こんにちは、Footballcoach編集長のこうたです。「最近、サッカー選手の“自己啓発的な発信”をあまり見かけなくなった気がする」。これは先日、私が友人と話していた際にふと出てきた話です。長谷部誠さんの『心を整える』や、長友佑都選手の『[メンタルモンスター]になる。』、さらには本田圭佑さんの発信する“マインドセット”の数々。少し前までは、彼らの言葉がサッカーを超えて、ビジネスパーソンや学生の心にまで届いていた記憶があります。それが今、少し影を潜めているように感じられるのはなぜでしょうか?「語る選手」たちの時代振り返ってみると、2010年前後のサッカー界では「人としてどうあるべきか」を語る選手たちが目立っていました。彼らは、試合でのプレーだけでなく、自らの経験や価値観を本やメディアを通じて発信し、ファンだけでなく広く社会に影響を与えていたのです。それは「自己啓発」とも言える発信であり、選手自身が「ロールモデル」としての役割を果たしていたともいえるでしょう。今の発信スタイル──変わったのは“形”かもしれないでは、今の選手たちは「語らなくなった」のかというと、必ずしもそうではないと思っています。SNSを通じた日々の投稿や、YouTubeなどのプラットフォームを使って日常の一コマを発信する選手は多いです。ただし、そこには“自己啓発”的なニュアンスが少なく、どちらかといえば「ありのまま」の姿が重視されている印象を持ちます。かつてのような明確なメッセージ性は控えめだが、その分、選手の等身大の姿が垣間見えるのです。また、クラブのブランディングや広報方針との整合性を考慮しながら発信している選手も多く、個の思想を全面に出しづらい状況も背景にはあるでしょう。「語らない」ことの意味を考える自己啓発的な発信が減った背景には、競技レベルの向上もあるかもしれない。欧州リーグでの活躍やワールドカップでの実績を求められる中、日々のトレーニングや戦術理解に多くの時間とエネルギーを割かなければならない現代の選手たち。彼らにとって、“言葉を練って発信する時間”は贅沢なものになっているのかもしれません。しかしそれは、ネガティブな変化ではなく、むしろ「言葉よりもプレーで語る」という姿勢がより研ぎ澄まされたとも捉えられます。これからの「発信」とは自己啓発的な言葉が少なくなった現代においても、サッカー選手の発信は形を変えて続いています。映像で、SNSで、時には静かな振る舞いそのもので。発信は、かたちや媒体が変わっても、人の心を動かす力を持ち続けています。だからこそ、これからの選手たちがどのような「語り方」を選び、自分を表現していくのかに期待します。サッカー選手の「語り」は、今も進化の途上にあると言えるでしょう。