学びます。食事バランスを気にする前に知っておいてほしいこと「このグラフから分かる通り、エネルギーの消費には優先順位があります。生きるためのエネルギー、日常生活で使うエネルギー、運動で使うエネルギーの順に優先度が高いことがわかりますね。摂取する食事量が減ってしまうと、真ん中のグラフのようになり、さらにその状態を続けているうと右端のグラフになります。右端になったときに、エネルギーの優先順位が入れ替わっていると思いますが、生きるためのエネルギーよりも運動で使うエネルギーが優先されてしまうのです。つまり食事量を減らしたままにしていると運動は何となくできるけど、ホルモンバランスの乱れや日中の眠気などに繋がります。」この説明から分かる通り、摂取するエネルギー量は運動時のみならず健康体で生活する上でも欠かせないものということですね。過度な食事制限のダイエットなども、こういった危険性をはらんでいます。「これを理解した上で、初めて栄養士がよく言う『食事のバランス』が大切になってきます。この写真の中で、主食(炭水化物)と言われるものがエネルギー源になるんです。ご飯や麺、パンなどの主食は必ず摂取するようにしてほしいです。その次に必要なのが、主菜(タンパク質)。主食と主菜はいかなる時にも必ずセットで食べることは覚えておいてください。パンだけ、ではなくからなずハムや卵を乗せる、おにぎりも鮭が入っているものを選ぶなど。意識するだけで大きな差が出るので大切です。特にサッカーなどの強度が高く、長時間のエネルギー消費が見込まれるスポーツをする場合には、なおさら炭水化物が肝になります。」「三食の食事だけではなかなな満たされた栄養素を補給できないので、補食も必要になってきます。すぐにエネルギーに変わる糖質を多く含んだものを摂取するようにしてください。人によっては、練習の前や後などでも向き不向きがあるので、自分のスタイルに合わせて摂るようにしていただければいいかなと思います。NGのゾーンにナッツを書いていますが、ナッツはみなさんダイエットなどでよく摂取される方が多いと思います。ナッツは、すぐにエネルギー源になりにくく、練習前のアスリートへの補食にはあまり向いていません。脂は食事から摂るようにしましょう。」女子サッカー選手に多い体調の悩みと改善方法「女子アスリート、特にサッカー選手に多いのが以下のような症状に悩んでいる方です。これらの症状の原因は、エネルギー不足が主に挙げられます。ここまでで述べていたように、三食しっかりと食事をとることと、補いきれない栄養を補食から摂ることはこういった症状の改善や予防にも大いに役立ちます。特に、女性に起こりやすい運動時の貧血を予防するには、しっかりと鉄分を補給することです。」「鉄分も普段から意識されているかと思いますが、女性アスリートの場合は1日に15~18mg摂っても良いと言われています。これは相当な量なので、なかなか1日で摂るのには難しい量です。いくら魚やお肉を食べてもまかなえる量ではないので、鉄入りの飲むヨーグルトや低脂肪乳などでも鉄が入っているものがあるので、食事以外の部分でこまめに補給するのも意識してみてください。」休息や飲み物も、全ては "食事がしっかりと摂れているか"ここからは、選手から上木先生への質問がいくつか挙げられました。「朝9:00からの練習の時は、帰宅するのが昼の2:00ごろ。朝早く起きているので、そこから昼寝をします。長井時間の昼寝がよくないことはわかっているのですが、起きれないくらい眠い時は平気で2時間ほど昼寝をしてしまいます。それはあまりよくないことですか?」(長嶋選手)「お昼寝の時間は15~30分ほどが一番いいのかなとは思いますが、サッカー選手は昼寝もしっかりとられている方が多い印象です。夜寝れるのであれば、その昼寝の時間でも問題ないと思います。昼寝しすぎて夜寝れなくなるのがホルモンバランスの乱れや、十分な食事時間を確保できないなどの弊害につながります。私は栄養士なので、食事の時間をしっかりと摂ることができるのであれば、お昼寝が多少長くとも大丈夫ですと言っておきますね。休息の取り方にも個人差があるので、ご自身の身体と向き合っていただければと思います。」「特に夏の時期は、夜ごはんの時によく牛乳を飲んでしまいます。1日に飲んでいい牛乳の量は、コップ何杯分などありますか?」(福田選手)「特に定められた数値はないのですが、食事が食べられなくなるくらい飲むのはもちろんよくないので、しっかり食べた上で牛乳を飲むようにするといいと思います。」強度の高い運動を頻発的に行う女性アスリートにとって、自らの体と向き合い、健康体で高いパフォーマンスを発揮するために知っておきたい栄養コンディショニング。今回のセミナーでは、明日から活かすことのできる知識を学ぶ時間となりました。体に良い脂質って何?適切な摂取方法は?現役Jリーガー、専門家と考える『エネルギー源になる正しい脂質』指導現場から日常に役立つ思考まで『心理学の視点で捉えるFOOTBALL』感情に振り回されない人が実践する「権内」と「権外」の見極め方 成功と挫折。新たに芽生えた ”サッカーとの向き合い方”自信の持てなかった私を変えてくれた、指導者との出会い