2023シーズン、ヴィッセル神戸のJ1初優勝に大きく貢献したDF 酒井高徳選手。VfBシュトゥットガルト、ハンブルガーSVなど名だたるブンデスリーガクラブでも活躍した彼が語るのは『ドイツでの日々が変えた、守備意識』。VfBシュトゥットガルトのスカウトや育成年代、トップチーム指導者を歴任し今回のモデレーターを務める河岸貴氏の著書『BoS理論』を軸に、酒井選手が『守備意識の改革が起こった』と語るドイツ時代の経験や自身の理論、ヴィッセル神戸が確立すべきスタイルなどを語り尽くした。本記事は Footballcoach公式Youtubeにて公開中の特別動画より、一部抜粋してお届けする。▼特別動画はこちらから%3Ciframe%20width%3D%221920%22%20height%3D%221080%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2F54V6DepI8lY%3Fsi%3DqqGLQxQGSnnbZ8It%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%3B%20web-share%22%20allowfullscreen%3D%22%22%3E%3C%2Fiframe%3E21歳で渡独し、180度変わった『酒井高徳の守備概念』「ただ守るだけの守備ではなく攻撃を考え、『より効率的にゴールを奪うための守備とは何か』を身体や言語で表現しているのをドイツに行って感じた。その気づきは21歳でドイツに渡った自分からしたら、BoS理論はまさに革命でしかなかった。」BoS理論、それは『ボールを中心に考え、ゴールを奪う方法論』つまり『ボールにオリエンテーションするプレー』とされている。酒井選手は、日本サッカーにはまだ足りないとされるこの考え方を、ドイツで肌で感じたという。Jリーグと比較して、「欧州のサッカーはテンポが早い」と評されることも多いが、そのテンポの違いを生み出しているのが『ボールにオリエンテーションされたシームレスな攻守の移り変わり』なのだろう。これには河岸氏も「ゴールから逆算した、ボール非保持のプレーは特にこの本でも記した部分」とうなづく。『神戸のやりたいサッカー』が華開いた瞬間そんなドイツで得た知見を、Jリーグ復帰とともに加入したヴィッセル神戸では、どのようにチームに落とし込んでいるのだろうか。「神戸には経験の多い、言わなくても体現できるベテラン選手も多くいる。そんな中、もちろん経験のあまり多くない若い選手たちもいるので、率先して僕たちが彼らに口で伝えて、プレーで体現している。僕や他の選手、ベテラン選手も含めて、ずっと神戸で言い続けてきたものが『神戸のやりたいサッカー』としてみんなが共通認識を持っている状態。それが表れた結果が昨季の優勝のキーポイントだと思っている。」「神戸のスタイルとして、ボールにオリエンテーションした守備はかなりスムーズになっていると感じている。常にそれぞれの選手が連動して、『(プレッシングに)行くタイミング行かないタイミング』を判断できる。これこそが、今の神戸のバロメーター。」この言葉からも分かる通り、昨季のJリーグを制した神戸のサッカーは、ボールに圧縮された守備から攻撃への切り替えがシームレスだった印象を持つ方も多いのではないだろうか。"スペースではなく、ボールにオリエンテーションする守備意識の共有と体現"これこそが『ヴィッセル神戸のスタイル』として成熟期に突入している。「リベリよりも、ロッベンの方がやりやすかった」「プレッシングに行く時、行かない時の判断はそうは言っても非常に難しい部分。ボール中心の守り方として、SBとしての立ち位置や1対1の守り方の部分で、特に意識していることは?」河岸氏のこの問いかけで、酒井選手が考える『SBとしての理想的なプレー』が紐解かれる。「大前提として、『1対1を抜かれない』という意識があってこそ、チームとしての連動したプレッシング守備があると思う。ただ、自分のところで奪えなくても結果的に味方が奪ってくれるなら『絶対に自分のところを抜かれてはいけない』というわけでもない。どこに味方がいるかを把握していれば、相手がミスするくらいの勢いと距離感で味方側に誘導するような守備もできるので。だからこれは、全員が連動してボールにオリエンテーションできる陣形が出来ているかが重要。」「特にSBやSHのポジションでは、単に片方のサイドのパスコース切り続けるのではなく相手が自由に蹴ることができるのか否かを考えないといけない。リベリの場合、彼はシュートもドリブルもパスも出来て体も強いし、速い。『どうすれば抑えられるんだ』って正直思ったけど、リベリに自由にプレーさせないためにはどうするかを考えた結果、行き着いた答えが、ボールを入れさせないこと。だから、『裏を取られないけどボールが入った瞬間に後ろを向くような距離感』は徹底した。しかしそれでも、タイミング的に寄せきれなかった瞬間を突いて呆気なくコケにしてくるから、本当に凄いなと思った。」さらにこう続ける。「リベリのような選手と対峙して、正直お手上げ状態と思うことも多かったけど、試合を通してこういった相手への守り方がわかった。だからこそ、リベリよりもロッベンの方がやりやすかった印象もある。でも、どちらもやっぱり凄かったし強烈だった。日本にいた時は組織的にスペースを守ればやられない感覚はあったけど、ドイツに来て『一人で打開できる選手がいる時にそれは通用しない』と彼らのような選手と対峙してわかった。そこから、『1対1の守備』、『組織として近距離を保つ重要性』を意識するようになった。」21歳でドイツに渡り気づいた、『ボールにオリエンテーションする守備』『1対1での組織的な守り方』。それらを日本で、ヴィッセル神戸で発信し、体現する酒井高徳の活躍にこれからも目が離せない。▼本記事で登場した河岸貴氏の著書『BoS理論』はこちらからhttps://amzn.to/3Ib14fV「高校サッカー決勝を見て感じたのは...」酒井高徳が語る、『育成年代の現在と未来』酒井高徳が日々のこだわりから導き出した、世界基準のマインドセット【前編】自らを見つめ直し、新たな習慣を構築。『世界で通用する選手』への要素が詰まったキャンプに密着【後編】「このサイクルを回していければ飛躍できる」キャンプで得た知識と経験を携え、来季へ。「深い理解を持つことで能力が飛躍する」脳の神経可塑性に着目したトレーニング ”Brain Activity” の可能性自分自身を信じる力が切り拓いた、世界トップレベルでの指導者の道監督が変わってもサッカースタイルの変わらない育成現場が、勝者のメンタリティを育む