「今回のGK合宿で初めて会った選手も多く、トレーニングやトレーニング外で4日間共にして、自分の現在位置や今後自分自身がさらにレベルアップしていくための材料が明確になりました。」口々にこう語った選手たちが参加したのは、GK合宿『ゴーリースキームキャンプ』。ロアッソ熊本、サンフレッチェ広島などJリーグのトップチームでGKコーチを歴任され現在はご自身が立ち上げた「ゴーリースキーム」で代表を務める澤村公康さんが親交の深いJリーガー 圍謙太朗選手に声をかけ、圍選手を中心に集まった選手たちと指導者で実現しました。所属チームの枠を超え、『日本をGK大国に』という熱い想いと共に集まった6名の選手たちと澤村さん、アシスタントコーチ、メディカルスタッフを含めた体制で行われた3泊4日のトレーニング。最終日には約50名の小中学生を対象にしたGKクリニックも開催され、子どもたちはプロ選手たちの『本気と本物』を肌で感じながら選手と一緒に汗を流しました。今回は、参加選手の声も交えながら3日間のキャンプを振り返ります。和やかさの中にも、"覚悟" と "感謝" を持ったトレーニング1日目は、風が強く吹く昼下がりにスタート。「今回のキャンプが開催できるのは、ここに集まってくれた選手をはじめコーチングスタッフ、運営スタッフ、会場関係者の方々、スポンサードしてくださった企業様、数えきれないくらい多くの方のおかげ。プロ選手には耳が痛い話かもしれないけれど、まずここに立てて練習できていることに感謝しながら一緒に成長に繋がるいい時間にしよう。最終日には子どもたちとボールを蹴る時間もあるのでプロ選手が本気で取り組む姿勢をプレーで見せて夢を与える時間にしたい。今回のW杯では特にGKの活躍が各国で目立ったと共に、まだまだGKというポジションで世界との差を感じた。日本のGKの地位をこれからどんどん上げていかないといけないという思いが強くなったので、ここにいる選手たちと今回のような機会を少しずつ増やしていきたい。」周りへの感謝とプロとしての自覚。澤村さんからの挨拶に、選手たちも気合に満ちた表情で三日間がスタートしました。トレーニング冒頭は、アップも兼ねゲーム性を取り入れたトレーニングが中心。選手たちも各日のスタートを、笑顔交えたコミュニケーションが多く和やかな雰囲気で迎えます。トレーニングメニューはテンポよく進み、少しずつ選手たちそれぞれのコミュニケーションやポジティブな声も増えていきました。三日間通して午前・午後二回に分けられた毎回約一時間半のトレーニングでは、ボールを使わないメニューも多く、今回のキャンプにメディカルスタッフとして帯同している染谷先生(アシカラ改善院 院長)による正しい身体操作のレクチャーも交えたアップは三日間のトレーニング冒頭で取り入れられました。練習開始直後の笑顔溢れる和気藹々(あいあい)とした雰囲気からキャッチングやフロントダイビングなどテクニカルなメニューになると一変、選手たちの目の色が変わると同時にその場の空気も引き締まったものに。「いやー、今の開始姿勢良かったよ!」「グレート!明日シーズン始まってもいけるんじゃない?(笑)」「今のは、アンダーハンドキャッチの方が楽じゃないか?」澤村さんの選手に寄り添った的確なコーチングと共に、選手間でもアドバイスや意見を求めるシーンも多く見受けられます。一つずつのプレーを大切に意図を持って取り組む選手たちの熱のこもった姿勢に、冬本番の冷え込む寒さも気にならないほどの熱気をピッチから感じ取ることができました。「三日間でのトレーニングの狙いは共通して、"GKとしての参加選手の成長" 。選手が六名もいたら六通りの捉え方があるし個性もある。彼らが持つそれぞれの良さを出すのが僕の役目です。メニューも事前に作り込むのではなく、その時の選手のアップやコンディション、ピッチでの雰囲気を見て決めています。アマチュアだから、プロだからという考えではなく、どのカテゴリーでも今目の前にいる選手に全力で向き合うことだけに集中しています。」この澤村さんの言葉通り、参加選手も昔から澤村さんに教わっている選手、今回のキャンプで初めて指導を受けた選手関わらずそれぞれが一瞬一瞬を大切にトレーニングを行っていました。各々の価値をさらに高め、再会を。この三日間のキャンプを通して、参加選手からも "変化" と "成長" の二文字が多く発せられていました。