「高校サッカーは毎年、結構な試合数を見ている。もちろん今年度(2023年)の青森山田vs近江の試合も。そんな中で、近年の高校サッカーに抱いている印象としては...」河岸貴氏の著書『BoS理論』の内容や自身の経験を踏まえ、第一線で活躍する酒井高徳選手が抱く『高校サッカーへの印象』や『育成年代のこれから』を伺った。本記事は Footballcoach公式Youtubeにて公開中の特別動画より、一部抜粋してお届けする。▼特別動画はこちらから%3Ciframe%20width%3D%221920%22%20height%3D%221080%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2FpwJ1biDo4EM%3Fsi%3Dte_b9O-4M5raDRHh%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%3B%20web-share%22%20allowfullscreen%3D%22%22%3E%3C%2Fiframe%3E「足先だけのチームが勝ちにくくなっている」理由「近年の高校サッカーの印象的には、よりフィジカル要素が強いチームが上までいっていると感じる。それを示しているのが青森山田の強さ。その中で今回の大会の特に準決勝くらいから思ったのは、カウンターやロングボールなど、向かう姿勢は様々だけど『ゴールに直線的に向かっていく姿勢やそのスピード感があるチーム』が残っているということ。」「決して批判ではないが、綺麗なパス回しや球扱いができることが『サッカーで観る人を楽しませる』ことに繋がるとは思わない。パスを回すことやポゼッションが悪いとは全く思っていなくて、『常に身体や目線がゴールに向かっているか』が僕の中では一番重要。」プロサッカー選手としてブンデスリーガや日本代表でのW杯出場など、幾多のトップレベルを経験したからこそ感じた『サッカーで観る人を楽しませる』の本質や、『直線的にゴールを目指すことが大前提』という考え。河岸氏も「青森山田の戦い方はゴールに直線的で、非常にソリッドなチームだった」と評した。育成年代に植え付けるべき『勝者のメンタリティ』「シュトゥットガルトの育成年代で一番大事にされているのが、『勝者のメンタリティ』。ヨシュアキミッヒのように、シュトゥットガルトでプロになれなくても他のクラブでプロになれる。それができるのは育成年代のうちから、勝利へのこだわりを植え付けられたから。今回の決勝を見ても、近年の青森山田にはまさに『勝者のメンタリティが存在している』と言える。」河岸氏から例に挙がったヨシュア キミッヒをはじめ、名だたる選手を育成組織から輩出するシュトゥットガルト。日本サッカーの育成年代においても、非常に重要なメンタリティであると語る。「立ち上がりから両校ともコンパクトな試合運びで、非常に拮抗した、ハイレベルな決勝戦だった。パスサッカーしているのにどんどんゴールに向かって人が湧き出てくるというサッカーは、今大会 近江が快進撃を続けた一つの要因だと思う。みんな身体の向きや走る方向がゴールに向かっている。今回の青森山田と近江の決勝戦のようにゴールに直結した動きや守備を見ていると、ここ数年見た中で一番90分が早く感じる決勝戦だった。」ゴールや攻撃に直結した守備、BoS理論の観点からこう振り返った酒井選手。両校の健闘を讃えるとともに、近年の高校サッカーの象徴を捉えていた。「選手権で勝つためだけのサッカーはしてほしくない」特別動画の終盤では、これまでの高校サッカーと近年の高校サッカーを比較しながら『育成年代で必要なもの』に触れられた。「昔の高校サッカーは、各年代を代表するスーパースターが存在して彼らの活躍が目立つサッカーが主流だった。でも今は平均以上のプレーができる選手達が多く、より組織としての戦い方ができるようになったと思う。育成年代のうちに、"サッカーを理解してサッカーをする" という部分は昔に比べて伸びている部分なのかなと。こういった部分は、育成年代でもさらに伸ばしていかなければならない。」「だからこそ、選手達には早い段階で海外を目指してほしい。選手権がゴールではないので。人それぞれに目指す目標は違うかもしれないけど、せっかくここまでサッカーに捧げてきたのなら、次に繋げていってほしい。選手権で勝つためだけのサッカーは、選手にも指導者にもしてほしくない。勝つためだけど、選手の未来をしっかりと考えた上での勝つ方法を指導者には選手に教えてほしいと思う。」21歳でドイツに渡り、そこからキャリアの功績を築いていった酒井選手だからこそ、育成年代のうちから勝負にこだわり、未来を見据えたサッカーを学ぶ重要性を誰よりも理解しているのだろう。力強い口調からは今後の高校サッカーや日本サッカー、教育における期待感を感じ取ることができた。▼本記事で登場した河岸貴氏の著書『BoS理論』はこちらからhttps://amzn.to/3Ib14fV酒井高徳が日々のこだわりから導き出した、世界基準のマインドセット【前編】自らを見つめ直し、新たな習慣を構築。『世界で通用する選手』への要素が詰まったキャンプに密着【後編】「このサイクルを回していければ飛躍できる」キャンプで得た知識と経験を携え、来季へ。「深い理解を持つことで能力が飛躍する」脳の神経可塑性に着目したトレーニング ”Brain Activity” の可能性自分自身を信じる力が切り拓いた、世界トップレベルでの指導者の道監督が変わってもサッカースタイルの変わらない育成現場が、勝者のメンタリティを育む