前編では、MCO(マルチクラブオーナーシップ)という仕組みの裏側にある思想と覚悟を掘り下げた。後編では視点をさらに現場へと移し、「欧州プロサッカークラブ合同トライアウト」という場が、選手に何を問い、クラブ側が何を見極めようとしているのかを明らかにしていく。合否の先にあるのは、キャリアの選別ではなく、“向き合い方”そのものだった。MCO(マルチクラブオーナーシップ)一つの企業・資本が、複数のサッカークラブを保有・経営する仕組み。欧州ではすでに一般的なモデルであり、選手育成・移籍・スカウティングを複数クラブ間で連動させることで、選手により多くの成長機会を提供する。近年ではシティ・フットボール・グループやレッドブル・グループがその代表例。トライアウトとは「試験」ではなく「問い」である青木:今回、開催された欧州プロサッカークラブ合同トライアウトを見ていて感じたんですけど、単なるセレクションというより、すごく「姿勢」を見られている場だなと。関口:そうですね。トライアウトって言うと、どうしても合否が注目されがちですけど、実際はそれだけじゃない。青木:選手側からすると、「ここでダメだったら終わり」って思ってしまいがちですよね。関口:でも、サッカーって何が起こるかわからない。どこにチャンスが転がっているかも分からない。だから諦めずにハードワークしてほしい、というのは最初に伝えています。青木:今日も視察クラブの一つであるスペインのコーチが、同じことを言っていましたね。関口:そうです。本当に1つ武器があれば、日本では評価されなくても、どこかで必ずチャンスは来る。その可能性がヨーロッパにはある、ということを選手に知ってほしい。青木:実際、今回もオリヴェイレンセだけじゃなく、ポルトガルの下部リーグやスペインのクラブも参加していましたし。関口:はい。クラブ側にとっては、移籍金がかからずに選手を獲得できるメリットがあります。もしそこで活躍すれば、次の移籍でクラブに還元される。なのでクラブもそうですが、所属していた大学なんかにも連帯貢献金として還元される仕組みです。青木:クラブにとっても、選手にとっても、現実的な場なんですね。関口:そうです。だからこそ、試験というより「問い」なんです。「窓口がない」ことが、最大の障壁になっている青木:僕が一番問題だと思っているのは、海外に行きたい選手は増えているのに、「じゃあどこに行けばいいのか分からない」っていう構造なんです。関口:それは本当にそうですね。青木:窓口がない。どうやってクラブにアクセスすればいいのか分からない。サッカーのワーキングホリデーみたいな制度があってもいいのにとは思いますね。関口:だから、こういう合同トライアウトやキャンプの場を作る意味があると思っています。青木:普通にコーディネート会社に頼むと、かなり費用がかかりますもんね。関口:そうです。でも我々は現地にクラブがある。電話一本で試合を組める。10日間いれば、4〜5試合は組めます。青木:それって、MCOだからこそできることですよね。関口:まさに。練習場が完成すれば、そこで日本の大学サッカー部と連携してキャンプを行うことだってできるんです。そこにスカウトがみにくる状態になったりしたら、双方にメリットがありますよね。青木:それが当たり前になれば、海外挑戦の景色は変わりそうですね。この仕組みは、日本サッカーの未来に何を残すのか青木:このMCOの取り組みが、日本サッカーにどんな「当たり前」を作ってほしいですか。関口:移籍金でクラブが回る、という考え方がもっと普通になってほしいですね。選手を育てて、活躍してもらって、次に送り出す。その循環です。青木:ヨーロッパでは、それが当たり前ですもんね。関口:はい。そして、日本人選手がヨーロッパに行くルートも、もっと気軽になってほしい。青木:一部リーグじゃなくても、プロの舞台はたくさんある。関口:そうなんです。国もクラブも無数にある。力があれば、必ずどこかが拾ってくれる。青木:最後に、海外を目指す若い選手に一言もらうとしたら?関口:「考える前に、行ってしまえ」ですね。吉野家に牛丼を食べに行くくらいの感覚で、ポルトガルに来ればいい。それくらいの行動力があって良いと思います(笑)青木:"考えるな、感じろ" ですね。関口:まさにそれです。行けば、分かります。