熊本県にある公立高校・大津高校は、これまで数多くのJリーガーや指導者を輩出してきた全国屈指の強豪校だ。その強さの背景には、30年以上にわたりチームを育て続けるテクニカルアドバイザー・平岡和徳氏の存在がある。植田直通(鹿島アントラーズ)、車屋紳太郎(川崎フロンターレ)、谷口彰悟(シントトロイデン/元日本代表)や井上敬太(柏レイソル トップチームGKコーチ)など、多くの教え子が選手・指導者として国内外で活躍している。今回は、平岡氏が語る「人づくり」の哲学と、その実践の裏側に迫るインタビューを一部抜粋してお届けする。選手個人の可能性を引き出す育成環境「1%を100%に変える」平岡流メソッド%3Ciframe%20width%3D%221920%22%20height%3D%221080%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2F5jTCdCuEIOs%3Fsi%3DHZKZxXOZdeHVJ4_R%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%3B%20web-share%22%20referrerpolicy%3D%22strict-origin-when-cross-origin%22%20allowfullscreen%3D%22%22%3E%3C%2Fiframe%3E「可能性が1%でも、それを100%信じてあげられる環境を作りたい。成功は約束できなくても、成長は必ず約束できる」と平岡氏は語る。この言葉は、単なる精神論ではなく、彼が築いてきた環境づくりの指針でもある。大津高校ではスカウトは行わず、入部希望者が自らの意志で門を叩く。そのため、選手たちは入部時から強い覚悟を持ち、入部後も自ら選んだ環境で成長し続ける意欲を保ちやすいのだそう。練習時間は100分と短いが、その濃度は極めて高い。「選手のストロングポイントを徹底的に磨き、牙は抜かない」。個性と闘争心を保地ながら、選手たちの弱点は、あえて日常生活や自主練習の中で克服させる。「選手が自ら考え行動する力を奪ってはいけない」。この方針が平岡氏をはじめとする大津高校サッカー部を支える全ての人が共有し、選手たちの自立と自己成長を後押ししているのだ。選手主体の文化を育て、チーム全体の強さに直結させる。練習の密度や質はもちろん、オフの時間の使い方までを含めた総合的な成長設計が、大津高校の競争力を支えている。指導者育成の黄金ループ|平岡イズムを継承するOBたち長年率いた大津高校サッカー部の監督を一度は退いたが、監督としてではなく総監督として平岡氏が大津高校に戻った理由の一つは、選手たちの未来を導く指導者を育てるためだ。2023年のインタビュー当時、熊本県内55チームのうち19チームが大津高校OBの監督を務めているという事実は、その成果を如実に物語る。現役時代にレギュラーでなかった井上敬太氏に選手たちのウォーミングアップを任せ、その経験が後に指導者への道を開いた例は、平岡氏の育成哲学を象徴している。「指導者としての入り口を信頼できる子供たちにどんどん提供する。これが私の趣味であり、大津高校のスタイルです。」と平岡氏は語る。このアプローチは、選手の未来を切り拓くだけでなく、地域全体のサッカー文化を活性化させる力も同時に併せ持っているのだ。教え子たちが指導者となり、新たな世代を育て、そのサイクルがさらに地域の競技レベルを引き上げる。大津高校は、単なる“強いチーム”ではなく、“人を育て、人を還す”場所となっている。「24時間をデザインする」|サッカー選手、一人の人としての自立を育む文化「選手の成長なくしてチームの成長なし。"君がこのチームを動かせ" という意味も込めて、主将以外は全員副主将というスタイルをとっています。」。大津高校サッカー部ではこの信念のもと、サッカーだけでなく、授業・食事・休養など生活全体を成長のために設計する「24時間をデザインする」という理念を実践している。学校内の授業での気づきが試合の集中力や判断力に直結することを選手に理解させ、生活習慣の見直しを徹底させるのもその一環だ。練習後のミーティングでは必要以上の言葉を避け、「ご苦労さん」とだけ声をかける。それは、選手の自主性を尊重し、課題や気づきを自分で整理する時間を与えるためだ。こうした一見小さな習慣が、選手に責任感と行動力を根付かせ、ピッチ内外での成長へとつながる。大津高校サッカー部では試合での勝利を目指すと同時に、人生の舞台で活躍できる人材を輩出することを使命としている。公立高校ながら高校サッカー界を牽引する強豪校には、『徹底した人づくり』を掲げる平岡イズムが確かに宿り、それがサッカー部の文化として脈々と受け継がれているのであった。▼あわせて読みたい!多種多様な指導者の人づくりの流儀「教えない、考えさせる」──田中順也×吉村雅文が語る、サッカーと教育の交差点サッカーとビジネスから考える――組織に「勝利」をもたらすリーダーの条件とは?「目的を明確にし、楽しみを与える」有望選手を輩出し続けるスペイン人指導者が訴える、"指導者としてのあり方"経営者、サッカー指導者たちが原体験から確立した各々の哲学『人づくりの流儀』