「プロ選手として、世界に通用する選手になるために必要なものはサッカーのスキルだけではない。ピッチで最大限のパフォーマンスを発揮するための準備として日々の食生活や睡眠、体のコンディショニング、語学などあらゆる取り組みを最大限行わないといけない。今回のキャンプでは、その重要性を改めて認識してほしい。」元シュツットガルト指導者の河岸貴さん、2023シーズン J2 FC町田ゼルビアでJ2優勝、J1昇格の立役者として活躍した鈴木準弥選手が中心となって集めたのは、親交のあるJリーガーや海外チームに所属する13名の選手たち。多方面の専門家たちも参加し、充実の体制で2泊3日のキャンプを鈴木選手の地元でもある静岡県沼津市で開催した。Footballcoachもこの取り組みに全面サポートさせていただき、さまざまなサプライヤー様のご協力をいただきながら実施した3日間の様子を、レポートとして2記事にわたって公開していく。【前編】自らを見つめ直し、新たな習慣を構築。『世界で通用する選手』への要素が詰まったキャンプに密着【後編】「このサイクルを回していければ飛躍できる」キャンプで得た知識と経験を携え、来季へ。キーワードは、"自己研磨"「世界で通用する選手を何人も見てきたが、彼らに共通する部分は日々の徹底した取り組み。ピッチ外での準備があって初めて、ピッチ内で最大限のパフォーマンスが出せる。正直、今季のみんなのパフォーマンスには満足していない。つまり、今オフは大きく取り組み方や準備を見直していく必要がある。今一度自分自身を見つめ直し、有意義な3日間にしてほしい。」そう語ったのは、河岸貴さん。河岸さんはブンデスリーガの名門VfBシュツットガルトに育成年代やトップチーム指導者、スカウトとして10年在籍。現在はKIOT CONNECTIONSとして、マネジメントやエージェントという立場から若手選手を中心に、世界に通用する選手の育成に携わっている。自己研磨をキーワードにそれぞれの選手たちが日々の取り組みをもう一度見つめ直し、最大限のパフォーマンスを出し続けることができるよう、トレーニングだけではなく、さまざまなコンテンツが用意された。「身体は資本」正しい知識のもと、怪我や病気のリスクを徹底的に削ぎ落とす1日目に予定されていたのは、脂質栄養学とメディカルコンディショニングの身体に関するそれぞれの専門家による講義。身体に適切なものを取り入れ、身体の正しい動かし方を身につける。それぞれ体内と体外のアプローチを学び、即実践することでピッチ内でのパフォーマンスはもちろん、日々の健康維持にも大きな要素が含まれている。脂質栄養学の講義を担当したのは、オイルの専門家 地曳直子先生。アスリートの栄養学講習なども行う地曳先生による、『サッカー選手に必要な脂質の正しい知識』を網羅した内容に、選手も真剣な表情で臨んだ。「地曳先生のお話は以前も伺ったことがあったが、1日 2日で一気に身体が改善されていくものではないと思う。毎食時の取り組み、毎日の取り組み、これを年間通して行えるかが重要。今回の講義でまた重要性を再認識できたので、今夜の食事からより一層意識していきたい。」参加した選手からもこう伺えるように、地曳先生の講義を普段から実践している選手も初めて聞いた選手も体内に何を、どのような形で取り込んでいけばいいのかを理解する時間になった。次の講義は『怪我のリスクを格段に減らせる正しい身体操作』について。患者さんの99%がフットボーラーである、アシカラ改善院 院長 染谷学さんが登壇した。「立ち方、歩き方を見るだけですでに怪我のリスクを孕んでいる体の動かし方をする選手が何人かいる。今日お伝えすることを理解してもらい、日々の立ち方や歩き方から改善することでプレー時の怪我のリスクを格段に減らすことができる。」その言葉通り、まずは選手やスタッフも含めての起立姿勢をチェック。日本人選手に多いと言われる、前十字靭帯の怪我が起こる原因を取り除くことも、正しい起立姿勢に紐づくのだそう。またスポンジでできた板を使用しての足形測定のデモンストレーションも行われ、普段の起立姿勢が足底にどのようなバランスで圧力をかけているのかも学び、選手たちにはそれぞれの身体操作を考え直すきっかけになった。2日目の初練習は、Brain Activityを用い "連携面" と "強度" を重視1日目は、移動と2つの講義で終えた今回のキャンプ。夜は、鈴木選手の紹介で『海鮮や いちょうの木』さまにご協力いただき、食卓を囲んだ。ここでは、選手・スタッフの交流がメイン。それぞれの所属チームでの取り組みや、活動内容、昨季を振り返える話で盛り上がり、親睦を深め合った。これで初日の行程は全て終了。いよいよ2日目には、このメンバーでは初となるトレーニングを実施。初めのメニューとして取り入れられたのが、Brain Activityを用いたメニュー。Brain Activityとは脳の神経可塑性によって運動パフォーマンスの更なる飛躍を促すもので、『認知・判断・実行』の速度を速めるものとしても注目されている。テニスボールを左右の手で交互に投げてキャッチする初歩的なものから初め、手を使いながら同時にパス交換、眼帯を装着しながらのパス交換など様々な要素を付け加えていく。同時にあらゆる部位を動かすことで、脳の神経回路が新たに構築され、いかなる状況でも的確で迅速な判断を行えるようにするトレーニングだ。このメニューで脳と初対面の選手らの関係性もほぐれてきたところで、スタッフとして帯同した矢野玲フィジカルコーチ(前SC相模原トップチーム フィジカルコーチ)の指導のもと、ウォーミングアップから本格的にスタート。ボールを使ったメニューでは、河岸さんの著書である『BoS理論』(ボールを中心に考え、ゴールを奪う方法論)に沿った素早い守備から速攻に繋げていくプロセスを、ロンドやポゼッションゲームなどで養う。「奪ってすぐ攻撃に転換しろ!」「ボールをとって終わりのスポーツじゃないよ!」「ピッチの中で起きた問題は、コミュニケーションでしか解決できないよ!」メインで指導する河岸さんや、コーチ陣のパッションも溢れ、次第に選手たちの息も上がっていく。そんな今回のトレーニングの水分補給を3日間サポートしていただいたのは、酸素補給水 WOXさま と O.R.Sさま。心地よいほどの日差しが差し込み、時折鋭い冷気を感じる12月の運動時でも水分補給は欠かせない。それぞれ運動中の素早い水分補給を支えてくれ、手軽に運動時に必要な酸素やその他養分を補給できたことで、初トレーニングは怪我や離脱者なく無事に終えることができた。次の記事では、2日目午後から最終日となる3日目までの様子をお伝えしていく。【後編】「このサイクルを回していければ飛躍できる」キャンプで得た知識と経験を携え、来季へ。自分自身を信じる力が切り拓いた、世界トップレベルでの指導者の道監督が変わってもサッカースタイルの変わらない育成現場が、勝者のメンタリティを育む深い理解を持つことで能力が飛躍する。脳の神経可塑性に着目したトレーニング ”Brain Activity” の可能性正しい体の使い方を伝え、怪我で悩む選手たちを減らしたい。体に良い脂質って何?適切な摂取方法は?現役Jリーガー、専門家と考える『エネルギー源になる正しい脂質』