BoS理論を用いたプレッシング、ポゼッションを向上させるトレーニングメニューの真髄

BoS理論を用いたプレッシング、ポゼッションを向上させるトレーニングメニューの真髄

公開日時:2025/6/28 15:19

「ただ走る」「ただ蹴る」では、現代サッカーには通用しない。攻守に境目がなく、動きの中でボール奪取からシームレスに攻撃に移る。これこそが昨今の世界スタンダードとなりつつある。

今回は、ブンデスリーガ シュトゥットガルトで育成年代〜トップチームまでを指導した河岸貴氏が若手Jリーガ=を集めて実施したオフシーズンキャンプから、特に注目したいトレーニングを抜粋。

BoS理論を元に、「いかにチームでボールを奪い、ゴールに直線的に向かうか」の意識づけとして実施されたメニューの数々。その本質に迫る。

1|テンポを上げながらも正確性を保ったパスを出せ


まずはパス&ゴーの練習から振り返ろう。DFの立ち位置として想定される複数のポイントにマーカーを設置。

「ボールにコンパクトな陣形を保っていると、すぐ近くに敵はいるよ。モダンサッカーに必要なテクニックは、止めて蹴るだけではない。この練習ではいかにマーカーから離れない位置に性格でスピードのあるパスを通すことができるか。」

1タッチでDFを置き去りにできる位置へのパスが、パサーとして求められることを強調するトレーニングであることがわかる。

BoS理論を用いたプレッシング、ポゼッションを向上させるトレーニングメニューの真髄

2|外→中→外──7vs7+フリーマンで幅と切り替えを両立


中央に7対7、タッチライン外には2人のフリーマンが配置されたポゼッショントレーニング。

「初めはタッチ数フリーで行きましょう。ただし、パスは膝より下に出すこと。ボールが外に出たら、俺から供給するのですぐ切り替えてもらいにくるように」

目まぐるしく連動する攻守の中で、選手たちの声が飛び交う。激しいインテンシティの中で、運動量が増えてきても冷静な判断と即時奪還が求められるトレーニングとなった。

「奪われたら「あ〜失った、どうしよう」ではなく、サイドに開いてボールをもらえなくても早くボールに圧縮するように。常に早く切り替える。」

BoS理論を用いたプレッシング、ポゼッションを向上させるトレーニングメニューの真髄

プレッシングについての指示も、声を枯らした河岸氏から飛ぶ。

「ボールを持っていない時に、どうやってチームとして奪いに行くか。ボールを追うだけなら、いつまで経っても奪えないよ。ボールに対してコンパクトに陣形整えながら、チームで統一してアタックすること。そのためにコミュニケーションを取らないと。」

まさにBoS理論におけるボール非保持時の振る舞いである。

単騎で突っ込むプレッシングは正解とされておらず、全員が連動したプレッシングで最終的にボールが奪えた時点で正解のプレッシングとなる。

3|寄せ切る勇気──3人組プレッシングで “出せない三角形” を描く


プレッシングをより個人単位で落とし込んだトレーニングも紹介したい。パスがターゲットへ差し込まれた瞬間、アプローチするもの。

「パスが出て、一定距離を保った位置でステイするのはドイツにはない。何回も言うように、いかにボールにアプローチするか。適切な距離でアプローチできたら、DFの背後にはパスが出ない三角形ができる。」

この“パスが出ない三角形”とは、DFのプレッシングにおける距離感とタイミングによってパスコースを封じる状態。

独特の表現で発せられたこの指導は、仮にその練習が目の前で繰り広げらてていなくてもイメージできるほど。

BoS理論を用いたプレッシング、ポゼッションを向上させるトレーニングメニューの真髄

「プレッシングでハメる状態を作り出すためのシチュエーションとしてイメージしやすいのは、15m以上のパスだと半分の距離からのアプローチが必要ということ。これでも十分良いプレッシングと言える。」

アプローチが届かない遠すぎる距離でも、寄せ切った際に剥がされやすい近すぎる距離でもない。適切な距離感覚を掴むために選手も耳を傾けた。

あと1mmに挑む者だけが次へ進む


「環境を言い訳にせず、あと1mmに挑め」

この「1mm」という言葉には、物理的な距離以上の意味が込められている。それは、日々のトレーニングで流してしまいがちな“あと少し”に目を向け、もう一歩前に出る覚悟を持てるかという問いかけでもある。

トレーニングを単なるルーティンにしない。意識の持ち方ひとつで、その日の質が変わる。その意識の差が、試合終盤に残せるスタミナに、ここぞという場面での判断の速さに、そして勝敗の分かれ目になる。

今回紹介したメニューは、その“1mm”を視覚化し、選手たちに問いを投げかけるきっかけだった。難易度は決して低くないが、そこに挑む姿勢がプロの証でもある。

育成年代からトップレベルを見てきたからこそ、生きたアドバイスが飛び出す。それがこのキャンプを特別なものにしていた。

▼あわせて読みたい!日本サッカーに必要なBOS理論

「パスが出ない三角形を作れ」──『BoS理論』が変える日本サッカーの現在地

「あと1mmを突き詰めろ」現役Jリーガーによるオフシーズンキャンプ密着【前編】

「日本の基準だと甘い」正しいプレッシング理論の理解と自己判断力の鍛錬を【後編】

「より効率的にゴールを奪う守備は...」酒井高徳の守備概念を変えた『BoS理論』

「高校サッカー決勝を見て感じたのは...」酒井高徳が語る、『育成年代の現在と未来』

BoS理論を用いたプレッシング、ポゼッションを向上させるトレーニングメニューの真髄 | Footballcoach