ここで参加されました選手からの言葉を一部掲載します。佐藤久弥選手(東京ヴェルディ)「今回澤村さんの指導を初めて受けました。他の選手もほとんどが初めてお会いする方々で、最初はなかなか積極的なコミュニケーションが取れるか少し心配していたんですが、澤村さんはじめ他の選手の皆さんとはスムーズにトレーニングできたと思います。今回のキャンプに参加するにあたり、今年プロ2年目のシーズンが終わりまだまだ新たなものを吸収していかなければいけないという思いでした。実際にトレーニングを受けて、澤村さんのキックの質や選手・状況に合わせてボールの回転数が変わるところは驚きました。オフシーズンとはいえ、実践を常に意識したトレーニングを積めることができたのは自分自身日頃の練習にも今後大きく生きてくるところだと思います。気配りや目配りに長けた指導者の方と選手たちと共に過ごせた時間はとても大きな財産になりました。」寺沢優太選手(南葛SC)「澤村さんのトレーニングは過去何度か受けさせていただく機会がありましたが、今回のように少人数でみっちり指導していただける環境はかなり貴重でした。僕はドイツで四年間プレーしていたので、GKというポジションに対しての捉え方に日本と大きな差があることを肌で感じてきました。GKというポジションに対しての評価や華やかさは、もっと日本でも増えていくべきだと感じています。『日本をGK大国に』という思いを持って本気で取り組み、我々選手が子どもたちや世間に対してGKの楽しさや素晴らしさを発信していこうと澤村さんはもちろん、今回参加した選手とも話せました。そういった仲間と出会えたこと、技術面での課題や成長できる材料が自分にはまだまだあるということが今回のキャンプで得たものだと思います。」高島康四郎選手(FC神楽しまね)「澤さんとカコさん(圍選手)とは、今回のキャンプとクリニックに関して一年前から実施したいねと話していました。このような形で実現したのには、指導者の方や選手はもちろん様々な方のご協力あってのことなので感謝を忘れずに過ごさせていただきました。久弥(佐藤久弥選手)や茂木(茂木秀選手)など同い年の選手と出会えたのも、新たな刺激をもらえたので大きかったです。今回のキャンプは、最終日のクリニックまでが一つのものだと思っています。クリニックでの子どもたちの笑顔や喜びがこのプロジェクトの価値。このようなオフシーズンの取り組みから、来季はシーズンを通して成果で見せていけたらなと思います。来年は、選手それぞれシーズンで価値を高めてまた集まりたいですね。」※参加選手の所属先は、2022年シーズン終了時のものを記載しています。「技術はもちろん、人間的にも素晴らしい選手たちが集まってくれた」「今回のプロジェクトは、親交の深い圍謙太朗に協力していただき6名の現役選手が参加してくれました。今回初めて一緒にトレーニングする選手もいましたが、彼らに共通していたのは "吸収力の高さ" と "ハングリー精神" 。オフシーズンにもかかわらず集中して強度の保ったトレーニングを行えたのは、彼らが僕やコーチングスタッフ、他の選手から一つでも多くのことを学ぼうとする姿勢と新たなものを吸収するスピードの速さあってこそだったと思います。GKの指導だけではなく染谷先生のコンディショニングケア、トレーニングの間の時間にはリモートで心理カウンセラーの片田智也先生による心理面でのレクチャーも行っていただきました。こういったサッカー以外のプロフェッショナルの方々のご協力もあり、選手には大変実りのある時間になったのではないでしょうか。今回は第一回目としてこのような形で開催しましたが、これを来年再来年と継続してオフシーズンの恒例にできたらと思います。関東開催だけでなく、他の地域での開催も面白そうですね。」澤村さんは3日間のトレーニングを振り返り、このように表現してくださいました。Footballcoach編集部も、この三日間の合宿に帯同させていただき澤村さんはじめプロ選手の方々の "本気でサッカーを楽しむ姿勢" と "少しでも指導者や他の選手から多くのものを得ようとする向上心" に心打たれました。チームや年齢、カテゴリーが違えど "オンリーワンでスペシャルなポジションGK" として違いや周囲へのリスペクトを大切にしながら、常に夢を与える存在としての覚悟を持った選手たちをこれからも微力ながら応援していきたいと強く感じました。