「ただ走る」「ただ蹴る」では、現代サッカーには通用しない。攻守に境目がなく、動きの中でボール奪取からシームレスに攻撃に移る。これこそが昨今の世界スタンダードとなりつつある。今回は、ブンデスリーガ シュトゥットガルトで育成年代〜トップチームまでを指導した河岸貴氏が若手Jリーガ=を集めて実施したオフシーズンキャンプから、特に注目したいトレーニングを抜粋。BoS理論を元に、「いかにチームでボールを奪い、ゴールに直線的に向かうか」の意識づけとして実施されたメニューの数々。その本質に迫る。1|テンポを上げながらも正確性を保ったパスを出せ%3Ciframe%20width%3D%221920%22%20height%3D%221080%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2Fywq6CcwBiD0%3Fsi%3DumiD2BGiYh02oT_V%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%3B%20web-share%22%20referrerpolicy%3D%22strict-origin-when-cross-origin%22%20allowfullscreen%3D%22%22%3E%3C%2Fiframe%3Eまずはパス&ゴーの練習から振り返ろう。DFの立ち位置として想定される複数のポイントにマーカーを設置。「ボールにコンパクトな陣形を保っていると、すぐ近くに敵はいるよ。モダンサッカーに必要なテクニックは、止めて蹴るだけではない。この練習ではいかにマーカーから離れない位置に性格でスピードのあるパスを通すことができるか。」1タッチでDFを置き去りにできる位置へのパスが、パサーとして求められることを強調するトレーニングであることがわかる。2|外→中→外──7vs7+フリーマンで幅と切り替えを両立中央に7対7、タッチライン外には2人のフリーマンが配置されたポゼッショントレーニング。「初めはタッチ数フリーで行きましょう。ただし、パスは膝より下に出すこと。ボールが外に出たら、俺から供給するのですぐ切り替えてもらいにくるように」目まぐるしく連動する攻守の中で、選手たちの声が飛び交う。激しいインテンシティの中で、運動量が増えてきても冷静な判断と即時奪還が求められるトレーニングとなった。「奪われたら「あ〜失った、どうしよう」ではなく、サイドに開いてボールをもらえなくても早くボールに圧縮するように。常に早く切り替える。」プレッシングについての指示も、声を枯らした河岸氏から飛ぶ。「ボールを持っていない時に、どうやってチームとして奪いに行くか。ボールを追うだけなら、いつまで経っても奪えないよ。ボールに対してコンパクトに陣形整えながら、チームで統一してアタックすること。そのためにコミュニケーションを取らないと。」まさにBoS理論におけるボール非保持時の振る舞いである。単騎で突っ込むプレッシングは正解とされておらず、全員が連動したプレッシングで最終的にボールが奪えた時点で正解のプレッシングとなる。3|寄せ切る勇気──3人組プレッシングで “出せない三角形” を描く%3Ciframe%20width%3D%221920%22%20height%3D%221080%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2FYGelEy_PR4A%3Fsi%3Dh9_aDZZd30NpqmFj%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%3B%20web-share%22%20referrerpolicy%3D%22strict-origin-when-cross-origin%22%20allowfullscreen%3D%22%22%3E%3C%2Fiframe%3Eプレッシングをより個人単位で落とし込んだトレーニングも紹介したい。パスがターゲットへ差し込まれた瞬間、アプローチするもの。「パスが出て、一定距離を保った位置でステイするのはドイツにはない。何回も言うように、いかにボールにアプローチするか。適切な距離でアプローチできたら、DFの背後にはパスが出ない三角形ができる。」この“パスが出ない三角形”とは、DFのプレッシングにおける距離感とタイミングによってパスコースを封じる状態。独特の表現で発せられたこの指導は、仮にその練習が目の前で繰り広げらてていなくてもイメージできるほど。「プレッシングでハメる状態を作り出すためのシチュエーションとしてイメージしやすいのは、15m以上のパスだと半分の距離からのアプローチが必要ということ。これでも十分良いプレッシングと言える。」アプローチが届かない遠すぎる距離でも、寄せ切った際に剥がされやすい近すぎる距離でもない。適切な距離感覚を掴むために選手も耳を傾けた。あと1mmに挑む者だけが次へ進む「環境を言い訳にせず、あと1mmに挑め」この「1mm」という言葉には、物理的な距離以上の意味が込められている。それは、日々のトレーニングで流してしまいがちな“あと少し”に目を向け、もう一歩前に出る覚悟を持てるかという問いかけでもある。トレーニングを単なるルーティンにしない。意識の持ち方ひとつで、その日の質が変わる。その意識の差が、試合終盤に残せるスタミナに、ここぞという場面での判断の速さに、そして勝敗の分かれ目になる。今回紹介したメニューは、その“1mm”を視覚化し、選手たちに問いを投げかけるきっかけだった。難易度は決して低くないが、そこに挑む姿勢がプロの証でもある。育成年代からトップレベルを見てきたからこそ、生きたアドバイスが飛び出す。それがこのキャンプを特別なものにしていた。▼あわせて読みたい!日本サッカーに必要なBOS理論「パスが出ない三角形を作れ」──『BoS理論』が変える日本サッカーの現在地「あと1mmを突き詰めろ」現役Jリーガーによるオフシーズンキャンプ密着【前編】「日本の基準だと甘い」正しいプレッシング理論の理解と自己判断力の鍛錬を【後編】「より効率的にゴールを奪う守備は...」酒井高徳の守備概念を変えた『BoS理論』「高校サッカー決勝を見て感じたのは...」酒井高徳が語る、『育成年代の現在と未来』